有栖川有栖さんの小説「濱地健三郎の呪える事件簿」の感想です。
心霊探偵・濱地健三郎シリーズ第3弾はコロナ禍に見舞われた2020年が舞台。
コロナ禍という特殊な状況下で怪異と対峙する心霊探偵&助手の奮闘が描かれます。
- 作者:有栖川有栖
- 対象:中学生~
- 性的な描写なし
- グロテスクな描写ややあり
- 2022年9月にKADOKAWAより刊行
- 濱地健三郎シリーズ3作目
「濱地健三郎の呪える事件簿」について
「濱地健三郎の呪【まじな】える事件簿」は有栖川有栖さんのミステリー小説です。
探偵・濱地健三郎(はまじ・けんざぶろう)が主人公のミステリーシリーズ3作目となるこの「濱地健三郎の呪える事件簿」。
しかし、この濱地健三郎はただの探偵ではなく、幽霊やこの世のものではない化け物と対峙する心霊探偵です。
お化けや化け物がわんさか登場するホラー小説でもありますが、どこまでも紳士たる濱地健三郎の存在により怪異もあまり怖くありません。
まずは、そんな「濱地健三郎の呪える事件簿」のあらすじを掲載します。
探偵・濱地健三郎には鋭い推理力だけでなく、幽霊を視る能力がある。彼の事務所には、奇妙な現象に悩む依頼人のみならず、警視庁捜査一課の刑事も秘かに足を運ぶほどだ。リモート飲み会で現れた、他の人には見えない「小さな手」の正体。廃屋で手招きする「頭と手首のない霊」に隠された真実。作家志望の美男子を襲った心霊は、古い洋館のどこに巣食っていたのか。濱地と助手のコンビが、6つの驚くべき謎を解き明かしていく――。
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「濱地健三郎の呪える事件簿」には6つの短編とあとがきが収録されています。
短編1つあたりは50ページ弱と短め。
1つずつゆっくり読み進めてもよし、一気読みもOKなボリューム感となっています。
連作短編集ですが、ほとんどの謎が1つの短編でしっかり完結しているので、サクサク読み進められるのも特長です。
「濱地健三郎」シリーズの既刊
「濱地健三郎の呪える事件簿」は、探偵・濱地健三郎が登場するシリーズの3作目に当たります。
- 濱地健三郎の霊【くしび】なる事件簿
- 2020年2月に文庫化
- 濱地健三郎の幽【かくれ】たる事件簿
- 2023年1月に文庫化
シリーズものなので順番に読むことを推奨しますが、1つ1つの短編は独立しています。
そのため、この「濱地健三郎の呪える事件簿」から読み始めても大丈夫だと思います。
「濱地健三郎の呪える事件簿」感想・あらすじ
「濱地健三郎の呪える事件簿」の感想・あらすじです。
心霊探偵の世界にもコロナが蔓延
「濱地健三郎の呪える事件簿」は2020年の春から夏にかけてが舞台となっています。
わざわざ2020年を舞台にしていることからも分かるように、この「濱地健三郎の呪える事件簿」の世界にはわたしたちが生きる現実と同じように新型コロナウイルスが蔓延。
コロナ禍による行動制限やマスク生活に戸惑っていた頃が描かれています。
そんなコロナ禍に見舞われても、濱地健三郎の元へは依頼が絶えません。
むしろ、コロナ禍により以前とは違った怪異に見舞われるようになっているのがポイントとなります。
1作目となる『リモート怪異』などはその最たる例。
仕事や飲み会をリモートでせざるを得ない状況になった2020年。
そんなリモートによる怪異を描いたホラー作品の映画・ドラマなどもいくつか記憶に残っています。
まさに、そんな2020年の夏に雑誌掲載された『リモート怪異』は流行の最先端をひた走っていたと言えます。
しかし、あれから2年以上が経ち、現在ではリモート文化が廃れかけている移り変わりの早さも感じました。
幽霊は少なめ、怪異は多め?
「濱地健三郎の呪える事件簿」は幽霊案件は少なめ、怪異案件は多めでした。
※そもそも幽霊と怪異はほとんど同じ意味なのでしょうが、亡くなった人が現れたものを『幽霊』、それ以外のよく分からないものを『怪異』とします。
この↑の基準で見ると幽霊は2編、怪異は4編でした。
1つの短編に複数の案件を受けている場合もありますが、やはり怪異は多めでした。
また、都市伝説ですが口裂け女の話も出てきて面白かったです。
マスク姿で登場し、マスクを外すと口が裂けている恐ろしい顔が現れるという口裂け女。
コロナ禍でほとんどの方がマスクをするようになった今の状況で現れるのにふさわしい?怪異と言えますね。
助手がどんどん強くなる
濱地健三郎シリーズは探偵・濱地健三郎と助手・志摩ユリエのコンビが事件を解決していくミステリーです。
ミステリーとは言っても扱うものは心霊案件ばかりなので、単純な謎解きだけでなく、霊媒の力が必要となる場合もあります。
もともと霊媒の力を行使していたのは濱地健三郎だけでした。
しかし、濱地の助手を務め、怪異と触れるうちに助手の志摩ユリエも能力に開眼。
この「濱地健三郎の呪える事件簿」では、濱地健三郎と力を合わせて怪異を封じることもありました。
いつのまにか心霊探偵の立派な助手です。
シリーズを通して、ジェントルな濱地健三郎が堪能できるだけでなく、志摩ユリエの成長も楽しめるのも魅力の1つになっていました。
コロナ禍でも心霊探偵は変わらずに大忙し。
むしろ世の中が混乱し、どんよりしている世界の方が心霊探偵の出番が増えるのかもしれません。
濱地健三郎シリーズは全3作とも短編集でしたが「いつかは長編シリーズも読みたいな~」という願望があります。
人気シリーズなので、おそらく第4作にも出会えるでしょう!
ここまで「濱地健三郎の呪える事件簿」の感想でした。