「2020年の恋人たち」島本理生 2018年の東京で繰り広げられる恋愛小説

2020年の恋人たち島本理生イメージ 白ワイン 小説
Felix WolfによるPixabayからの画像

島本理生さんの小説「2020年の恋人たち」の感想です。

舞台は2018年の東京。

誰も彼も一筋縄ではいかず、こんがらがる人間関係の中、1人の女性がさまざまな恋愛を経て出した答えを描くストーリーでした。

「2020年の恋人たち」基本情報
  • 作者:島本理生
  • 対象:中学生~
    • 性的な描写あり
    • グロテスクな描写はなし
  • 2020年11月に中央公論社より刊行

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「2020年の恋人たち」について

「2020年の恋人たち」は島本理生さんの恋愛小説です。

恋愛小説、と書きましたが、恋愛を超えた人間ドラマが魅力的な小説でした。

まずは、そんな「2020年の恋人たち」のあらすじを掲載します。

ワインバーを営んでいた母が、突然の事故死。落ち着く間もなく、店を引き継ぐかどうか、前原葵は選択を迫られる。同棲しているのに会話がない恋人の港、母の店の常連客だった幸村、店を手伝ってもらうことになった松尾、試飲会で知り合った瀬名、そして……。楽しいときもあった。助けられたことも。だけどもう、いらない。めまぐるしく変化する日常と関係性のなかで、葵が選んだものと選ばなかったもの――。直木賞受賞後長篇第一作。

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「2020年の恋人たち」は、2018年に「ファーストラヴ」で直木賞を受賞された島本理生さんが受賞後に刊行した長編小説1冊目です。

直木賞受賞作品「ファーストラヴ」の感想はこちら

これまでもさまざまな『恋愛』をテーマに小説を書かれてきた島本理生さん。

この「2020年の恋人たち」は、そんな島本さんの新たな恋愛小説と言える1冊でした。

「2020年の恋人たち」感想・あらすじ

「2020年の恋人たち」の感想・あらすじです。

静かな怒濤の展開

「2020年の恋人たち」は、静かに淡々としながらも、怒濤の勢いでストーリーが展開していく小説でした。

物語は2018年の春、主人公である前原葵が母親を交通事故で失うところから始まります。

母親の死に衝撃を受ける葵には、母がこれから開店する予定だったワインバーが残されました。

会社員として働きつつ、ワインバーの経営ができるのか。

葵は悩んだ末に、ワインバーを引き継ぐことを決意。

求人に応募してきた料理人の松尾とともにワインバーのオープンに向け、動きだします。

と、ここまで書くと、一緒に店を切り盛りすることになる松尾との間に恋愛が起こる、と思いますよね。

しかし、葵の周りには、常に、葵を思う男性の存在があります。

葵は恋多き女性ではありません。

けれども葵の周りはいつも恋愛沙汰に溢れています。

そんな葵と何人かの男性による、恋愛劇はスピーディーで面白かったです。

魅力的、だけど致命的な欠点

「2020年の恋人たち」に登場する男性たちは、いずれも魅力的な印象です。

しかし、いずれも致命的な欠点を持ち合わせています。

その欠点は、些細なことから、到底受け入れがたいものまでさまざま。

誰が許せて、誰が許せないかは、読者によって変わるのだろうと思います。

また、その欠点たちは大抵初登場からしばらくしてから、後出しで判明します。

欠点が判明したときに、その登場人物の印象がガラリと変わるのはショックでした。

けれど、読み返すと序盤からその予兆を忍ばせているので、鈍い衝撃ではあります。

でも、みんな容姿が整っている風に描写されているんですよね・・・。

一見ロマンティックな状況のようで、深く知れば知るほど見たくなかった本性が現れてしまうのは、ちょっと嫌でもありつつ、でも恋愛小説としては最高でもありました。

誰もが予想していなかった2020年

「2020年の恋人たち」は2018年春から始まり冬までを描いています。

この小説が連載されていたのは2017~2019年まで。

2020年12月に刊行された際に加筆・修正されていますが、ほとんどがコロナ禍前に書かれた小説です。

ですので、小説の冒頭に『東京オリンピックに向けてお店を開店する』といったセリフがあったのを複雑な気持ちで読みました。

まさか、2020年に新型の感染症が流行しているとは思わなかったです。

この「2020年の恋人たち」を連載で書かれていた当時の島本さんも想像していなかったでしょう。

コロナ禍前に書かれた小説だからこそ、主人公・葵に待ち受ける、恋愛とは関係ない、大きな障壁に心が痛みます。

お酒を扱ったお店がコロナ禍により苦境に陥ったことは、ただの消費者であるわたしでも知っています。

葵を襲ったであろうコロナ禍は、わたしたち読者も経験しています。

だからこそ、この「2020年の恋人たち」が他とは違う小説になったのだろうと思います。

また、2018年の描写の華やかさは、もうコロナ禍で3年近く過ごしてきたわたしたちにとって、遠い世界の出来事でした。

誰もがマスクをしているわけではない、感染対策に躍起にならない。

そんな世界で生きてきたはずなのに、小説などフィクションの中の世界でしか見られない懐かしい風景になってしまいました。

ウイルスが蔓延する前に書かれ、ウイルスに世界が恐怖していた真っ只中に刊行された「2020年の恋人たち」は変わった時代を鮮明に映す鏡となっていました。


あえて、あらすじ・感想に書きませんでしたが、葵と義理の妹・瑠衣の儚い関係性は好きでした。

ただ、読んでいて瑠衣との関係性が一番ヒリヒリしたのも事実です。

また叔母の弓子の理解ある優しさや、奔放な母親の果子、たまたま出会った芹といった女性の登場人物の魅力が溢れた小説でもあります。

もちろん主人公の葵も魅力的です。

葵が複雑な人間関係の中で最終的に出した答えは誰にでも救いになるものだったと思います。

ここまで「2020年の恋人たち」の感想でした。

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