「アノニム」原田マハ 絵画オークションの裏で暗躍する窃盗団の攻防を堪能できる1冊

原田マハ「アノニム」イメージ 小説

アート小説と言えば「原田マハ」さんですが、そんな原田マハさんのアート小説の中で異彩を放つ「アノニム」をご紹介します。

絵画を愛する窃盗集団「アノニム」がジャクソン・ポロックの幻の作品を守るため暗躍する姿を描いています。

これまでにないスリルあふれるストーリーが印象的な1冊です。

「アノニム」基本情報
  • 作者:原田マハ
  • 対象:中学生~
    • エロ・グロ描写なし
  • 2017年6月にKADOKAWAより刊行
    • 2020年7月に文庫版が刊行

「アノニム」あらすじ

「アノニム」は原田マハさんが手がけた小説です。

オークションにかけられたジャクソン・ポロックの絵画を巡りスリリングな物語が展開されます。

これまでに読んだ原田マハさんの小説とは一線を画す内容でした。

そんな「アノニム」のあらすじを掲載します。

ジャクソン・ポロック幻の傑作「ナンバー・ゼロ」のオークション開催が迫る香港。建築家である真矢美里は7人の仲間とともに会場へ潜入した。一方、アーティストを夢見る高校生・張英才に“アノニム”と名乗る謎の窃盗団からメッセージが届く。「本物のポロック、見てみたくないか?」その言葉に誘われ、英才は取引に応じるが…。才能の出会いが“世界を変える”1枚の絵を生み出した。華麗なアート・エンタテインメント!

アノニム(角川文庫)―Amazon.co.jp

原田マハさんと言えば、近年はアートと画家にまつわるストーリーを展開する唯一無二の作家。

そのアートが画家によってどのように産み出されたか、というアートの背景を描いた歴史・伝記小説のような作品が主でした。

この「アノニム」もアートがテーマの作品です。

しかし「アノニム」は、アートを巡るオークションの駆け引きを描いた小説

歴史・伝記小説ではなく、スリル満点のエンターテインメント小説として楽しめました!

タイトル「アノニム」とは?

小説のタイトルでもある「アノニム」は、7人のメンバーからなるアート窃盗団です。

窃盗団と言っても、盗まれたアートを盗み返し修復・鑑定を行い元の持ち主に戻す、アート義賊とも呼べる存在です。

その正体は、小説の冒頭にイラストと説明付きで明かされています。

「アノニム」メンバーのイラスト&説明は公式サイトでチェックできます。

「アノニム」のメンバー全員が大金持ちでアート愛好家です。

その有り余る財力とアートを愛する気持ちから、あるアートを守るために作戦を企画・実行に移すのがこの「アノニム」のストーリとなります。

タイトルの「アノニム(anonym)」は『匿名』と言う意味です。

小説の劇中では「unknown=作者不詳」という意味で使われています。

正体不明の義賊たちがアートを守るために闘うなんて、海外の大作映画のようでワクワクしますよね。

続編がありそう?

「アノニム」はこれまでにないエンターテインメント小説としてたいへん面白く読みました。

けれども、何となくですが本作は「アノニム」メンバーの自己紹介的な印象を感じずにはいられませんでした。

また「アノニム」では、メンバーのうち1人の過去が深掘りされています。

逆に言えば、1人の過去しか明かされていません。

1人以外の他のメンバーがアートにどのような思い入れがあるのかはほぼ分かりませんでした。

アートやオークションの話が中心だったから、とも言えるのですが「アノニム」メンバーの人間性がほとんど書かれていないので物足りなさは感じます。

しかし、これは続きの話で明かされるとも考えられます。

窃盗団「アノニム」は1つの話だけで終わらせるにはもったいないくらい魅力的。

したがって、おそらく続編があるのでは?と期待しています。

ジャクソン・ポロックとは

小説「アノニム」の中心にあるのはジャクソン・ポロックの幻の作品「ナンバーゼロ」。

ジャクソン・ポロック「ナンバーゼロ」を巡るオークションで、手に汗握る展開が繰り広げられます。

この「ナンバーゼロ」という作品は(おそらく)架空の作品です。

けれども、作者であるジャクソン・ポロックは実在の人物です。

KADOKAWA「アノニム」ページに掲載された紹介によると

1912年生まれ。第二次世界大戦直後、NYを中心に活躍したアーティスト。カンヴァスを床に置き、絵の具を垂らす(ドリッピング)手法で抽象絵画を制作。アクションペインティングとも呼ばれ、美術史に一時代を築く。

KADOKAWA―アノニム 原田マハ

とあります。

この紹介にもあるように、ジャクソン・ポロックはアクションペインティングを代表する画家として知られています。

アクションペインティングとは

アクションペインティングとは、床に広げたキャンパスに上から絵の具を垂らしたり飛び散らせたりして描く絵画手法のことです。

アクションペインティングが誕生したのは1900年代半ば。

それまでの絵画はイーゼルに立てかけて描くのが普通でしたが、アクションペインティングはその普通を打ち壊したのです。

また、画家本人の動き(アクション)を描くという点でも新しい画法でした。

そのうち、ジャクソン・ポロックは「ドリッピング」という絵の具を垂らして描く手法を初めて確立した人物として評価されています。

「アノニム」の表紙に採用されているのはジャクソン・ポロックの「Number 1A,1948」。

現在はニューヨーク近代美術館(MoMA)に展示されています。

なぜジャクソン・ポロックの作品は高額なのか?

ジャクソン・ポロックの作品は、アクションペインティングを代表するものとしてとても有名です。

また、人気も高くアートワークポスターとして販売されています。

わたし自身、ジャクソンポロックの作品を中学時代に美術の教科書で目にしたことがあります。

初めてジャクソン・ポロックの作品を観たときの感想は「芸術って、分からない」でした。

「これは、芸術なのか・・・」と呆然とした記憶もあります。

おそらく同じ思いを抱いた方は少なくないのではないでしょうか?

絵の具をぶちまけただけのような、子供の落書きのような絵。

「アノニム」劇中でも同じようなことを言われていますが、この「Number 1A,1948」が含まれるジャクソンのNumberシリーズの「Number 17A」は200億円以上もの価値が付いています!

ちなみに、その「Number 17A」は高額な絵画ランキング第5位(2021年5月現在)です。

もう何が何だか・・・、というのが率直な感想です。

けれども、アート、特にオークションというのは「そのアートを欲しい人間が、そのアートにいくらのお金を払えるか」というものだそうです。

価値を決めるのは、アートを購入する人間。

この価格を払ってでも欲しい、と思わせる魅力がアートの価値なのだと思います。

この「アノニム」で後半に描かれる「ナンバーゼロ」のオークションシーンでも、恐ろしいくらいに根がつり上がっていきます。

わたしはアートのことがほぼ分からないので、ほぼ異次元でした。

「アート×エンターテインメント」シリーズの始まり?をチェック

これまでの原田マハ作品とはひと味違う絵画エンターテインメントを楽しめる「アノニム」。

「シリーズ化して欲しい!」と思わずにはいられない魅力的な窃盗集団「アノニム」の活躍をぜひ堪能してみてください!

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