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「ぼっけえ、きょうてえ」岩井志麻子 とても、怖い 人間の怖さが存分に描かれた古典ホラー

鬼灯 ぼっけえ、きょうてえ イメージ 小説
NoName_13によるPixabayからの画像

岩井志麻子さんのホラー小説「ぼっけえ、きょうてえ」の感想です。

明治時代の岡山県を舞台に繰り広げられる古典ホラー4編が収録されています。

人間って、怖い。と心の底から思える、とても良いホラーでした。

「ぼっけえ、きょうてえ」基本情報
  • 作者:岩井志麻子
  • 対象:中学生~
    • 性的な描写あり
    • グロテスクな描写あり
  • 1999年10月に角川書店より刊行
    • 2002年7月に文庫化(角川ホラー文庫)
  • 第6回日本ホラー小説大賞・受賞
  • 第13回山本周五郎賞・受賞

「ぼっけえ、きょうてえ」について

「ぼっけえ、きょうてえ」は岩井志麻子さんのホラー小説です。

作家としてだけでなく、テレビでも活躍している岩井志麻子さんの小説を初めて読みました。

正直、テレビでのイメージしかなかったので、どんな小説を書くのかすら知らず、ドキドキで読み始めたのですが、とても面白かったです。

こんなに面白かったなんて、もっと早く読めば良かったです。

そんな「ぼっけえ、きょうてえ」のあらすじを掲載します。

「教えたら旦那さんほんまに寝られんよになる。……この先ずっとな」時は明治、岡山の遊郭で醜い女郎が寝つかれぬ客にぽつり、ぽつりと語り始めた身の上話。残酷で孤独な彼女の人生には、ある秘密が隠されていた……。岡山地方の方言で「とても、怖い」という意の表題作ほか三篇。文学界に新境地を切り拓き、日本ホラー小説大賞、山本周五郎賞を受賞した怪奇文学の新古典。

ぼっけえ、きょうてえ―Amazon.co.jp

「ぼっけえ、きょうてえ」は、岩井志麻子さんの出身地である岡山県を舞台にしたホラーです。

時代は明治。

今から140年ほど前となります。

明治維新で近代化が進む日本。

しかし、農村や漁村の生活は大きく変わらず、ひたすら貧しい描写が続きます。

とにかく貧しいのです。

過酷な生活は異形の存在と肉薄していました。

ただ、怖いのは異形だけではありません。

異形よりも人間の方がよほど怖いですね。

そんな人間の恐ろしさと、異形を描いた怪異系のホラーとなります。

「ぼっけえ、きょうてえ」感想・あらすじ

「ぼっけえ、きょうてえ」の感想・あらすじです。

収録された4編のお話ごとにまとめていきます。

ぼっけえ、きょうてえ

女郎が客に聞かせる身の上話。

表題作でもある『ぼっけえ、きょうてえ』は女郎の語り口調で進んでいきます。

岡山県の方言全開で話は展開していくので、最初はとっつきにくさも感じましたが、すぐに物語に引きずり込まれます。

引き込まれるというか、ズルズルと引きずり込まれました。

一方的な話し口調のみなのに、その場の情景や、過去の出来事があまりにも鮮明に浮かび上がってくるのはスゴいを通り越して気味が悪いくらい。

語られる内容があまりにも不気味なのもその理由でしょう。

現在の倫理観では到底受け入れられない出来事がまざまざと語られ、聞き手の男のように読者である私たちも肝が冷えます。

ずっと怖いのに、結末もおぞましく、ああホラーだと、最終的には満ち足りた気分になりました。

ちなみに、タイトルの『ぼっけえ、きょうてえ』は岡山の方言で『とても、怖い』という意味です。

密告函

コレラにかかった人間を告発するための『密告函』。

感染症への恐れは、現代のコロナウイルスまでも続く、人類の宿命とも言えます。

匿名でコレラ患者を通報するための箱として設置された『密告函』。

その箱を開封し、通報があった者の家を訪ねる、そんな役目を担うこととなった役所勤めの弘三が主人公です。

妻も子もいる弘三ですが、以前から村外れに住む祈祷師の娘・咲に不純な思いを抱いていました。

そんな中、密告函に咲の通報があり、仕事と自分に言い聞かせ、弘三は咲の家へと赴きます。

咲と出会い、案の定、咲との関係に溺れる弘三。

家庭をないがしろにするようになり、仕事も手に付かない始末でしたが、ある日事件が起こります。

いわゆる怪異が登場するわけではありませんが、現代にも通じる恐ろしさがあるのが『密告函』の怖さ。

この怖さの正体は嫉妬なのか、恨みなのか。

家庭を司る妻の怒りを買うことの恐ろしさをヒシヒシと感じました。

あまぞわい

貧しい漁村に嫁いだ女と、女を嫁に迎えたものの後悔している男。

漁村がある島に伝わる怪談『あまぞわい』を巡る物語です。

海女と尼、2種類の伝承がある『あまぞわい』。

物語はそのどちらにも当てはまる結末を迎えます。

何というか、登場人物が基本的に身勝手で、でもその気持ちが分からなくもないのが難しいところでした。

閉鎖的な漁村の描写はなかなかに辛いです。

主人公・ユミが孤独に耐えかね、救いを求めるのも無理はありません。

その結末はユミが薄々予想していたとおりで、しかしゾッとするようなラストを迎えます。

淡々としていて、全体的に乾いた雰囲気だったのが印象的でした。

依って件(くだん)の如し

悪い未来を予知し、予知するとすぐに死んでしまう。

『依って件の如し』は、そんな妖怪・件(くだん)にまつわるお話でした。

村八分にされている幼い少女・シズとその兄・利吉の兄妹。

利吉は日清戦争のため徴兵され、シズは村に一人残されます。

徴兵される前、利吉は「日本は戦争に勝つ」と言い残していました。

預けられた家で酷い扱いを受けながらも何とか生きていたシズですが、ある晩、その家が何者かに襲われ、シズ以外の家族が惨殺されます。

シズは親切な老夫婦に引き取られましたが、兄は戦死したとされ、帰ってきませんでした。

貧しい毎日を過ごしながら何とか生き延びたシズ。

そんなシズの前に兄・利吉が帰ってきます。

兄との生活が再開しますが、シズは兄に大きな恐怖を感じ続けていました。

時折シズが見る牛の化け物。

半人半牛の化け物である件の姿です。

なぜシズに件の姿が見えるのか、なぜ利吉を恐れてしまうのか。

序盤から提示され続けた疑問が全て解決していくラストは、ホラーでもありますがミステリーのようでもありました。


収録された4編はいずれも人間の恐ろしさが描かれたホラーです。

イヤな人間が描かれているわけではなく、普段は良い人なのに、その人間の奥底に眠る悪意が露わになる。

そんな怖さでした。

村の狭い人間関係や、さらに狭い家庭内での悪意は逃れようのない恐怖です。

現代にも通じる怖さを存分に味わえた、とても良いホラー小説でした。

ここまで「ぼっけえ、きょうてえ」の感想でした。

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