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「漁港の肉子ちゃん」西加奈子 少女の視点で描かれる色々な愛の形について

漁港の肉子ちゃん 感想 小説
Pixabay

2021年のゴールデンウィークも緊急事態宣言で外出しづらい雰囲気になってしまいましたね・・・。

そんなときは大人しく家で読書でも!

暗い世相を吹き飛ばすような笑いあり感動ありの西加奈子さんの小説「漁港の肉子ちゃん」をご紹介します。

アニメ化決定で話題の「漁港の肉子ちゃん」を読むなら今ですね!

「漁港の肉子ちゃん」基本情報
  • 作者:西加奈子
  • 対象:小学校高学年~
    • やや性的な描写あり
    • グロテスクな描写はなし
  • 2011年8月に幻冬舎より刊行
    • 2014年4月に文庫化
    • 2021年1月よりコミカライズ連載
  • 2021年6月にアニメ映画が公開予定

「漁港の肉子ちゃん」あらすじ

「漁港の肉子ちゃん」は西加奈子さんの小説です。

小学5年生の少女とその母親の暮らしを丁寧ながらも面白おかしく描いた作品になっています。

ジャンルを決定するのは難しいですが、

  • ホームドラマ
  • 学園もの
  • 青春
  • 人間ドラマ

など、いろんなジャンルが一冊で楽しめる贅沢な1冊とも言えます。

そんな「漁港の肉子ちゃん」のあらすじです。

男にだまされた母・肉子ちゃんと一緒に、流れ着いた北の町。肉子ちゃんは漁港の焼肉屋で働いている。太っていて不細工で、明るい―キクりんは、そんなお母さんが最近少し恥ずかしい。ちゃんとした大人なんて一人もいない。それでもみんな生きている。港町に生きる肉子ちゃん母娘と人々の息づかいを活き活きと描き、そっと勇気をくれる傑作。

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「漁港の肉子ちゃん」は、肉子ちゃんとその娘・キクコの日常を描いた作品です。

本名は「菊子」なのに、愛嬌のある肉肉しいボディから「肉子ちゃん」と呼ばれ、焼き肉店で働く母親。

そしてその娘で読書好きなクールな美少女・キクコ。

とりたてて派手な事件が起きるわけではありません。

キクコの目から見た家族や学校、町の日常が描かれます。

物語の舞台は、日本海に面する架空の漁港町。

もともとのモデルは宮城県石巻市でしたが、執筆中に架空の町になっていったとあとがきにありました。

お世辞にも栄えているとはいえない田舎の漁港を舞台に、西加奈子さんのいきいきとした筆致が光る小説です。

作者・西加奈子さんについて

作者の西加奈子さんは、押しも押されぬ人気小説家の一人です。

2004年に「あおい」でデビュー後、数々のヒット作を産み出しました。

2015年には「サラバ!」で第152回直木賞を受賞。

この「サラバ!」もとても面白いのでいつかご紹介したいと思います。

とくに近年は「さくら」や「円卓」、「まくこ」などが次々と映画化され話題に。

この「漁港の肉子ちゃん」もアニメ映画が公開決定と、乗りに乗っています。

西加奈子さんの小説は子供が主人公の話が多く、子供の視点から描かれる独特の世界観が持ち味と言えます。

わたしはこの少し不思議な世界観は好きですが、嫌いな人は嫌いかもしれません。

また、全体的に砕けた口語の文章で物語が展開していきます。

他の小説家さんだと、有川浩さんや桜庭一樹さんと似ているかもしれません。

子供でも読みやすいと言えますが、固い文章が好きな方にはとっつきにくいかもしれません。

アニメ映画が公開予定

「漁港の肉子ちゃん」は6月にアニメ映画が公開予定です。

映画「漁港の肉子ちゃん」予告編

映画「漁港の肉子ちゃん」は明石家さんまさんがプロデュース、主人公・肉子ちゃんを大竹しのぶさんが務めることでも話題ですよね。

予告編を拝見したのですが、絵がナチュラルな感じで作品の世界観とマッチしていると思いました。

公開日は6月11日(金)です。

気になる方は、こちらもチェックして見てくださいね!

「漁港の肉子ちゃん」花緒の感想

「漁港の肉子ちゃん」の感想です。

小学生女子の面倒くささ

「漁港の肉子ちゃん」の主人公は肉子ちゃんですが、物語で語りを務めるのは小学5年生のキクコ。

このキクコが通う小学校での女子の関係性がとにかく面倒くさいのです。

女性作家さんらしいと言えばらしいのですが、この女子特有のねっとりとした面倒くささはなかなか不快です。

おそらくかつて女子だった女性のほぼ全員が経験している、あのイヤ~な感じです。

描写が細かくリアルなので、女子間のいざこざが苦手な方には辛いかもしれません。

ただ、この面倒くささは物語の途中で解消されるので、読後感は悪くないのが救いでもあります。

漁港が舞台なのに・・・

「漁港の肉子ちゃん」は漁港町が舞台の小説です。

しかし、主人公・肉子ちゃんが焼き肉店に勤めているからか海の幸はほぼでてきません。

キクコが学校の友人といっしょに行った夏祭りくらいしか魚介は登場しません。

ただ、港や町の様子などから十分に潮風は感じられました。

その代わり、焼き肉の描写はたまらなく美味しそうです!

特に「ミスジ」という部位を食べるシーンはおなかが空くほど美味しそうでした。

「ミスジ」とは

牛の肩から腕にある部位の肉。3枚の大きな筋が入っていることから三筋→ミスジと呼ばれるように。
1頭の牛から3kgほどしか取れない希少部位で、柔らかく濃厚な脂の味を味わえるとのこと。美味しそうですね。

肉子ちゃん&キクコの名字でもある「見須子」もこの「ミスジ」から取ったものだと思われます。

「肉子ちゃん」の魅力

「漁港の肉子ちゃん」の最大の魅力は、なんと言っても主人公・肉子ちゃんの人物造形ではないでしょうか。

声が大きく豪快で、すぐに誰とでも打ち解けるおおらかさを持った肉子ちゃん。

「肉子ちゃん」と呼ばれても嫌がらない心の広さも持っています。

テレビの言うことを何でも信じる単純さですが、肉子ちゃんの言葉には思わずハッとさせられる深さもありました。

その深さは相当壮絶な過去を持っていることとも関係があるのでしょう。

いかにもフィクション、といったキャラクターかもしれません。

しかし、日本のどこかにならこんな人がいるかもしれない、と思いたくなりました。

小説はキクコの成長とともに幕を閉じます。

物語が終わった後も、肉子ちゃんとキクコは2人でなんだかんだ仲良く生きていくのだろう。

そう思わせてくれるようなラストでした。

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