モーリーン・ジョンソンさんの小説「寄宿学校の天才探偵」の感想です。
アメリカの寄宿学校で80年前に発生した未解決の誘拐・殺人事件。
その謎に入学したての少女・スティヴィが挑む学園ミステリーです。
- 作者:モーリーン・ジョンソン(Maureen Johnson)
- 訳者:谷泰子
- 対象:中学生~
- 性的な描写ややあり
- グロテスクな描写ややあり
- 2018年1月にアメリカで刊行
- 2020年5月に日本で文庫化(創元推理文庫)
- 三部作の第一作目
「寄宿学校の天才探偵」について
「寄宿学校の天才探偵」はモーリーン・ジョンソンさんの小説です。
ジャンルはミステリーですが、学園要素が強いジュブナイル小説でもあるこの「寄宿学校の天才探偵」。
まずは、そんな「寄宿学校の天才探偵」あらすじを掲載します。
エリンガム・アカデミーは天才や革新者を輩出してきた全寮制の学校。願書も入学試験もなし、生徒のなかにきらめきが見えたら、入学が許されるのだ。新入生のスティヴィは推理マニア、過去に起きたアカデミーの創始者エリンガムの妻と娘が誘拐された事件を調べている。身代金が払われたのに妻は殺され、娘は行方不明のまま、犯人の正体も不明。スティヴィは事件を調べ直すことを課題として与えられるが、そんなとき新たに殺人が……。
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「寄宿学校の天才探偵」の主人公は16才の少女・スティヴィ(ステファニー・ベル)。
物語はスティヴィが全寮制のエリート校であるエリンガム・アカデミーにやってくるところから始まります。
エリンガム・アカデミーは高校2・3年生の2学年のみ対象の寄宿学校で、何かしらの才能が認められた生徒しか入学できません。
スティヴィは、そんなエリンガム・アカデミーで約80年前に発生した誘拐・殺人事件について書いたレポートで入学を許可されました。
当時の世間を揺るがす大事件が起きた学園。
抑えきれぬ期待と不安を抱えながらスティヴィの学園生活が始まります。
三部作の1作目
「寄宿学校の天才探偵」は三部作の1作目にあたる小説です。
三部作はすべて既刊。日本でも創元推理文庫から刊行されています。
しかし、わたしはこの「寄宿学校の天才探偵」が三部作であることを全く知らずに手に取ったので、結末にビックリしてしまいました・・・。
1作目「寄宿学校の天才探偵」だけでは、謎が全く解決されていないのです!
三部作なので当然と言えば当然なのですが、思わず声が出るほど驚き、放心状態になりました・・・。
(訳者あとがきで三部作であることを知ったので、すぐに立ち直りました。)
1作目は登場人物や学園の紹介、そして過去の未解決事件と新たな事件のはじまりが描かれた、いわゆる導入部分。
正直、続きが気になりすぎるので、続刊を早く読みたいと思います。
作者モーリーン・ジョンソンとは
「寄宿学校の天才探偵」の作者はモーリーン・ジョンソン(Maureen Johnson)さんというアメリカの作家です。
1973年生まれの女性で、これまでにヤングアダルト向けの小説を多数出版しています。
【ネタバレなし】「寄宿学校の天才探偵」感想・あらすじ
「寄宿学校の天才探偵」のネタバレなし感想・あらすじです。
胸が締め付けられる繊細な青春模様
「寄宿学校の天才探偵」というタイトルに惹かれ手に取った本作。
完全に『主人公の探偵が寄宿学校で起きた事件をキレッキレに解決していく』というようなミステリーだと思って読み始めました。
けれども、その予想は大きく外れます。
「寄宿学校の天才探偵」は想像以上に『寄宿学校』に重きが置かれたミステリーでした。
やや面食らったものの、このギャップは悪くありませんでした。
SNSでしか接したことのない同級生との出会いや、寮の先輩から手荒い歓迎を受ける初日。
個性豊かな生徒・教師陣との交流が密に描かれた小説です。
スティヴィは犯罪に並々ならぬ興味を持ち、自力でエリンガムで起きた事件について調べ上げるほどのバイタリティを持つ少女です。
しかし、その一方で他人との交流に奥手で、仲良くなれた少女が他の少女と親しくしているのを見ただけで落ち込んでしまうような繊細さも持ち合わせています。
自分に自信がなく、でも自分を特別だと思いたい。
そんな16才らしい面倒臭さがみずみずしく描かれているのは読んでいて少し苦しくなりましたが、とても良かったと思います。
また学園での微妙な友人関係は、日本でもアメリカでも変わらないものなのだと感じられ親近感が湧きました。
さらに、探偵が内気な少女というのも斬新で面白かったです。
後の2作でスティヴィが探偵としてどのような成長を遂げるのか、楽しみになりました。
80年前と現在が交錯
「寄宿学校の天才探偵」は80年前に発生した誘拐・殺人事件の当時と、スティヴィが学園生活を送る現在(2010年代半ば)がほとんど交互に描かれていく小説です。
学園の創始者アルバート・エリンガムの妻・アイリスと3才の娘・アリスが何者かによって誘拐され、身代金を要求されたその事件。
事件から2カ月ほど後に妻・アイリスは死体で発見されますが、娘・アリスは80年後の現在までも発見されていません。
さらに、その誘拐事件と同時に、学園の生徒であったドロレス(ドッティ)・エプステインも行方不明になり、後に他殺体として発見されています。
この同日に起こった2つの誘拐・殺人事件の犯人と見られる人物は逮捕されたものの、犯行を行うには無理だと判断できる状況でした。
スティヴィはそんな事件の舞台である学園で暮らすことになり、学園長からお墨付きを得て、意気揚々と事件解決に乗り出します。
80年前・1934年という時代から科学捜査に期待ができず、証拠も喪失しているため捜査は困難。
事件の当事者は年齢的にほぼ亡くなっているので、当時の証言しかあてにできない状況です。
こんな過酷な状況でスティヴィは事件を解決できるのでしょうか?
読者ながら心配になります。
また、スティヴィの前には、新たな事件・犠牲者も現れてしまいます。
80年前の未解決事件と現在の当事者となった事件。
2つの事件に同時に立ち向かわなければならないなんて、こんなハードな展開に陥る探偵もなかなかいません。
とにかく、続刊に期待ができる1冊でした。
事件は何1つ解決していないものの、お楽しみは続刊2冊にお預けです。
青春小説として読んでも面白いミステリーでした。
ここまで「寄宿学校の天才探偵」のネタバレなし感想でした。
続きとなる2作目「寄宿学校の天才探偵2 エリンガム最後のメッセージ」
【ネタバレあり】「寄宿学校の天才探偵」の未解決の謎
三部作の1作目である「寄宿学校の天才探偵」は未解決の謎がてんこ盛りで物語が終わってしまいます。
そんな未解決の謎をまとめてみました。
- 80年前のエリンガム母子誘拐・殺人事件の真相
- アルバート・エリンガムの死の真相
- アルバート・エリンガムが残した暗号の答え
- ハイネスへの殺人容疑がかけられているエリーの行方
- エリーがハイネスを殺害?した方法
- エリーがハイネスを殺害した動機の詳細
- デヴィッドの正体
- スティヴィの部屋にライトでメッセージを残した人物とその目的
思いつくままに書いてみたのですが、けっこうありますね・・・。
2作目では↑の謎のうち、どれだけ解決されるのか。
期待を胸に次巻を読みたいと思います!