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「魔法使いの弟子たち」井上夢人 未知のウイルス感染症から生還した人たちの数奇な運命とは?医療SF長編

マスク ゴム手袋 魔法使いの弟子たちイメージ 小説
AlexaによるPixabayからの画像

井上夢人さんの小説「魔法使いの弟子たち」の感想です。

未知のウイルス感染症・竜脳炎にかかり、奇跡的に生存した主人公。

その主人公と同じ生還者の2人は、竜脳炎の後遺症により特殊な能力を得ることになります。

ウイルスと能力によって人生を狂わされた3人の運命とは?医療SFサスペンスの長編です。

「魔法使いの弟子たち」基本情報
  • 作者:井上夢人
  • 対象:中学生~
    • 性的な描写なし
    • グロテスクな描写あり
  • 2010年4月に講談社より刊行
    • 2013年4月に文庫化

「魔法使いの弟子たち」について

「魔法使いの弟子たち」は井上夢人さんの小説です。

『魔法使い』という言葉からファンタジーかな?と思い読み始めたこの「魔法使いの弟子たち」。

蓋を開けてみると医療SF×サスペンスといった感じでした。

設定はもちろんながら、全く予想がつかない展開となっていき、面白すぎて一気読みしてしまいました。

まずは、そんな「魔法使いの弟子たち」のあらすじを掲載します。

山梨県内で発生した致死率百パーセント近い新興感染症。生還者のウィルスから有効なワクチンが作られ拡大を防ぐが、発生当初の“竜脳炎”感染者で意識が戻ったのは、三名だけだった。その中の一人で、週刊誌記者として取材にきて感染した仲屋京介は、二人の生還者とともに病院内での隔離生活を続ける。やがて彼ら三名は、「後遺症」として不思議な能力を身につけていることに気づき始める。壮大なる井上ワールド、驚愕の終末―。

魔法使いの弟子たち(上)―Amazon.co.jp

主人公は週刊誌で記事を書いているフリーライター・仲屋京介。

京介は山梨県甲斐市にある竜王大学医学部附属病院で発生した院内感染事故を取材するため現地へ行き、その院内感染の原因であるウイルスに自らも感染してしまいます。

約10日間、生死の境をさまよい、目が覚めた京介。

感染者のほぼ全員が亡くなったウイルス・竜脳炎から生還したものの、病院内に隔離される日々が続いていました。

京介の他に竜脳炎から回復したのは、女優志望の落合めぐみと、93才の老人・興津繁の3人のみ。

また、意識不明の状態が続くものの、亡くなっていない恵の恋人・木幡耕三も含めると4人のみでした。

外界から遮断された3人は、徐々に、自分たちが以前とが違ったある能力を得ていることに気付き始めます。

医師たちは『後遺症』と呼ぶその能力は、いわゆる超能力と呼ばれる力でした。

図らずも超能力を手に入れてしまった3人の数奇な運命が始まります。

「魔法使いの弟子たち」感想・あらすじ

「魔法使いの弟子たち」の感想・あらすじです。

描かれたのは『未知のパンデミック』

『竜脳炎』という未知のウイルスによるパンデミックが描かれた「魔法使いの弟子たち」。

同作は2010年4月に刊行された小説で、つまり新型コロナウイルス感染症の10年前(連載は2008~2009)に描かれたことになります。

新型コロナウイルス以前に描かれたパンデミックがテーマのフィクションを数作読んだり、映画を観たりしたのですが、その描かれ方は新型コロナウイルスで実際に体験したこととよく似ていました。

パンデミックによる社会の変化はフィクションではずっと前から描かれてきたものなのだな、と思わず感心してしまいます。

この「魔法使いの弟子たち」でもパンデミックによる社会の変化は描かれ、その様子は新型コロナウイルスを彷彿とさせました。

ただ、作中で描かれる『竜脳炎』は局所的かつ致死率ほぼ100%という真正の殺人ウイルスなので、さすがに全てが全て同じというわけではありません。

それでも、社会の受け止め方やパニックの様相などは非常にリアルでした。

現実として経験したからこそそう思います。

未知のパンデミック、というのはフィクションとしては定番でした。

しかし、実際に未知のパンデミックを経験した現在では、フィクションとしての面白さは残っているものの、自分事として捉えるようになりました。

純粋にフィクションとして楽しめることがなくなったのは残念だと思います。

『後遺症』の良し悪し

「魔法使いの弟子たち」で、ウイルス性感染症『竜脳炎』から生還した3人は、それぞれが『後遺症』と呼ばれる超能力を得ることになります。

人知を超えた超能力を得た3人。

その反応は喜びよりも恐怖でした。

超能力があったらな~、と妄想するのは楽しいですが、いざ手にすると確かに恐怖を覚えるのが自然かもしれません。

超能力を得た3人(厳密に言えば2人)は、その力をコントロールし、使いこなせるようになっていきます。

そして、めぐみの要望により、外界とのつながりを得るためテレビに出演することに。

隠すでもなく、密かに悪用するでもなく、むしろ堂々と超能力を見せつける。

大胆な発想ですが、そうでもしない限り、殺人ウイルスに感染した人たちは一般社会で生きていくすべがない、と考えるとけっこう辛いです。

ただ、その方針が後に大事件を引き起こすことになるのがやはり辛いところでした。


予想ができない展開にハラハラしっぱなし、つい一気に読んでしまう面白さがありました。

結末についてですが、レビューサイトなどでは賛否ありますが、わたしは希望がある終わり方だったのでむしろ良かったと思います。

あのまま絶望を迎えるよりは、未来がある希望がある終わり方の方が後味が良いです。

結末はいずれにしても、テンポが良く、圧倒的に読ませる力がある作品でした。

500ページ超えで大長編ですが、時間があるときにチャレンジしてみてください!

ここまで「魔法使いの弟子たち」の感想でした。

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