相沢沙呼さんの小説「マツリカ・マジョルカ」の感想です。
高校生の少女と少年が、学校で起こる不思議な出来事を解決していく学園ミステリーです。
キレイだけど儚い、そして残酷な一面を見せる青春を思い出させる小説でもありました。
- 作者:相沢沙呼
- 対象:小学校高学年~
- 性的な描写ややあり
- グロテスクな描写なし
- 2012年2月に角川書店より刊行
- 2015年3月に文庫化
- シリーズ(全3作)の1作目
「マツリカ・マジョルカ」について
「マツリカ・マジョルカ」は相沢沙呼(あいざわ・さこ)さんの小説です。
マツリカ・マジョルカ 「マツリカ」シリーズ (角川文庫)
表紙にキレイな女の子のイラストが描いてあるのが特徴的ですね。
このイラストの少女が本作「マツリカ・マジョルカ」のヒロイン・マツリカさんです。
そんな「マツリカ・マジョルカ」のあらすじを掲載します。
柴山祐希、高校1年。クラスに居場所を見付けられず、冴えない学校生活を送っていた。そんな彼の毎日が、学校近くの廃墟に住む女子高生マツリカとの出会いで一変する。「柴犬」と呼ばれパシリ扱いされつつも、学園の謎を解明するため、他人と関わることになる祐希。逃げないでいるのは難しいが、本当はそんな必要なんてないのかもしれない……彼の中で何かが変わり始めたとき、自らの秘密も明らかになる出来事が起こり!? やみつき必至の青春ミステリ。
マツリカ・マジョルカ―Amazon.co.jp
「マツリカ・マジョルカ」はいわゆる探偵もののミステリー小説です。
4つの短編から構成された連作短編集でもあります。
ただし、舞台は学園で、青春要素が強め。
学園ものの青春ストーリーにミステリー要素を加えた、という方が正しいかと思われます。
また「マツリカ・マジョルカ」の探偵役であるマツリカさんは、現場へ赴かず、現場の状況を聞くだけで事件を解決する、いわゆる安楽椅子探偵でもあります。
高校で起こる少し変わった出来事の謎を助手?である男子高校生・柴山祐希とともに解決に導く、というのが主なストーリーです。
シリーズは全3作
この「マツリカ・マジョルカ」は現在までに3作が刊行されているシリーズ作です。
シリーズものだとまったく知らずに手に取ったので、1作目を手に取れて良かったです。
気になるので2・3作目もチェックしようと思います!
「マツリカ・マジョルカ」あらすじ&感想
「マツリカ・マジョルカ」の感想をあらすじとともにまとめます。
取り上げるテーマは意外とハード
爽やかな学園ミステリー、のような雰囲気だと思って読み始めた「マツリカ・マジョルカ」。
しかし、「マツリカ・マジョルカ」が取り上げるのは意外とハードなテーマばかりでした。
ミステリーにもいろいろありますが、この「マツリカ・マジョルカ」の題材は人間関係によって引き起こされたミステリー。
難しいトリックが使われない分、現実味がある生々しさがありました。
ショッキングな結末の話も多いので、楽しい話が読みたい、とお考えの方にはあまりオススメできません。
青春や学校生活の痛み・苦しみがテーマの1つでもあるので、ある意味苦々しい話でした。
少女探偵×男子高校生助手のコンビ
「マツリカ・マジョルカ」は少女探偵と男子高校生助手のバディものでもあります。
女子校生?なのに魔女のような妖艶さを持つ探偵・マツリカさん。
そして、人付き合いが苦手な男子高校生・柴山。
この2人のコンビの会話は小気味良いので、ハードなテーマでも辛くなりすぎずに読み進められました。
ただし、男子高校生の視点から描かれていることもあり、変態性はやや強め。
マツリカさんの一挙手一投足にいちいち興奮する柴山の思春期のジレンマも青春らしいと思いました。
相沢沙呼さんの小説で同じく『少女探偵』が主人公の小説は↓
一番の謎は柴山にあり
ミステリー小説なので謎が多く登場する「マツリカ・マジョルカ」。
しかし、本作の一番の謎は助手でもある柴山そのものだと思います。
語り手でもある柴山の言動は、話が進むごとに違和感を覚えるはずです。
実際、柴山は読者に対して「あること」を隠し続けていました。
その「あること」が明かされるとき、柴山のこれまでに言動に意味が与えられます。
語り手が自身の一部を意図的に隠す、というのはミステリーではよくある手法です。
けれども、今回もあっさり驚かされてしまいました。
そんな各編の謎×全編通しての謎が絡み合う、ミステリーとしては贅沢な1冊だったと思います。
タイトル「マツリカ・マジョルカ」の意味
本作「マツリカ・マジョルカ」のタイトルを『マツリカ』&『マジョルカ』に分け、それぞれの意味をまとめてみます。
『マツリカ』とは
「マツリカ・マジョルカ」のタイトルの前半『マツリカ』はモクセイ科ソケイ属の1種である花の名前です。
と聞いても、↑の写真を見てもピンとくる方は少ないでしょうが、ジャスミンの一種と言えば話は早いかと思います。
アラビアジャスミンとも呼ばれ、漢字では『茉莉花』と書きます。
このマツリカはジャスミン茶に使われる種で、花の香り高さが特徴。
その素晴らしい香りを緑茶の茶葉に付ければジャスミン茶となります。
全然知らなかったのですが、ジャスミン茶はジャスミンの葉っぱをお茶にしているのではなく、普通の茶葉に花で香り付けをしているものだったのですね!
さらに、美しい花の匂いはハーブオイルやお香などにも使用されます。
この『マツリカ』は「マツリカ・マジョルカ」の主人公の名前でもあります。
名前、といっても自分でそう名乗っているだけで、本名かどうかは不明です。
しかし、マツリカの別名は茉莉花は『まりか』と読ませれば女性の名前として一般的に使われてもおかしくないもの。
したがって、マツリカさんの本当の名前は『茉莉花』であると推測できますね。
普通に可愛らしいし、マツリカさんにピッタリの名前だと思います。
『マジョルカ』とは
『マジョルカ(Majorca)』はスペイン・マヨルカ島(Mallorca)の英語表記です。
マヨルカ島は地中海西部にある島で、オリーブなどの農産物や陶器などの工芸品の産出地。
地中海の一大観光地としても有名ですね。
そんなマヨルカ島ですが、なぜタイトルに使用されているかは分かりませんでした。
もし後日意味が分かりましたらまとめます。
青春の美しさと残酷さを一度に味わえるとともに、ミステリーの面白さも堪能できる1冊だったと思います。
物語はこれで終わらず、シリーズはまだ続くとのこと。
また新たな楽しみができて嬉しいです。
ここまで「マツリカ・マジョルカ」の感想でした。