エラリー・クイーンの小説「エラリー・クイーンの冒険」の感想です。
探偵エラリー・クイーンの推理が冴え渡る短編が11編、さらに序文も収録された『新訳・完全版』とも言える1冊。
エラリー・クイーン初心者だったわたしでもずっと楽しく読み進められる、軽快なミステリーは必見です。
- 作者:エラリー・クイーン
- 訳者:中村有希(『新訳版』)
- 対象:小学校高学年~
- 性的な描写はなし
- ややグロテスクな描写あり
- 1934年にアメリカで初版が刊行
- 日本では1961年に初版刊行
- 2018年7月に『新訳版』が登場
「エラリー・クイーンの冒険」あらすじ
「エラリー・クイーンの冒険」はアメリカの作家であるエラリー・クイーンの短編ミステリー小説です。
この小説には、名探偵エラリー・クイーンが活躍する推理短編が11編収録。
小説だけで500ページ弱という、大変ボリューミーな内容となっています。
しかし、1編では40~60ページほどなので、サクサクと読みやすかったです。
そんな「エラリー・クイーンの冒険」のあらすじを掲載します。
犯罪学の講師になったエラリーが、学生たちと推理を競う「アフリカ旅商人の冒険」、サーカスの美姫殺しを扱った「首吊りアクロバットの冒険」、切れ味鋭いダイイングメッセージもの「ガラスの丸天井付き時計の冒険」、『不思議の国のアリス』の登場人物に扮した人々が集う屋敷での異様な出来事「いかれたお茶会の冒険」など、名探偵の謎解きを満喫できる全11編の傑作が並ぶ巨匠クイーンの第一短編集。初刊時の序文を収録した完全版。
エラリー・クイーンの冒険―Amazon.co.jp
この「エラリー・クイーンの冒険」の初版が発行されたのは1934年。
日本は昭和9年、今(2021年)から87年前ですね。
小説の舞台は書かれた1930年代のアメリカで、当時のアメリカの様子が鮮明に描かれているのも特徴です。
わたしは最近アガサ・クリスティーの小説をよく読んでいるのですが、時代はほぼ同じでもイギリスのクリスティーとアメリカのクイーンでは世情がけっこう違い、とても興味深かったです。
貴族社会が色濃く残るイギリスと比べ、古い文化のないアメリカは新しい国というイメージでした。
読みやすい『新訳版』が2018年に登場
わたしが読んだ「エラリー・クイーンの冒険」は、2018年7月に刊行された創元推理文庫「エラリー・クイーンの冒険『新訳版』」です。
エラリー・クイーンの冒険【新訳版】 (創元推理文庫)
わたしにとって初めてのエラリー・クイーンがこの『新訳版』でした。
よって比較することはできませんが、同書「エラリー・クイーンの冒険」解説には
本書「エラリー・クイーンの冒険」を推すにあたって、唯一気がかりだったのが訳文の古さによる読みづらさでした
と書かれていました。
もともとの訳は1961年刊行から変わっていなかったので、古いのは仕方ないですね。
しかし、今回の『新訳版』になりとても読みやすくなったとのこと。
実際、わたしも古典ミステリーにしてはストレスなく読みやすいと感じました。
古典ミステリーは少し苦手、と敬遠している方にもオススメしやすい読みやすさだと思います。
序文+11短編が収録された完全版
「エラリー・クイーンの冒険『新訳版』」はこれまで日本で出版されていた同書と違い「序文+11もの短編」が収録されています。
これまでの、いわゆる『旧訳版』では同書の巻末に収録されている「いかれたお茶会の冒険」が割愛され、別の短編集に収録されていました。
さらに序文も割愛。全10編の短編集として刊行されてきました。
しかし、この『新訳版』でオリジナルと同じ「序文+11の短編」という形式を踏襲。
日本語で初めての完全版「エラリー・クイーンの冒険」として世に出たとのこと。
アメリカの初版と同じ構成の「エラリー・クイーンの冒険」が読める、というのは相当スゴいことらしいです。
ともかく完全な形の「エラリー・クイーンの冒険」を読みたい方にもオススメです。
※参考 東京創元社のウェブマガジン「Webミステリーズ!」
約60年ぶりの新訳版はこんなにすごい! エラリー・クイーン『エラリー・クイーンの冒険』[2018年7月]
↑の記事は「エラリー・クイーンの冒険」愛があふれていて、読んでいて気持ちが良かったです。
作者エラリー・クイーン=名探偵エラリー・クイーン?
「エラリー・クイーンの冒険」でエラリー・クイーンデビューを果たしました。
これまで『名前は知っているけど・・・』程度の知識しかなかったので、エラリー・クイーンについて一番気になることを調べてみました。
それは主人公=作者名ということ。
小説の主人公と作者の名前が同じミステリーはこれまでも何度か読んだことがあります。
ただ、今回の「エラリー・クイーンの冒険」は時代も古く、知識もほぼなかったので『まさか本人の自伝じゃないよな・・・』との考えも若干ありました。
気になったので調べたところ『エラリー・クイーン』は完全に架空の人物でした。
そもそも『エラリー・クイーン』というペンネームは、
- フレデリック・ダネイ
- マンフレッド・ベニントン・リー
という2人の人物がミステリー小説を書く際に使った共同の名義でした。
つまり『エラリー・クイーン』は2人いたのですね!
ちなみに、↑の2つの名前もそれぞれペンネームで本名は違います。
小説家で2人組というのは、世界的に見ても珍しいのでは?と思います。
執筆は、プロット・トリックをダネイが、ストーリーをリーが作るという分業。
それぞれの得意分野を持ち寄り、1つの作品にしていたのですね。
「エラリー・クイーンの冒険」は古典ながらポップな印象
「エラリー・クイーンの冒険」は1934年に初版が発行した古典ミステリー。
しかし、作品全体はポップで、どことなく色がハッキリした印象を持ちました。
クリスティー作品のような厳かでクラシカルな雰囲気がないからかもしれません。
どちらかというと、短編だったからかコナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズに近いと感じました。
探偵役のエラリー・クイーンが若い青年というのも、ポワロやミス・マープルを読んでいる身としては新鮮に映りました。
ミステリーが好きだけど、古典はあまり・・・、という方にこそオススメしたい「エラリー・クイーンの冒険」でした。
続編「エラリー・クイーンの新冒険」の感想は↓