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「エマ」ジェイン・オースティン 厄介だけど愛おしい恋愛を描くイギリス文学の傑作

結婚 エマイメージ 小説
Julia KaufmannによるPixabayからの画像

ジェイン・オースティン(Jane Austen)の小説「エマ(Emma)」の感想です。

舞台は19世紀前半、イギリスの田舎町。

恋のキューピッドを自負するお嬢様・エマが自分の恋に目覚めていく物語です。

自意識過剰でプライドが高いヒロイン・エマの活躍?が面白い、イギリスを代表する恋愛小説です。

「エマ」基本情報
  • 作者:ジェイン・オースティン
  • 訳者:中野康司(ちくま文庫)
  • 対象:中学生~
    • エログロ描写なし
  • 1814年にイギリスで初版が刊行
    • 日本ではちくま文庫版が2005年に刊行

「エマ」について

「エマ(Emma)」はイギリスの作家ジェイン・オースティンの小説です。

1800年代前半のイギリスを舞台に繰り広げられる恋愛喜劇が描かれています。

200年以上前に書かれた小説ですが、現代に読んでも古臭さを感じませんでした。

そんあ「エマ」のあらすじを掲載します。

エマ・ウッドハウスは美人で頭が良くて、村一番の大地主のお嬢さま。私生児ハリエットのお相手として、美男のエルトン牧師に白刃の矢を立てる。そしてハリエットに思いを寄せる農夫マーティンとの結婚話を、ナイトリー氏の忠告を無視してつぶしてしまう。ハリエットはエマのお膳立てにすっかりその気になるのだが――。19世紀英国の村を舞台にした「オースティンの最も深遠な喜劇」。

エマ(上)―Amazon.co.jp

この「エマ」は『遠回りと寄り道を繰り返しながらも思いを寄せる相手と結ばれる』というストーリーです。

自分の恋はどうでもよいけど、他人の恋には口を挟み、あわよくば仲を取り持ちたい。

主人公のエマはそんな女性です。

エマは21才と時代的にも立派な大人で、態度も堂々たるものですが、どこか中身が子どもらしくウブな性格でもあります。

そもそも恋のお節介を焼くわりには、恋愛に疎いという致命的な欠点があり、主人公ながら物語を大いにかき回します。

作者ジェイン・オースティンについて

「エマ」の作者はイギリスの作家ジェイン・オースティン(Jane Austen)です。

ジェイン・オースティンは18世紀後半から19世紀前半にかけ活躍した女性作家。

代表作には「高慢と偏見」があります。

婚活小説として現代でも人気を集める「高慢と偏見」や今回の「エマ」など、オースティンの作品は女性の私生活や結婚をテーマにしています。

結婚がテーマと聞くと幸せいっぱい、なイメージがわきます。

しかし、オースティンの描く結婚や恋愛は鋭い洞察力から辛辣で皮肉たっぷり。

それでも愛に溢れた世界でハッピーエンドで幕を閉じます。

この「エマ」も描き方がヒロインに対しなかなかに辛辣で、でもその厳しさがなぜか面白さを醸し出していました。

現代の日本で『婚活』について書かれた小説は↓「高慢と偏見」がモチーフです。

19世紀前半のイギリスとは

「エマ」は19世紀前半、つまり1800年代前半のイギリスが舞台の小説です。

そのイギリスのうち、舞台であるハイベリー村は南イングランドの田舎町。

約200年前のイギリスの田舎町の様子が詳細に描かれているのが「エマ」の特徴です。

まさにこの田舎の風景はジェイン・オースティンが見ていた光景なのだろうと想像できます。

しかし、この「エマ」はビックリするほど時代背景が描かれていないのも特徴だったりします。

政治や経済などの大きな出来事は全く描かれず、エマとエマの周囲の人々の様子のみがくっきりと描かれ続けます。

エマが関心のないことには触れない。

そんな意志を感じます。

しかし、この「エマ」の物語をもっと楽しむべく、1900年前後のイギリスとその周辺国の情勢を軽くまとめてみます。

1900年前後のイギリス
  • 1775~1783年
    アメリカ独立戦争

  • 1789年
    フランス革命

    イギリスを中心に「対仏大同盟」が結ばれる

  • 1792~1802年
    フランス革命戦争

    「ナイルの海戦」などフランスと戦闘

  • 1807年
    奴隷貿易の廃止

ジェイン・オースティンが生きていた時代は、ちょうどフランス革命の時期なのですね。

世界が大きく揺れる中でも、ジェイン・オースティンは女性の人生といったミニマムな世界を描き続けています。

この描き方は意図的かどうかは不明らしいのですが、ある意味強い決意を感じます。

「エマ」感想・あらすじ

「エマ」の感想・あらすじです。

読者に好かれないヒロイン

作者の私以外は誰も好きになれないようなヒロインを書くつもりです。

↑は作者ジェイン・オースティンが「エマ」執筆前に手紙に書いた言葉です。

※「エマ」ちくま文庫 訳者あとがき より引用

作者に『私以外は誰も好きになれないようなヒロイン』と言われてしまったエマ。

たしかに、ヒロインのエマは性格に難があります。

悪い子ではありません。少なくともわたしは嫌いではありません。

家族思いで礼儀正しく、貴族としての上品さを常に持ち合わせた女性であるエマ。

しかし、ややお節介が過ぎ、プライドがとても高いという欠点があるだけです。

また、プライドの高さと同じくらい厄介なのが、恋愛に関する妄想癖。

ある資産家の私生児・ハリエットへの行きすぎたお節介とその顛末は、読んでいて痛々しくなるほどでした。

異様なまでに自信過剰でプライドが高いエマですが、当時のイギリス貴族というのは少なからずこんな感じだったのだろうと思わせます。

自信満々に恋愛の見当違いを繰り返し、場を引っかき回しながらも、悪気がないのはエマの美点と言えます。

ただし、無意識的な下心があったのは事実ですが。

嫌われ者ではないものの、積極的に好きにはなれない。エマはそんなヒロインかもしれません。


また、個人的に貴族とはとにかくやることがないのだな、と思いました。

エマが他人の恋に首を突っ込むのも、とにかくやることがないからなのだろうと勝手に推測しました。

自由気ままで羨ましいですが、暇すぎるというのも考え物ですね。

ハッピーエンドに至るまで

「エマ」は上・下巻合わせて800ページ弱の大長編です。

歴史活劇でも長いと感じるボリュームですが、この「エマ」は800ページ弱すべてが1つの田舎町で起こる恋愛コメディで占められます。

読む前も読んでいる時も「長い!」と思いましたが、それでも苦もなく読めてしまった面白さがあります。

この「エマ」の読みやすさの理由はテンポの良さでしょう。

ポンポンと物語が展開していき、会話も小気味よいのでスラスラ読めます。

ただ、おそらくこれは日本語訳がわたしに合っていたからだと思います。

また物語が全55章に分かれているのも読みやすいポイントです。

視点がほとんどヒロインのエマで固定され、時系列が前後することもなく、難しくないので気軽に読み切ることができました。

基本が『恋愛』と『喜劇』なので、少女マンガ感覚で読めるのもポイント。

そして結末がハッピーエンドで終わるというのも安心感があります。

読んだ後に、なんだかんだあったものの幸せに幕が閉じられるのは良いものです。


海外の小説だし、200年以上前に書かれたものだし、何より長いし・・・。

そんな理由で手に取るのを躊躇しそうな「エマ」ですが、読んでみると意外とあっさり読めます。

ここまで、ジェイン・オースティンの小説「エマ」の感想でした。

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