さくらももこさんのエッセイ「おんぶにだっこ」の感想・あらすじです。
唯一とも言える2歳~小学校1年生ごろまでの幼年期を綴ったエッセイ作品となっています。
懐かしさと切なさが胸に押し寄せる、どの世代の方もきっと共感できるエピソードが満載です。
- 作者:さくらももこ
- 対象:小学校中学年~
- エログロ描写なし
- 2006年11月に小学館より刊行
- 2019年に集英社より文庫化
「おんぶにだっこ」あらすじ
「おんぶにだっこ」はさくらももこさんのエッセイです。
2006年に初版刊行と、エッセイとしては後期の作品となります。
ただし、後期の作品としては珍しく、さくらももこさんの子ども時代を書き記したエッセイです。
さくらももこさんの後期のエッセイは、その当時の仕事の様子や身の回りの出来事が多く書かれています。
そんな「おんぶにだっこ」のあらすじを掲載します。
「もしも、太陽がもえつきたら……死ぬんだ……」と思っていたのは、6歳のころ。
天才か!!!!
ももこさんの奥深さに、びっくりする自伝エッセイ。二歳になっても「あんた、いつまで飲む気だね」と言われながらも乳離れしようとせず、ニシキヘビに興奮し家にあったマムシ酒のヘビにうっとり。星が欲しくてしょうがなかった四歳は、その後あの「たまちゃん」と小学一年生の時に運命的に出会う──。人一倍ナイーブで、なぜかいつも悩んでいた幼年期。「まる子」以前のピュアな気持ちを初めて書き綴った、さくらももこの原点となる自伝エッセイ。
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「おんぶにだっこ」は、さくらももこさんが2歳~小学1年生ごろのことを書き綴ったエッセイです。
正直、まず一番最初に驚くのは、2歳頃からの記憶が鮮明に残っていること。
『あとがき』では、さくらさん自身でも幼年期の事をとてもよく憶えていると綴っています。
それでも、タイムマシンで見てきたかのようにご自身の幼い頃の気持ち・考えが記されているのにはけっこうビックリします。
2歳の頃の記憶なんて、普通ないですよね・・・。わたしは全くないです。
そんな幼年期の記憶が残っていることを他人に話したところ「エッセイにした方がよい」と勧められたため、この「おんぶにだっこ」を書いたと語っています。
けれども、さくらさんは幼年期がテーマのエッセイを書くことは消極的だったとのこと。
それはさくらさん自身が「あまり面白くならないのでは」と思ったからです。
たしかに、この「おんぶにだっこ」は、これまでのさくらももこさんのエッセイよりも面白エピソードは少なめ。
全体的にノスタルジックで、どこかもの悲しい雰囲気すら感じました。
さくらさん自身も記していますが、さくらももこさんの幼年期は常に不安や悩みを抱えていました。
不安や悩みは友達のおもちゃを盗んでしまったという小さなものから、太陽が消えたら人間がみんな死んでしまうという大きなものまで実にさまざま。
とにかく色々なことを考え、不安になり、悩み、苦しみ、傷ついて生きていたのです。
あまりにも繊細で壊れそうなほど弱々しい心を持っていたさくらさん。
しかし、わたしも忘れてしまっているだけで、そんな風に小さいことから大きなことまで色々な不安や悩みを抱えて生きてきたのかもしれないとも考えました。
思い返せば、幼い頃は「両親・祖父母が死んでしまったらどうしよう」と考え、布団の中で泣いていた記憶があります。
「おんぶにだっこ」は、さくらももこさんの幼年期を覗き見るだけでなく、自身の幼年期を思い返し当時の傷を見つめ直すきっかけにもなるエッセイだと感じました。
泣き虫でピュアでナイーブだった幼年期
「おんぶにだっこ」の収録エッセイはどれも読み応えがありました。
さくらももこさんが幼年期の記憶を引っ張り出し、その当時の感情を思い出しながら書き綴っているので、とてもリアルな感覚で読み進められます。
読んでいるときはあまり感じなかったのですが、読み終わりふと自分の記憶と照らし合わせてみると、たしかに幼年期は今と世界の見え方が大きく違ったと思いました。
近所にある古びた洋館が怖かったり、乳母車から見た景色が好きだったり。
また、この「おんぶにだっこ」では最終的にさくらさんが泣いて終わる、という話が多かったように感じます。
初期のエッセイでは、飄々として何事にも動じない風な少女・女性なイメージでしたが、幼年期はこんなにも泣き虫だったのだなと、泣き虫だったわたしにはより親近感が湧きました。
ただ、こんなピュアでナイーブな女の子が「もものかんづめ」や「たいのおかしら」で綴っている物臭な少女になっていくのはやや不思議です・・・。
『あとがき』の強さ
すべてのエッセイの最後には、いつものように『あとがき』が収録されています。
しかし、この「おんぶにだっこ」のあとがきは、他のエッセイのあとがきと異なり、
- 「おんぶにだっこ」を書くことになった経緯
- 書いているときの悩み・葛藤
- 大人になるということについて
といったけっこうシリアスなことが綴られています。
特に、最後の「大人になるということについて」はとても哲学的で、胸に刺さりました。
正直、この「おんぶにだっこ」の中で一番印象に残った話です。
この『あとがき』だけでも子どものうちに読んでいたかったな・・・、とやや後悔しています。
2歳~小学校1年生ごろまでのエピソードが書かれたエッセイなので、お子さんでも身近に感じられて読みやすいと思います。
読むとセンチメンタルな気分になりますが、笑いどころもしっかりあり!
面白いのはお墨付きのさくらももこさんのエッセイ「おんぶにだっこ」の感想でした。
さくらももこさんの他のエッセイ
記念すべき第1作目「もものかんづめ」
父ヒロシ多め、3作目「たいのおかしら」
「おんぶにだっこ」よりも成長、小学校高学年から漫画家になるまで「ひとりずもう」
漫画家として成功し、結婚・離婚を経て幼い一人息子を育てる日常エッセイ「さくらえび」