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「同志少女よ、敵を撃て」逢坂冬馬 復讐のため狙撃手となった少女の戦いを描く戦争小説 2022本屋大賞

ロシアの冬 同志少女よ、敵を撃て 小説
anvelによるPixabayからの画像

逢坂冬馬さんの小説「同志少女よ、敵を撃て」の感想です。

第二次世界大戦における独ソ戦をテーマに、狙撃手となった少女・セラフィマの姿を描いた小説です。

戦争を通して、セラフィマが変わっていく姿が残酷でした。

本屋大賞を受賞、直木賞の候補作にもなった話題の傑作です。

「同志少女よ、敵を撃て」基本情報
  • 作者:逢坂冬馬
  • 対象:中学生~
    • 性的な描写あり
    • グロテスクな描写あり
  • 2021年11月に早川書房より刊行
  • 第11回アガサ・クリスティー賞・受賞作
  • 2022年本屋大賞・大賞獲得
  • キノベス!2022・第1位
  • 第166回直木賞・候補作
  • 第9回高校生直木賞・候補作

「同志少女よ、敵を撃て」について

「同志少女よ、敵を撃て」は逢坂冬馬さんの小説です。

今作が逢坂冬馬さんにとってデビュー作。

デビュー作とは思えない、圧倒的におもしろい小説でした!

デビュー作で本屋大賞を獲得した、偉業を成し遂げたことでも話題の「同志少女よ、敵を撃て」。

まずは、そんな「同志少女よ、敵を撃て」のあらすじを掲載します。

独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために。同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵”とは?

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「同志少女よ、敵を撃て」の舞台は1940年代のロシア。

主人公のセラフィマは1924年生まれ、ロシアの農村で暮らす普通の少女でした。

そんなセラフィマの穏やかな日常は1942年2月、暮らしていた村がドイツ軍の侵略により崩壊。

母親を含めた村人全員がセラフィマの目の前で殺害されてしまったのです。

捕らわれ、殺されかけたセラフィマは間一髪のところで赤軍(ロシア兵)に救われます。

セラフィマを救った女性兵士・イリーナは母親の遺体をぞんざいに扱い、その様子に激しい怒りを感じたセラフィマはイリーナへの復讐を誓うように。

イリーナを倒すため、その一心で、イリーナが教官を務める訓練学校で狙撃手になるための訓練を受けるようになるセラフィマ。

やがて、学校を卒業し、セラフィマは同じ訓練学校生たちとともに第二次世界大戦の前線に投入されます。


「同志少女よ、敵を撃て」は、第二次世界大戦中におけるロシアの女性狙撃手を描いた小説です。

主人公・セラフィマなどは架空の人物ですが、ロシア・ドイツの将校や女性狙撃手リュドミラ・パヴリチェンコは実在の人物です。

浅学なわたしはロシアでは女性も兵士として従軍していた事実を最近まで知りませんでした。

そんな女性ながら従軍し、狙撃手として戦績を残すことになる少女が描かれていきます。

「同志少女よ、敵を撃て」感想・あらすじ

「同志少女よ、敵を撃て」の感想です。

題材は『歴史・戦争』なのに読みやすい

「同志少女よ、敵を撃て」は第二次世界大戦まっただ中のロシアを描いた小説です。

ドイツとロシアによる戦い、いわゆる『独ソ戦(東部戦線)』をロシア側から描いています。

主人公・セラフィマは女性狙撃手として戦地を駆け巡ります。

本屋大賞の受賞作は毎年注目しているのですが、「同志少女よ、敵を撃て」は正直、歴史もの・戦争ものということで手が出しづらいな・・・、と思っていました。

海外の歴史どころか、日本の歴史すら怪しいのにちゃんと読めるのだろうか?

そもそも戦争小説って読んだことないな・・・。

とビクビクしながら読み始めたのですが、そんな心配は不要でした。

ビックリするほど、読みやすかったです。

小説内では時折、戦況の説明が挟まれますが、地図上での説明があったのでとても理解しやすかったです。

わたしのように『独ソ戦』についてほとんど何も分からない、という人でも十分におもしろく読める小説でした。

牧歌的な訓練学校から戦地へ

生まれ故郷である村を失い、命を救われたイリーナにセラフィマが連れてこられたのは、女性狙撃手を育てるための訓練学校でした。

その学校にはセラフィマのように家族や故郷を失い、ドイツ軍に復讐を誓う少女たちが集まっていました。

セラフィマはそんな少女たちと切磋琢磨しながら、狙撃手になるための訓練を積んでいきます。

その訓練は字面だけでも相当過酷なことが分かります。

しかし、理不尽な懲罰などがなく、訓練生同士のイジメなどもなく、どこか牧歌的に描かれているのが特徴です。

少女たちは似た境遇なので、いがみ合う必要がなかったのでしょう。

のどかさすら感じる訓練学校ですが、随所に戦争を感じさせるシーンももちろんあります。

ただの猟師の娘だったセラフィマは、まだ訓練学校では猟師の娘であり続けました。

最後の試験が終わり、いよいよ戦地に赴くのですが、この先の展開は辛いものばかりになりそうだったので、読むのに躊躇したのも事実です。

訓練生の少女のキャラクターが魅力的なのと、だんだん仲良くなっていく様子が、これから地獄の日々を迎える、嵐の前の静けさに感じました。

実際、その予想は当たります。

セラフィマの変化が悲しい

「同志少女よ、敵を撃て」のページ数のうち2/3ほどを占めるのが戦地の描写です。

最初の戦闘において兵士としての洗礼を受け、激戦地となったスターリングラードでの戦いでセラフィマは狙撃手として経験を積みます。

スターリングラードの戦いが終結し、その約2年後、セラフィマは名狙撃手として知られるようになっていました。

その時点で、あどけない純粋な少女だったセラフィマは消え、冷酷な狙撃手そのものになっていることに驚きます。

そして、独ソ戦の末期、セラフィマは母親の敵である狙撃手と対峙することに。

かつて目の前で母親を撃ち殺した狙撃手と、復讐を誓い狙撃手として頭角を現すようになったセラフィマ。

そんな2人の勝負は手に汗握る展開で、読んでいるこちらも緊張で文字を追うのに没頭してしまいました。


500ページ弱の長編ですが、スリリングな展開とテンポの良さから、長さを感じさせず一気に読んでしまう面白さがありました。

あらすじにもありますが、最後にセラフィマは『真の敵』を見出します。

その敵の正体と、セラフィマに訪れる結末は、胸がざわつき、掻き毟られるような辛さを感じます。

おそらくハッピーエンドに分類される結末なのでしょうが、どうしても心が落ち着きません。

戦争を描いた小説において、従軍する少女を主人公に据えた意味を感じずにはいられないラストでした。

ロシアによる侵攻が起こっている今だからこそ読むべき小説だったと思いますし、読んで良かったと思える小説です。

ここまで「同志少女よ、敵を撃て」の感想でした。

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