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「霧越邸殺人事件<全面改訂版>」綾辻行人 吹雪で閉ざされた洋館で次々起こる見立て殺人、その真相とは?本格ミステリーの傑作

オルゴール 霧越邸殺人事件 小説
Mohammed HassanによるPixabayからの画像

綾辻行人さんのミステリー小説「霧越邸殺人事件」の感想です。

吹雪に見舞われ、命からがら助けを求めた洋館で童謡の歌詞に沿う連続見立て殺人が行われていきます。

本格ミステリーの醍醐味を心ゆくまで楽しめる傑作の全面改訂版です。

「霧越邸殺人事件」基本情報
  • 作者:綾辻行人
  • 対象:中学生~
    • 性的な描写ややあり
    • グロテスクな描写あり
  • 1990年9月に新潮社より初版刊行
    • 1995年に文庫化
    • 2014年3月に文庫版を全面改訂した<完全改訂版>が角川文庫より刊行

「霧越邸殺人事件」について

「霧越邸殺人事件」は綾辻行人さんのミステリー小説です。

新本格ミステリーを切り拓いた1人とされる綾辻行人さんの初期の代表作である、この「霧越邸殺人事件」。

本格ミステリーで読みたいものが全て詰まっているといっても過言ではありません!

まずは、そんな「霧越邸殺人事件」のあらすじを掲載します。

信州の山中に建つ謎の洋館「霧越邸」。訪れた劇団「暗色天幕」の一行を迎える怪しい住人たち。邸内で発生する不可思議な現象の数々……。閉ざされた“吹雪の山荘”で、やがて美しき連続殺人劇の幕が上がる。緻密な推理と思索の果てに待ち受ける驚愕の真相とは!?

霧越邸殺人事件―Amazon.co.jp

<壮麗な『吹雪の山荘』で『連続見立て殺人』!> ※下巻・特別インタビューより

当時、デビュー4年目だった綾辻行人さんがこの「霧越邸殺人事件」を書き上げたのは、そんな定番中の定番とも言える本格ミステリーに挑戦したいという思いからだったそうです。

小説の舞台は1986年11月。

東京の劇団・暗色天幕は地方公演での帰り道、大吹雪に見舞われ、遭難してしまいます。

このままでは行き倒れてしまう、と誰もが諦めたとき、目の前に現れたのは立派な洋館でした。

九死に一生を得た劇団員たちは、そのまま吹雪が収まるまで洋館で過ごすことに。

吹雪の山荘、招かれざる客たち。

当然、次に起こるのは殺人事件です。

文庫化から19年目の全面改訂

「霧越邸殺人事件」の初版は1990年9月に刊行されました。

文庫化はその5年後の1995年。

そして、わたしの手元にある<完全改訂版>は2014年に刊行された角川文庫版です。

初版から24年、文庫化から19年目の全面改訂。

ちなみに、わたしが「霧越邸殺人事件」を読み、この文章を書いているのは2024年。

全面改訂版の刊行から10年後となります。

初めて世に出てから30年以上の時を経ても、この「霧越邸殺人事件」の面白さは全然色あせていません。

長く愛される傑作ミステリーの強さを感じました。

【ネタバレなし】「霧越邸殺人事件」感想・あらすじ

「霧越邸殺人事件」のネタバレなし感想・あらすじです。

読みたいものが全部読める、これぞミステリーといった設定

「霧越邸殺人事件」はザ・本格ミステリーといった要素が満載のミステリーです。

「霧越邸殺人事件」には

  • 吹雪の山荘(クローズド・サークル)
  • 美しい洋館
  • 招かれざる客たち
  • 外部と交流がない洋館の住人
  • 見立て殺人

という、ミステリー好きとしてはたまらない要素が全て詰まっていると言っても良いくらいの内容です。

さらに、主人公(語り手)が小説家というのも定番。

ストーリーは語り手が殺人事件が発生した4年後(1990年)から、4年前(1986年)の事件を思い返す形で進んでいきます。

つまり、最初の時点で語り手である鈴藤稜一(りんどうりょういち)は生き残っていることは確定しています。

また、鈴藤は劇団・暗色天幕と行動を共にしているものの団員ではない、という微妙な関係性であることもけっこう大きな要素。

そんな繋がりはあるものの、絶妙に部外者である鈴藤の視点から「霧越邸殺人事件」のストーリーは展開していきます。

下地がしっかりしたミステリーでもある

「霧越邸殺人事件」で最初の殺人が起こるのは、上巻も後半にさしかかる180ページごろ。

それまで描かれるのは劇団員たちの人間性や関係性、館の内部構造など。

ミステリーは殺人事件が起きてから関係性を深掘りしていくタイプが多いですが、この「霧越邸殺人事件」は最初の殺人が起きるまでに劇団員の人間性・関係性は一通り説明されます。

謎解きを楽しみたい読者にとってはフェアな構成とも言えますね。

そして、第一の殺人が起きてからはトントン拍子に殺人が重なります。

第一の殺人の直前までがゆっくりしたジェットコースターの上りなら、第一の殺人発生が頂点、その後は一気に滑り落ちるようなスピード感です。

その勢いのまま、謎解きまでひた走っています。

あまりにも展開がスピーディーなので、後半は一気読みでした。

冒頭で殺人が起き、そこから人物紹介・屋敷紹介をするのも定番ですが、最初に全て説明を済ませることで一気に事件を畳みかけるのはまた違う面白さがありとても良かったです。

趣を感じる見立て殺人

「霧越邸殺人事件」では、北原白秋が作詞した童謡『雨』の歌詞に沿った見立て殺人が行われます。

この『雨』は作中で何度も登場。

幻想的ながら和の趣を漂わせる「霧越邸殺人事件」にピッタリの歌詞だと、読んでいて思いました。

ただ、実は、わたしはこの『雨』を聴いたことがなかったので、正直、読んでいてピンときていませんでした・・・。

読後にネットで調べて聴いてみると、思っていた以上に厳かな曲調で、童謡っぽいな、と感じています。

童謡の歌詞に見立てて殺人が行われる、という設定で有名なのはアガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」

冷静に考えると、時間も労力もかかりますが、ミステリーの様式美としては最高です。

また、見立て殺人をわざわざ行った理由、についてはこの「霧越邸殺人事件」でも言及されています。

「霧越邸殺人事件」では、犯人が何のために見立て殺人を行ったのか?

そこから考えて謎解きしていくと、真相に近づけるかもしれません。


閉ざされた山荘で起こる連続殺人。

犯人の正体と、事件の動機とは?

本格ミステリーを読む楽しさに浸れる名作です。

上下巻あわせて800ページ弱とボリューミーですが、すいすい読み進められるのが魅力でしょう。

ここまで「霧越邸殺人事件」の感想でした。

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