知念実希人さんのミステリー小説「真夜中のマリオネット」の感想です。
『真夜中の解体魔』という連続殺人鬼に婚約者を奪われた女性医師が、その『真夜中の解体魔』の容疑がかけられている少年とともに真犯人を追うミステリーです。
スリリングで予想ができない展開に心躍り、一気読み必至!
- 作者:知念実希人
- 対象:中学生~
- 性的な描写ややあり
- グロテスクな描写あり
- 2021年12月に集英社より刊行
「真夜中のマリオネット」について
「真夜中のマリオネット」は知念実希人さんのミステリー小説です。
現役で医師として勤務する知念実希人さんによる医療ミステリー。
といっても、医療の専門的な知識がなくても、読み進めるのに問題はありません。
また、ミステリーやアクションの要素が強いので、ハラハラするスリリングな展開が好きな方にオススメしたい小説です。
そんな「真夜中のマリオネット」のあらすじを掲載します。
殺した後、一晩かけて遺体をバラバラにする殺人鬼――通称「真夜中の解体魔」。婚約者を殺された救急医の秋穂は、深い悲しみを抱えながらもなんとか職場に復帰をしたところだった。そこに運ばれてきたのは、交通事故で重傷を負った美少年・涼介。無事、命を救うことができたが、手術室を出た秋穂に刑事が告げる。「彼は『真夜中の解体魔』だ」と――。
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涼介に復讐しようとする秋穂に、涼介は綺麗な涙を流しながら訴える。「僕は罠にかけられただけなんです」と――。無実に思える証拠を見せられた秋穂は、ためらいながらも涼介と真犯人を探すことになるが……。
涼介は真犯人に操られた哀れな人形(マリオネット)なのか、それとも周囲を操る冷酷な人形遣いなのか。衝撃のクライマックスに、きっとあなたは絶叫する。
主人公は救急医として勤務する小松秋穂。
秋穂は半年前に婚約者を亡くし、失意の中で日々を過ごしていました。
そんなある日、勤務中の秋穂の前に1人の美しい少年が搬送されてきます。
重傷を負った石田涼介というその少年の命を救った秋穂ですが、彼に付き添った刑事から、涼介は連続殺人犯である『真夜中の解体魔』の容疑者である、と告げられます。
激しいショックを受ける秋穂。
その『真夜中の解体魔』こそ、秋穂の婚約者を惨殺した張本人だったからです。
担当医の立場を利用し、婚約者の敵を討とうとした秋穂。
しかし、その寸前に涼介が、自分は犯人ではない、罠に嵌められた、と訴えだします。
秋穂はその言葉を信じ、涼介の無実を叶えるため真犯人捜しに奔走するように。
果たして、真実とは?
というのが「真夜中のマリオネット」のあらすじです。
300ページ超えの長編ですが、テンポがよくて一気に読めます。
アクション映画のようなスリリングな展開も読み応えがあってよかったです。
【ネタバレなし】「真夜中のマリオネット」感想・あらすじ
「真夜中のマリオネット」のネタバレなし感想・あらすじです。
現実離れしている?結末を知ると納得
「真夜中のマリオネット」は、医師である秋穂が刑事さながらの捜査力で真犯人に食らいついていくミステリーです。
秋穂は、涼介に出会う前は婚約者を亡くし失意のどん底にいたただの医師でした。
しかし、涼介に出会い、婚約者を奪った『真夜中の解体魔』に復讐するという目的を得て、常人離れした捜査力で真犯人に一歩ずつ近づいていきます。
涼介の家に侵入し、身分を偽って関係者に話を聞き、記者すら巻き込んで情報を得る。
さながら刑事ものや探偵もののミステリーを読んでいるようでした。
その活躍ぶりはあまりにも現実離れしています。
さすがにここまではやらないだろう、という限度を軽々飛び越えています。
けれど、読み終えた後、その現実離れした描写すらどこか腑に落ちてしまうのがある意味怖かったです。
新感覚のバディものでもある
「真夜中のマリオネット」は、復讐のために動く女性医師と、病室から身動きが取れない少年という、異色のバディものミステリーとも言えます。
一歩ずつ事件の真相や真犯人に近づいていく、捜査の過程は読み応えがあって面白かったです。
また、バディを組んだものの、涼介が本当に無実なのか?と常に揺れる秋穂の心情も理解できました。
それでも、手がかりが少ない中、涼介を頼り、復讐をやり遂げようとする秋穂の意志には共感できます。
人間、切羽詰まるとどんなことでもできるものなのだろう、と思わされました。
ネタバレになるので真相はかけませんが(↓で書きます)、読後感は満足です。
ここまで清々しく後味が悪いともはや最高でした。
ネタバレなしの「真夜中のマリオネット」の感想でした。↓ではネタバレありで感想を書いていきます。
ここからは【ネタばれあり】で「真夜中のマリオネット」の感想を書いていきます。
未読の方はご注意ください。
【ネタバレあり】「真夜中のマリオネット」の感想
結局、みんな石田涼介のマリオネット(操り人形)だったのだな、というのが「真夜中のマリオネット」を読み切った感想です。
容疑者だった石田涼介は『真夜中の解体魔』の真犯人。
秋穂をは涼介を無罪にするための操り人形としていいように操られ、なまじ優秀なため無実の証拠すら集めてしまい、結果、真犯人だった涼介を野放しにしてしまう。
「真夜中のマリオネット」は、スッキリするほどのバッドエンドで幕を閉じました。
ただ、この『真夜中の解体魔』の真相は、ラストに畳みかけるように判明していくため、ちょっと混乱してしまいました。
そこで、少し整理していきたいと思います。
まず『真夜中の解体魔』の被害者は4人とされていました。
1人目は安里千代、涼介の元恋人・雪絵の母親です。
2人目は村元咲子。
村元咲子は最終的に刑事・倉敷と不倫関係にあったことが分かります。
3人目は荒巻一輝、秋穂の婚約者でした。
そして4人目が安里雪絵。
4人目の被害者・雪絵の殺害現場にいた涼介は、その現場を刑事・美濃部と倉敷により目撃され、逃亡の末、大怪我を負い、秋穂が勤務する病院へ運ばれることになります。
このうち『真夜中の解体魔』だった涼介が殺害したのは1人目から3人目までの3人。
4人目の雪絵は、涼介の犯行を確信した雪絵の自殺と、その協力者である倉敷の、涼介を逮捕させるための共犯でした。
4人目の雪絵ときのみ涼介に明確なアリバイがあったため疑いが外れることにありましたが、逆に言えば、他の被害者のときはアリバイを確認できていません。
涼介はずっと『罠に嵌められた』と繰り返していましたが、たしかに涼介は雪絵の殺害に関しては嵌められていたので間違いではありません。
その真実に隠された巧妙な嘘で、秋穂も、わたしも見事に騙されました。
語り手の秋穂から見た涼介はとても魅力的な少年でした。
弱々しい美少年、というのはどうしても庇護欲を掻き立てるものなのでしょう。
その毒牙に見事にかかってしまいましたが、読後感は案外悪くないです。
読者としてであれば、彼の操り人形になるのも悪くないと思ってしまいました。