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「invert 城塚翡翠倒叙集」相沢沙呼 「medium」の続編、犯人視点で描かれる倒叙型ミステリー集

眼鏡 ピンク 小説
Ana Paula FerianiによるPixabayからの画像

相沢沙呼さんの小説「invert 城塚翡翠倒叙集」の感想です。

『このミステリーがすごい!』1位を獲得し、連続ドラマ化もされた「medium 霊媒探偵城塚翡翠」の続編。

犯人視点から描かれる倒叙型ミステリーの中編集です。

「invert 城塚翡翠倒叙集」基本情報
  • 作者:相沢沙呼
  • 対象:中学生~
    • グロテスクな描写ややあり
    • 性的な描写なし
  • 2021年7月に講談社より刊行
  • 「medium 霊媒探偵城塚翡翠」の続編

「invert 城塚翡翠倒叙集」について

「invert 城塚翡翠倒叙集」は相沢沙呼さんのミステリー小説です。

この「invert 城塚翡翠倒叙集」には3編の中編が収録。

そのいずれも犯人視点から描かれる『倒叙型ミステリー』となります。

犯人が分かった上で、探偵・城塚翡翠(じょうづかひすい)がどのように真相に辿り着くのか。

そんな探偵の推理を堪能できる1冊となります。

まずは、そんな「invert 城塚翡翠倒叙集」のあらすじを掲載します。

すべてが、反転。

あなたは探偵の推理を推理することができますか?

綿密な犯罪計画により実行された殺人事件。アリバイは鉄壁、計画は完璧、事件は事故として処理される……はずだった。
だが、犯人たちのもとに、死者の声を聴く美女、城塚翡翠が現れる。大丈夫。霊能力なんかで自分が捕まるはずなんてない。ところが……。
ITエンジニア、小学校教師、そして人を殺すことを厭わない犯罪界のナポレオン。すべてを見通す翡翠の目から、彼らは逃れることができるのか?

ミステリランキング五冠を獲得した『medium 霊媒探偵城塚翡翠』、待望の続編は犯人たちの視点で描かれる、傑作倒叙ミステリ中編集!

invert 城塚翡翠倒叙集t―Amazon.co.jp

「invert 城塚翡翠倒叙集」は『探偵・城塚翡翠の推理』を読者が推理できる、やや特殊なミステリーです。

収録されたどのお話も、まず犯人視点による犯行の様子からスタート。

どの犯人も一見すると優秀で、どれも完全犯罪に思えるほど。

しかし、探偵・城塚翡翠により犯人は次第に追い詰められていきます。

そして、事件の解決が始まる直前に、必ず城塚翡翠による『読者への挑戦状』が挟まれるのがポイント。

この芝居がかった演出は遊び心があってとても良かったです。

わたしたち読者は、城塚翡翠がどこから事件解決の糸道を見つけ、追い詰めていくのかを推理することができます。

完璧に思えた犯行の、わずかな綻びから罪を追及していく。

二度読み必至、特に3編目は小説ならではの仕掛けにまんまと騙されました。

前作「medium 霊媒探偵城塚翡翠」について

「invert 城塚翡翠倒叙集」は、衝撃過ぎる展開から大ヒットとなったミステリー「medium 霊媒探偵城塚翡翠」の続編です。

「medium 霊媒探偵城塚翡翠」の感想はこちら

「invert 城塚翡翠倒叙集」は前作「medium 霊媒探偵城塚翡翠」において明かされた『ある事実』を読者が知っている上で進んでいきます。

したがって「invert 城塚翡翠倒叙集」の前に「medium 霊媒探偵城塚翡翠」を絶対に読むことをオススメします。

ちなみにこの「invert 城塚翡翠倒叙集」には続編があります。

興味がある方はこちらもオススメです。

タイトル「invert」の意味とは?

