アメリカの作家ルイーザ・メイ・オルコットの小説「若草物語(第一部)」の感想です。
1800年代後半のアメリカに暮らす10代の四姉妹と母親の1年間を描くホームドラマと青春小説を掛け合わせた名作文学です。
四姉妹の何気ないのにみずみずしく美しい、そしてかけがえのない生活が描かれています。
古いのに古臭さを感じない、少女の成長がテーマの小説でした。
- 作者:ルイーザ・メイ・オルコット(Louisa May Alcott)
- 訳者:麻生九美
- 対象:小学校高学年~
- エログロ描写なし
- 1868年にアメリカで初版が刊行
- 日本では1906年に『小婦人』という名前で刊行
「若草物語」あらすじ
「若草物語」 はアメリカの作家ルイーザ・メイ・オルコットの小説です。
初版が刊行したのは1868年と、今から150年も前。日本ではちょうど大政奉還があった年ですね。
そんな世界的に有名な文学作品であるにもかかわらず、わたしはこれまで「若草物語」を読んだことがありませんでした。
なんとなく、とっつきにくいというか、昔の作品だったので敬遠していたところもあります。
しかし、今回手に取り読んでみてその面白さに感動しました。
時代を感じさせない、今の時代にも通じる魅力があふれた小説です。
そんな 「若草物語」 のあらすじを掲載します。
メグ、ジョー、ベス、エイミー。感性豊かで個性的な四姉妹と、南北戦争に従軍する父親に代わり家を守る堅実な母親との、1年間の物語。隣家のローレンス氏や少年ローリーらとの交流を通し、少女たちは大人に近づいていく。ティーンエイジャーの日常を生き生きと描く。150年の間、世界中の女子が夢中で読んできた、今も全世界で愛されるベストセラーを、鮮度抜群の新訳で贈る。
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↑のあらすじにあるように、この「若草物語」は四姉妹と母親の1年間の物語です。
裕福ではないながらも慎ましく幸せな家族の生活が、親しみやすい柔らかな文体で描かれています。
この読みやすい文体は新訳版の訳者・麻生九美さんの手によるもの。
1800年代後半のアメリカが舞台なのに、現代に通じる感性があり「若草物語」の雰囲気に合っていると思いました。
文学作品は堅苦しくて読みづらい、と思って遠ざかっている方にこそオススメしたい作品です。
実は第4部まである「若草物語」
わたしが今回読んだ若草物語は第一部。
この先も「若草物語」のストーリーは
- 続・若草物語
- 第3・若草物語
- 第4・若草物語
と続き、第4部で完結します。
わたしはこの事実を全然知らなかったので、これから読みたい本が3冊増えてしまいました。
「若草物語」登場人物
「若草物語」は、
- メグ(マーガレット):16歳
- ジョー(ジョセフィーン):15歳
- ベス(エリザベス):13歳
- エイミー:12歳
の四姉妹を中心にストーリーが展開していきます。
四姉妹はそれぞれで性格がまったく異なり、彩り豊かでした。
※年齢は第一部「若草物語」スタート時点の年齢です。
四姉妹は、
- マーチ夫人(ママ):四姉妹の母親
- ハンナ:四姉妹の家の女中
- ローリー(セオドア・ローレンス):四姉妹の隣人で15歳の少年
- ローレンス氏:ローリーの祖父
- マーチ伯母:四姉妹の大伯母(父親の伯母)
- ジョン・ブルック:ローリーの家庭教師
といった人物たちとの出会い・交流を通して成長していきます。
また、四姉妹には南北戦争に従軍している父親もいますが、物語の最後にしか登場しません。
あくまで四姉妹と母親とその家族を取り巻く周囲の人々といった構図で物語は進みます。
自伝的小説としての一面も
この 「若草物語」 は作者ルイーザ・メイ・オルコットの自伝的小説でもあります。
そんなルイーザ・メイ・オルコットの経歴も掲載します。
1832‐88。アメリカの小説家。進歩的な思想家・教育者である父ブロンソン・オルコットと母アビゲイルの次女としてフィラデルフィアで生まれる。家計を助けるため、16歳ごろから執筆を始める。同時に家庭教師などのさまざまな仕事をしながら書き続け、四姉妹の日常生活を描いてベストセラーとなった自伝的小説『若草物語』で作家としての地位を築く。以後、家計の貧困からは解放され、旺盛な執筆活動を続ける。父が他界した2日後である1888年3月4日、55年の生涯を閉じる
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裕福ではない四姉妹の次女として生まれたルイーザ・メイ・オルコット。
つまり「若草物語」ではジョーがルイーザ自身を投影したキャラクターということになります。
実際、ジョーは本が好きで、自身でも小説を執筆し16歳の夏に小説を新聞社に持ち込むという展開も。
そのため、映像化された作品ではジョーが主人公として扱われることが多いです。
また、その他の登場人物にもモデルがいて、四姉妹はそのままルイーザの姉妹がモデルになります。
ルイーザ・メイ・オルコットが 「若草物語」 を執筆したのは36歳の時。
少女時代を思い出しながら書かれたので、姉妹の雰囲気や生活の細々とした部分はとても鮮明に感じました。
「若草物語」の原題について
日本では「若草物語」という名前で有名なこの小説。
しかし、アメリカでの原題は「Little Women(リトル・ウィメン)」です。
この「Little Women」は冒頭の父親からの手紙で、父親が四姉妹たちを指す言葉として登場します。
直訳すると「若い女性たち」。
四姉妹は女性というよりも少女といった年頃です。
けれども、あえて少女を表す「girl」ではなく、女性という意味の「woman(原題では複数形women)」が使われているのは、父親が4人の娘たちを1人の立派な女性として捉えているから。
今のこの時代にも通じる考え方ですが、この1800年代後半には相当先進的な考えだったのでしょう。
この 「Little Women」 という言葉からも見て取れますが、「若草物語」では四姉妹が1人の独立した女性としてものを考え、成長していく姿を描いています。
150年以上前の小説ですので道徳観や社会性に古くささを感じる点もありますが、その女性の個を描くというテーマは今の時代に読んでも色あせないメッセージ性を感じました。
正直、どうしてもっと早く読まなかったのだろうと後悔しています・・・。
1人ずつ違う成長の物語
「若草物語」 は四姉妹が各自の経験を通して、それぞれに成長していくさまを描いた成長物語でもあります。
同じ出来事を経験しても、四姉妹ではそれぞれ感じることや成長する部分が違います。
また、成長は同時に少女から女性への変化でもあります。
第一部 「若草物語」 では長女・メグに女性への変化が訪れ、大きな成長を遂げます。
そのメグの成長に対する次女・ジョーのジレンマに共感できる方(特に女性)は多いのではないでしょうか?(わたしはとても共感してしまいました!)
四姉妹の仲の良い掛け合いや日常は読んでいるだけでも微笑ましく、幸せな気持ちになれます。
不朽の名作、と呼ばれる「若草物語」の魅力にすっかりハマってしまいました。
まだ読んだことがない、という方にはぜひおすすめします。
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