「旅屋おかえり」は原田マハさんの小説です。
事情があって旅に出かけられない人の代わりに旅をする『旅屋』という仕事を始めた主人公と、その周りの人たちが織りなす心温まるお話です。
実在する観光地の風景が目の前に浮かぶような、鮮やかな描写が特長でもあります。
- 作者:原田マハ
- 対象:小学生~
- エログロ描写なし
- 2012年4月に集英社より刊行
- 2014年9月に文庫化
- 第12回エキナカ書店大賞・受賞
- 2022年に連続ドラマ化
- 2023年にドラマ続編が放送予定
「旅屋おかえり」について
「旅屋おかえり」は原田マハさんの小説です。
旅に出られない・出かけたくない人の代わりに旅をする。
そんな『旅屋』という仕事を始めたタレントが主人公の、心温まるストーリーでした。
まずは、その「旅屋おかえり」のあらすじを掲載します。
あなたの旅、代行します! 売れない崖っぷちアラサータレント“おかえり”こと丘えりか。スポンサーの名前を間違えて連呼したことが原因でテレビの旅番組を打ち切られた彼女が始めたのは、人の代わりに旅をする仕事だった――。満開の桜を求めて秋田県角館へ、依頼人の姪を探して愛媛県内子町へ。おかえりは行く先々で出会った人々を笑顔に変えていく。感涙必至の“旅”物語。
旅屋おかえり―Amazon.co.jp
小説は、主人公のタレント・丘えりか(通称・おかえり)が唯一のレギュラー番組だった旅番組を打ち切られるところから始まります。
所属事務所はおかえり1人の弱小事務所。
唯一の稼ぎだった番組が打ち切られ、事務所共々崖っぷちに追い込まれたおかえりたち。
そんなピンチの最中、おかえりにある依頼が舞い込みます。
それは『病気の娘の代わりに旅へ出て欲しい』という依頼でした。
「旅屋おかえり」は、あらすじやわたしの下手な説明↑でも分かるくらい、ハートウォーミングで優しい物語です。
ストーリーは明るくコメディタッチで、読みやすいのも特徴。
暗い話もありますが、主人公・おかえりのパワーで楽しく笑って読み進められるのも魅力となっています。
シリーズ2作目「丘の上の賢人」
「旅屋おかえり」には、シリーズ2作目となる「丘の上の賢人 旅屋おかえり」という作品もあります。
ただ、この「丘の上の賢人」は正確には続編ではなく、本作の単行本を刊行するにあたり収録しなかったエピソードを文庫化したもの。
その内容は、旅屋を始めたおかえりにとって2番目となる依頼です。
↓で説明している旅先情報のうち、時系列では『秋田県・角館』と『高知檮原・愛媛内子』の間に位置する話となっています。
ページ数の都合上、省かれてしまったのだろうと思いますが、この「丘の上の賢人」もとても面白いので、興味がある方はぜひ合わせてお楽しみください。
2022年に連続ドラマ化
「旅屋おかえり」は2022年1月にNHK・BSプレミアムにて連続ドラマ化しました。
主演は安藤サクラさん、共演は武田鉄矢さん、美保純さんなど。
また、来年2023年には新エピソードとなる続編の放送も決定しています。
「旅屋おかえり」の旅先情報
お恥ずかしながら、わたしは旅に疎く、おかえりが旅した地域のことは全くわかりませんでした。
ですので、自分なりに「旅屋おかえり」の旅先をまとめてみました。
秋田県・角館
おかえりの『旅屋』としての初めての依頼です。
角館(かくのだて)町は、現在は合併し、仙北市の一部となっています。
秋田県の中では内陸のほぼ中央に位置する町です。
江戸時代から城下町として栄え、現在も武家屋敷が残るなど、歴史情緒溢れるのが角館の魅力。
「旅屋おかえり」でも登場した桜並木・しだれ桜は実際に人気の観光スポットです。
※参考 角館の魅力 田沢湖角館観光協会
高知県・檮原町(梼原町)
打ち切られた旅番組の復活がかかった依頼先です。
高知県の檮原(ゆすはら)町は、最大で標高1455メートルの高原に位置する町。
※梼原は略式表示で、読み方は同じです。
標高の高さから『雲の上の町』とも呼ばれています。
面積の91%が森林という自然の豊かさと、建築家・隈研吾さんが手がけた施設が集まる美しい町です。
※参考 ゆすはら雲の上観光協会
愛媛県・内子町
内子(うちこ)町は愛媛県の中央部にある町です。
昔ながらの町並みと、豊かな自然が残る風景が魅力の内子町。
特に秋が深まるこれからの季節は見応え抜群の紅葉を楽しめます。
また、内子町公式観光サイトでは、ドラマ「旅屋おかえり」のロケ地マップを公開していました。
興味がある方はぜひご覧になってみてください。
「旅屋おかえり」感想・あらすじ
「旅屋おかえり」の感想・あらすじです。
テンポの良いストーリー展開
「旅屋おかえり」は基本的にコメディタッチでテンポ良く物語が進んでいくのが魅力です。
おかえりが所属する芸能事務所・よろずやプロダクションでの会話は、良い意味でコントのような面白さがありました。
テンポの良さはよろずやプロ以外でも続き、おかえりが『旅屋』の仕事を始め、1人で旅先へ赴いても変わりません。
おかえりがいれば、誰が相手でもずっとテンポ良く明るい雰囲気が続く、というのは読んでいて気持ちが良かったです。
また、やはりおかえりが純粋に旅が好き、というのも魅力でした。
好きを仕事にするのは一種の才能。
旅先で出会った人・巻き込んだ人をみんな笑顔にするおかえりのパワーは、読者としても好感が持てました。
サブタイトル「the long way home」
「旅屋おかえり」のサブタイトルは「the long way home」。
直訳すると、(家までの)帰りの長い道のり、でしょうか。
このサブタイトル、小説を読んでいくとグッとくる言葉です。
日本全国、どこへでも旅へ出ていたおかえりが唯一、足を運べなかった場所。
芸能界で花開くまで、大成するまで、帰れない『家』までの遠さは、同じ境遇でなくても共感できるものでした。
反対されて家を飛び出したわけではない、というのがより切ないです。
だからこそ、この「旅屋おかえり」の結末は幸せでした。
遠足ではないですが、家に帰るまでが旅ですね。
読んでいるだけで旅気分
「旅屋おかえり」は風景描写の美しさも魅力の1つです。
ただ、観光名所の描写もさることながら、最も印象的だったのは日常の風景でした。
角館での雪の描写や、檮原での紅葉や和紙づくりなど、さりげないシーンの描写にみずみずしさが溢れていて良かったです。
読書で旅気分が味わえて満足ですが、出不精のわたしでも実際に旅に出たくなりました。
アート小説ではない、旅がテーマのロードムービー的小説です。
小説を読んだ後、その観光地の風景をネットで調べてみるのも良かったです。
優しいハッピーエンドが迎えるコメディの感動作、原田マハさんの小説「旅屋おかえり」の感想でした。