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「よるのふくらみ」窪美澄 幼なじみの兄弟との三角関係の行方とは?3人の視点で描かれる、どこか爽やかな恋愛小説

窪美澄さんの小説「よるのふくらみ」の感想です。

幼なじみの兄弟との三角関係を描いた恋愛小説です。

3人とも悪いところがあり、しかし3人全員に共感できてしまう。

距離感が近い、ということの安心や煩わしさも描かれた小説でした。

基本情報
  • 作者:窪美澄
  • 対象:中学生~
    • 性的な描写あり
    • グロテスクな描写なし
  • 2014年2月に新潮社より刊行
    • 2016年9月に文庫化

「よるのふくらみ」について

「よるのふくらみ」は窪美澄さんの恋愛小説です。

主な登場人物は30才の保育士・みひろと、その幼なじみで2才年上の恋人・圭祐と、圭祐の弟でみひろの同級生でもある裕太。

この3人による、三角関係を描いた小説です。

設定だけ読むとドロドロですが、実際に読んでみるとドロドロをいっさい感じさせない爽やかさがありました。

まずは、この「よるのふくらみ」のあらすじを掲載します。

私のからっぽに栓をしてほしかった。

幼なじみの兄弟に愛される一人の女、もどかしい三角関係の行方は。熱を孕んだ身体と断ち切れない想いが溶け合う究極の恋愛小説。

同じ商店街で幼なじみとして育ったみひろと、圭祐、裕太の兄弟。圭祐と同棲しているみひろは、長い間セックスがないことに悩み、そんな自分に嫌悪感を抱いていた。みひろに惹かれている弟の裕太は、二人がうまくいっていないことに感づいていたが――。抑えきれない衝動、忘れられない記憶、断ち切れない恋情。交錯する三人の想いと、熱を孕んだ欲望とが溶け合う、究極の恋愛小説

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「よるのふくらみ」は6編の連作が収録された、連作短編です。

そのうち1・4編目がみひろ、2・5編目が裕太、3・6編目が圭祐の視点で描かれます。

三角関係の当事者の視点から見る、三角関係の様は単純でもあり、ごっちゃごちゃでもありました。

悪人はいません。

しかし、なぜかみんな悪いことをしてしまう。

その悪いことが決定的すぎて、救いがない。

ただ、読んでいると結局3人それぞれに共感できてしまうのが不思議でした。

「よるのふくらみ」感想・あらすじ

「よるのふくらみ」の感想・あらすじです。

ドロドロしていない三角関係

「よるのふくらみ」は恋愛小説ですが、ジャンルとしては官能小説にも分類されます。

ヒロインと、その幼なじみの兄弟による三角関係。

兄と交際している幼なじみを、幼いことから思い続けている弟。

その微妙ながら安定した関係は、ある夜をきっかけに、少しずつ歪んでいきます。

この関係、冷静に考えると恋愛のドロドロが強すぎるのですが、実際読んでみるとビックリするくらい爽やかで澄んでいます。

キレが強すぎるのに口当たりが良いお酒みたいですね。

また、性描写も少なくないのですが、描写が激しくないので女性でも読みやすいかと思います。

タブーすらも共感を覚える

「よるのふくらみ」では、登場人物が犯すタブーすらも共感できてしまうのが不思議です。

それぞれの登場人物の思いや苦しみが描かれ、その結果の出来事なので、すんなり受け入れてしまうのだと思います。

いや、でもやっていることはダメですけどね。

商店街の濃密な人間関係

同じ商店街にある家庭の事情は、商店街の誰もが知っている。

そんな距離感が近すぎる商店街の人間関係が描かれているのも「よるのふくらみ」の特徴です。

同じ商店街で、同じ頃に生まれ、同じように育ってきたみひろ・圭祐・裕太の3人。

その成長の様子は、3人の両親だけでなく、同じ商店街の人たちもずっと見てきました。

3人のこれまでに何があったのかも全て知っています。

困ったときは支え合い、頼りになるものの、噂や嘲笑の対象にもなっている。

その居心地の良さと悪さがごちゃまぜになった空間の異質さは、ちょっとしたホラーでもありました。

読み終わった後に、清々しさだけでなく、後味の悪さも感じてしまうのは、彼らのこれからをどうしても想像してしまうためです。

過酷だな、と思う一方で、案外そういうものかもしれない、と思わされるリアリティがありました。


好きな人と一緒にいるけど、他の人も好きになってしまった。

そんな『浮気』を描いた小説でした。

浮気は良くないものではありますが、どこか共感してしまうのが小説の魅力でした。

ここまで「よるのふくらみ」の感想でした。

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