柚木麻子さんの小説「ランチのアッコちゃん」の感想です。
美味しい食事は人の心を満たしてくれますが、この「ランチのアッコちゃん」も心を元気にチャージしてくれます。
登場する料理の描写はとにかく美味しそうなので、おなかが空いているときに読むのは危険!
おなかがいっぱいでもおなかが空いてくる、どうしてもおなかが空いてしまう小説です。
- 作者:柚木麻子
- 対象:小学校高学年から~
- エログロ描写なし
- 2013年4月に双葉社より刊行
- 2015年2月に文庫化
- 2014年本屋大賞・第7位
「ランチのアッコちゃん」あらすじ
「ランチのアッコちゃん」は柚木麻子さんの連作短編小説です。
小説には食をテーマにした4つの短編が収録されています。
読んでいるととにかく美味しそうで、登場する料理をすべて食べたくなってしまう、ある意味危険な小説でもあります。
そんな「ランチのアッコちゃん」のあらすじを掲載します。
発行部数12万部を超え、著者を一挙に若手人気作家へと押し上げた注目作がついに文庫で登場! 彼氏にフラれて落ち込んでいた派遣社員の澤田三智子は、畏怖する上司、通称“アッコ女史”こと黒川敦子部長から突然、一週間のランチ交換を命じられる。表題作ほか、「読むと元気になる!」と絶賛され、本屋大賞にもノミネートされたビタミン小説。
ランチのアッコちゃん―Amazon.co.jp
たしかに「読むと元気になる!」ビタミン小説というキャッチコピーがしっくりくる小説です。
最近、暗い小説ばかり読んでいたので、こんなに明るい気持ちになれる小説に出会えて良かったな~、とわたし自身思いました。
発行部数12万部超えの大ヒット作!
「ランチのアッコちゃん」は刊行から2カ月で発行部数が10万部を突破!
さらに、その後も売り上げを伸ばし12万部超えの大ヒットを記録しています。
文庫ではなく単行本で10万部超えというのはスゴいですね。
当時、デビュー5年目の新人作家だった柚木麻子さん。
そんな柚木さんを一躍人気作家に押し上げた、初期の代表作とも言える名作です。
続編が2冊刊行済み!
「ランチのアッコちゃん」には続編として
- 「3時のアッコちゃん」(2014年)
- 「幹事のアッコちゃん」(2016年)
の2冊が刊行されています。
この2冊も速やかに読んでみたいと思います!
2015年に連続ドラマ化
「ランチのアッコちゃん」は2015年にNHK・BSプレミアムにおいて全8話の連続ドラマ化されています。
主演は蓮佛美沙子さん、共演は戸田菜穂さんです。
ドラマは現在はNHKオンデマンドで視聴できるようです。
各話のあらすじ&感想まとめ
「ランチのアッコちゃん」の全4話のあらすじと感想をまとめてみます。
ランチのアッコちゃん
表題作です。
彼氏に振られ身も心もボロボロの派遣社員・澤田三智子が、三智子が務める会社の部長である黒田敦子こと『アッコちゃん』と1週間ランチを交換するというお話になります。
アッコちゃんが紹介したランチはどれも美味しそうで、三智子がシンプルにうらやましくなりました。
わたしはカレーが好きなので、特に月曜日と金曜日の話がグッときました。
小説なのに想像だけでカレーの香りがしてくるようで、とにかくおなかが空きました。
また、毎日欠かさず自らの弁当を手作りしている三智子はとても偉いです。
節約志向で努力家な彼女は、もっと自分を高く評価してもいいとも思いました。
(三智子の自己評価が高かったら、この展開にはならないですけどね。)
1週間のランチ交換を通して、三智子が前向きに変化し成長していく姿にわたしも元気をもらいました。
夜食のアッコちゃん
『ランチのアッコちゃん』の続編です。
前の話で務めていた会社は倒産し、三智子は違う会社に派遣されていました。
その新しい派遣先では正社員と派遣社員の女子社員の間でバレンタインの激しい抗争が勃発。
気の弱い三智子は両社の板挟みになり、どんよりした気持ちでランチを食べているところで元・同僚であるアッコちゃんと再会します。
この『夜食のアッコちゃん』の最大の魅力は、なんといってもポトフ!
ハーブで本格的に煮込んだポトフなんて美味しいに決まってますよね。
季節は真冬の2月、ぽかぽかのポトフがお客さんたちの心まで温かくほぐしていく様子が読んでいてなんとも気持ちよく、とにかくおなかが空きました。
夜の大捜査先生
『ランチのアッコちゃん』『夜食のアッコちゃん』の三智子から、主人公がチェンジ。
三智子と同じように派遣社員として働く満島野百合が主人公となります。
この話はアッコちゃんが営んでいるキッチンカー・東京ポトフのお客さん側の話でした。
野百合のギャルだった高校時代の話は不健全ながらもどこかキラキラしていて魅力的に感じました。
わたしは2000年代前半は子どもだったのでギャル文化はテレビを通してみるくらい、知識としてしか知りません。
しかし、この『夜の大捜査先生』を読むと、自分が当時の渋谷にいてその空気を吸っていたのではないか、と思えるくらいリアルに感じました。
また、高校時代は目の敵だった教師と普通に話せるようになり、かつての自分のような少女を追いかける、という展開も面白かったです。
ゆとりのビアガーデン
この話は前3話とほとんど接点がない話でした。
しかし、作品に共通するテーマでしっかりとつながっています。
食は人々の心のオアシスになる。そんなメッセージが伝わってくる話でした。
ただ、この感想を書いている現在は2021年の夏。
おそらく日本全国のビアガーデンはコロナ禍の影響で開店できない状況に陥っています。
人々の心が疲れ、ストレスで神経がすり減っている今こそ、この『ゆとりのビアガーデン』のようなビアガーデンが必要なのでは?と思わずにいられませんでした。
全4話を通して、明るくさわやかに読み進められます。
170ページ弱とライトボリュームでもあり、気が沈んでいる時でも読めるパワーサラダのような小説でした。