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「犯人のいない殺人の夜」東野圭吾 デビュー当時の短編7作が収録の短編集・新装版

東野圭吾さんの短編小説集「犯人のいない殺人の夜」の感想です。

昭和の終わりに書かれた7短編が収録された、東野圭吾さんデビュー直後の短編集です。

青春ミステリーから現代の代表作につながる物理ミステリーまで、色とりどりのミステリーが楽しめる贅沢な1冊でした。

「犯人のいない殺人の夜」基本情報
  • 作者:東野圭吾
  • 対象:中学生~
    • 性的な描写ややあり
    • グロテスクな描写あり
  • 1990年7月に光文社より刊行
    • 初出は1985~1988年
    • 1994年1月に文庫化
    • 2020年2月に新装版が登場
  • 2012年に『東野圭吾ミステリーズ』としてドラマ化

「犯人のいない殺人の夜」について

「犯人のいない殺人の夜」は東野圭吾さんの短編集です。

この「犯人のいない殺人の夜」は1990年に初版が刊行、それから30年経った2020年に新装版文庫が登場しました。

東野圭吾さんの初期作7編が収録されています。

まずは、そんな「犯人のいない殺人の夜」のあらすじを掲載します。

親友が屋上から落ちて、死んだ。自殺と思えない「俺」は当時の様子を探り始めるが…。(「小さな故意の物語」)直美は死ぬ直前にビデオメッセージを残した。その理由とは…。(「さよならコーチ」)岸田家の中で殺人が起きた。しかしそこには、死体もなければ犯人もいない…?(表題作)渦巻く人間の欲望を描いた全七編を収録。エンタメの頂点を極めた著者が贈る、珠玉の短編集!

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「犯人のいない殺人の夜」は1985~88年にかけて雑誌に掲載された短編7つを収録。

  • 小さな故意の物語
  • 闇の中の二人
  • 踊り子
  • エンドレス・ナイト
  • 白い凶器
  • さよならコーチ
  • 犯人のいない殺人の夜

単行本として刊行されたのは平成ですが、書かれたのはすべて昭和の時代。

東野圭吾さんのデビューは1985年なので、まさに初期作と言えます。

近年の著作とは雰囲気の違うミステリーたちはある意味新鮮です。

2012年に5編が映像化

「犯人のいない殺人の夜」のうち5編は2012年に連続ドラマ「東野圭吾ミステリーズ」として映像化されています。

「東野圭吾ミステリーズ」は東野圭吾さんの短編をオムニバス形式で実写化したもの。

各話ごとに異なる短編を採用していた、連続ドラマとしては珍しいスタイルでした。

ドラマでは、他の短編集からエピソードが選ばれています。

この「犯人のいない殺人の夜」から選ばれたのは

  • 小さな故意の物語
  • エンドレス・ナイト
  • 白い凶器
  • さよならコーチ
  • 犯人のいない殺人の夜

の5編でした。

「犯人のいない殺人の夜」感想・あらすじ

「犯人のいない殺人の夜」の感想・あらすじです。

青春時代を描くミステリー3編

「犯人のいない殺人の夜」は若いイメージの短編が収録されています。

東野圭吾さんが20代の時に書かれた作品なので、登場人物の平均年齢が低く、特に掲載順が先の3作は中学生・高校生が中心のミステリーでした。

『小さな故意の物語』・『踊り子』は、10代らしい淡い恋心がテーマ。

どちらも切ない結末が待ち受ける青春ミステリーでした。

また短編集の「犯人のいない殺人の夜」というタイトル通り、明確な殺人犯のいない、ボタンの掛け違いで起きてしまった殺人、を描いているのもポイントです。

※表題作でもある短編『犯人のいない殺人の夜』最後に収録されています。

『闇の中の二人』は、重いテーマとやりきれない結末を描いた短編です。

若い教師の視点から、生徒の身に起こった悲劇をあぶり出しています。

いずれの3作品も青春時代を描いていますが、中身や結末は想像以上にハードでした。

時代を感じるミステリー4編

「犯人のいない殺人の夜」の後半4編は仕事を持つ大人が中心のミステリーです

ストーリーはどれもテイストが異なるミステリーで、飽きさせないのが魅力でした。

『エンドレス・ナイト』は人情味あふれるミステリーと言った雰囲気。

大阪出身の東野圭吾さんが、主人公の女性に何度も『大阪は嫌い』と言わせるところが面白いポイントでした。

『白い凶器』は猟奇的でありつつ、なんとも言えない苦々しさが残るストーリーです。

タイトルの『白い凶器』が指すものが時代を感じます。

35年以上前の社会だからこそ成り立つミステリーと言えました。

『さよならコーチ』は、後の東野圭吾さんの代表作「ガリレオ」シリーズを彷彿とさせる物理トリックのミステリーでした。

「ガリレオ」シリーズの原点といえるかもしれません。

表題作でもある『犯人のいない殺人の夜』は仕掛けが面白いミステリー。

この『犯人のいない殺人の夜』も実写化されているものの、小説だからこそ成り立つミステリーと言えます。

ちょっとしたことで完璧な犯行計画が崩れるのは、ミステリーの醍醐味と言えますね。


一番新しいもので35年前(2023年現在)に書かれているので、作品全体を通して時代を感じます。

今の社会では廃れつつある文化や、今の時代ではなくてはならないアイテムがないのはやはり新鮮でした。

短編は、どれも1編が60ページほどと読みやすいのが特長です。

ここまで「犯人のいない殺人の夜」の感想でした。

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