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「プラナリア」山本文緒 『働かない』ことと、どこか歪んだ恋愛模様を描く短編集 直木賞受賞作

プラナリア山本文緒イメージ 女性の孤独 小説
onebowlによるPixabayからの画像

山本文緒さんの小説「プラナリア」の感想です。

『働かないこと』を巡る5つの物語が収録された短編集です。

2000年の直木賞受賞作ですが、今読んでも全く色あせない傑作でした。

「プラナリア」基本情報
  • 作者:山本文緒
  • 対象:中学生~
    • エログロ描写なし
  • 2000年10月に文藝春秋より刊行
    • 2005年9月に文庫化
  • 第124回直木賞受賞作

「プラナリア」について

「プラナリア」は山本文緒さんの小説です。

この「プラナリア」は5つの短編が収録された短編小説です。

山本文緒さんは今作で第124回直木賞を受賞されました。

まずは、そんな「プラナリア」のあらすじを掲載します。

「何もかもが面倒くさかった。生きていること自体が面倒くさかったが、自分で死ぬのも面倒くさかった。だったら、もう病院なんか行かずに、がん再発で死ねばいいんじゃないかなとも思うが、正直言ってそれが一番恐かった。矛盾している。私は矛盾している自分に疲れ果てた。」(本文より)乳ガンの手術以来、25歳の春香は、周囲に気遣われても、ひたすらかったるい自分を持て余し……〈働かないこと〉をめぐる珠玉の5短篇。絶大な支持を得る山本文緒の、直木賞受賞作!

プラナリア―Amazon.co.jp

あらすじは1つめの短編にして表題作である『プラナリア』のもの。

また、この↑のあらすじを読み、「プラナリア」が『働かないこと』をテーマにした小説であることに気づかされました。

たしかに、そうだったのかもしれません。

ジャンルとしては『恋愛』小説なのだろうと思いましたが、恋愛うんぬんではなく『生き方』を描きだす小説だったと感じます。


ちなみに、この「プラナリア」がわたしにとって初めての山本文緒作品です。

山本さんには『恋愛小説の名手』というイメージがあり、少し手が出しづらい印象でした。

しかし、今回この「プラナリア」を読み、その面白さに魅了されました。

山本文緒さんは若くして亡くなられてしまいましたが、作品は残り、読者の中で生き続けるのだろうと思うと、小説家とはすさまじい職業だと改めて感じました。

「プラナリア」感想・あらすじ

「プラナリア」の感想・あらすじです。

時代を感じさせない新しさ

「プラナリア」が刊行されたのは2000年。

わたしが「プラナリア」を読み、今この文章を書いているのは2023年です。

23年前に書かれた小説である「プラナリア」。

読む前は『20年以上前の恋愛小説が楽しめるだろうか』と不安でしたが、読んでみると共感だらけで引き込まれました。

描かれている悩みや感覚は今の時代とほとんど変わりません。

山本文緒さんの感覚が新しかったのか、23年前から時代が動いていないのか。

そのどちらにしても、古い小説とまったく感じさせない面白さに驚きました。

働けないではなく『働かない』

Amazonの「プラナリア」ページから引用したあらすじに

〈働かないこと〉をめぐる珠玉の5短篇

という文章がありました。

この文章を読み「プラナリア」が『働かないこと』をテーマに描かれた小説である、ということに気付かされた、と↑で書きました。

たしかに「プラナリア」には働いていない、いわゆる無職の人たちが登場します。

ただ、無職と言っても『働けない』ではなく『働かない』という無職です。

ある事情から働けなくなり、そのまま働かなくなった人。

表題作でもある『プラナリア』は、乳がんの治療のために休職し、仕事に復帰したものの退職してしまった女性の話です。

もう働けるのに働かない。

「やる気がなくなり、面倒くさくなって会社を辞めた」という彼女を甘いと断罪することもできます。

ただ、彼女に共感したわたしには、彼女を断罪することはできません。

ある日突然、全てを投げたしたくなる。

その感覚に襲われたことがあるわたしにとって、彼女の考えや行動は親しみやすいものでした。

『プラナリア』では、後半、彼女が再び働き始めます。

そして、ある出来事をきっかけに、これまで棚上げにしてきた未来について、大きな決断をすることにもなります。

流されているようで、確固たる意志がある。

そんな彼女が選んだ『プラナリア』の結末はけっこう好きです。


表題作『プラナリア』をはじめ、この「プラナリア」には『働かないこと』を中心に据えた恋愛模様が描かれていきます。

どれも冷静に見るとドロドロした恋愛模様であるはずなのに、ドライな文章で描かれるので、ずっと爽やかな印象でした。

わたしにとって初めて呼んだ山本文緒さんの小説ですが、とても読みやすかったです。

ここまで「プラナリア」の感想でした。

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