「invert 城塚翡翠倒叙集」のタイトル「invert」には『~を逆さにする』などの意味があります。

invert
in・vert
【他】…を逆さにする,ひっくり返す,…を裏返しにする;
〈位置・順序・関係を〉反対にする;〈性質・効果などを〉逆転させる;
inverted detective story:倒叙推理小説

invert 城塚翡翠倒叙集―Amazon.co.jp

逆さ・裏返し・反対・逆転といった意味の動詞ですね。

この「invert」を使った名詞である「inverted detective story」は『倒叙推理小説』となります。

まさにこの「invert 城塚翡翠倒叙集」にピッタリです。

ちなみに『倒叙推理小説』とは犯人の視点で描かれる推理小説のこと。

最初から犯人が分かっている上で、探偵がいかにして犯人を追い詰めていくかを描くミステリーです。

テレビドラマだと「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」シリーズなどが倒叙型ミステリーとして有名ですね。

「invert 城塚翡翠倒叙集」感想・あらすじ

「invert 城塚翡翠倒叙集」の感想・あらすじです。

ここからは前作「medium 霊媒探偵城塚翡翠」のネタバレを含みます。

未読の方はご注意ください。

「invert 城塚翡翠倒叙集」のネタバレはありません。

『中編』3作収録だが・・・

「invert 城塚翡翠倒叙集」は中編が3作収録された作品集です。

中編とは短編よりも長いけど、長編よりも短い小説だと思います。

実際に、1編目『雲上の晴れ間』や2編目『泡沫の審判』はそれぞれ100ページ強のボリュームでした。

しかし3編目『信用ならない目撃者』は200ページ超えと普通に長編クラスのボリュームです。

ミステリー好きとしては「1冊でこんなに読めてラッキー!」といった感じですが、1冊にこんなに詰め込んで大丈夫か?と思ってしまう満足感でした。

読者に対する、作者の挑戦

「invert 城塚翡翠倒叙集」は本格倒叙ミステリーです。

前作「medium 霊媒探偵城塚翡翠」にて、城塚翡翠は霊媒師ではなく、ただ推理力が人並み外れた探偵であることが分かっています。

(思えば、前作「medium 霊媒探偵城塚翡翠」も倒叙型ミステリーでした。)

そのため、周囲は霊媒探偵として扱っているものの、城塚翡翠は会話と物証からコツコツ推理を組み立てているだけ。

ある意味、一般的な探偵ものと言えます。

しかし、この「invert 城塚翡翠倒叙集」は犯人が冒頭で分かっていて、犯行の様子もほとんど読者に明かされています。

ミステリーの醍醐味と言える犯人当てやトリックの推理という楽しみは放棄されているのです。

では読者は何を楽しめば良いのか?

それは犯人が捜査機関を欺いた方法と、その方法では隠しきれなかった証拠。

そして、証拠をかき集めて城塚翡翠が組み立てた推理。

まさに『探偵の推理を推理する』という快感が味わえます。

ただ、その『探偵の推理を推理する』ことは、犯人側の視点から読んでいる読者にとって、かえって難しいと分かりました。

犯人なら当然知っていることを読者も知ってしまいます。

その観点で読み進めていくと、犯人しか知り得ないことにピンときません。

探偵側の視点から読み進めるミステリーよりも、倒叙型ミステリーの方が頭を使うものだと実感しました。

探偵・城塚翡翠×助手・千和崎真

「invert 城塚翡翠倒叙集」は、探偵役は前作に引き続き城塚翡翠が担当しますが、助手は諸事情により変更。

前作からアシスタントとして顔を出していた翡翠の同居人・千和崎真が助手に就任します。

千和崎真は翡翠よりもやや年上の美女。

家事や事務作業を一切やらない翡翠の代わりにそれら全てをこなす、とても有能な女性です。

非常に口が悪く、意外と気性が荒いのもチャームポイントと言えます。

そんな千和崎真の活躍も「invert 城塚翡翠倒叙集」の見所。

探偵と助手の女性バディというのは珍しいので読んでいてワクワクしました。


些細な証拠や失言から犯人を徹底的に追い詰めていく城塚翡翠。

しかし、前作に比べて城塚翡翠の内面がクローズアップされているのも注目の1つです。

彼女が執拗に殺人犯を追及する訳とは。

ここまで「invert 城塚翡翠倒叙集」の感想でした。

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