京極夏彦さんのミステリー短編「百鬼徒然袋―雨」の感想です。
探偵・榎木津礼二郎が主役の3作が収録された連作短編集。
榎木津礼二郎が世の中の悪を成敗する、とにかく痛快なミステリーとなっています。
- 作者:京極夏彦
- 対象:中学生~
- 性的な描写ややあり
- グロテスクな描写ややあり
- 1999年11月に講談社ノベルスより刊行
- 2005年に文庫化
- 百鬼夜行シリーズ・短編2作目
「百鬼徒然袋―雨」について
「百鬼徒然袋―雨(ひゃっきつれづれぶくろ・あめ)」は京極夏彦さんのミステリー連作短編集です。
『百鬼夜行シリーズ』の短編2作目。
200ページ超えの短編3本が収録されたボリュームたっぷりの1冊となります。
本来、200超えであれば短編ではなく、中編以上ではありますが『百鬼夜行シリーズ』の中に限れば十分、短編と言える長さ。
まずは、そんな「百鬼徒然袋―雨」のあらすじを掲載します。
救いようの無い八方塞がりの状況も、国際的(ワールド・ワイド)な無理難題も、判断不能な怪現象も、全てを完全粉砕する男。ご存知、探偵・榎木津礼二郎!「下僕」の関口、益田、今川、伊佐間を引き連れて、さらには京極堂・中禅寺秋彦さえ引きずり出して、快刀乱麻の大暴れ!不可能状況を打開する力技が炸裂する3本の中編。
講談社ノベルス「百鬼徒然袋―雨」
この「百鬼徒然袋―雨」は、シリーズでおなじみの探偵・榎木津礼二郎が主役の短編集。
榎木津は推理こそしませんが、とにかく大暴れしまくる痛快なストーリーとなります。
陰鬱でセンセーショナルな重大事件を取り扱う長編とは違い、スカッと解決するのが「百鬼徒然袋―雨」の魅力。
新たな下僕を従え、世の中の闇をどんどん暴いていきます。
ただ、榎木津礼二郎は『見える』人間ですが、解決はできません。
万事、滞りなく解決へ導くため、結局引きずり出される中禅寺秋彦にも注目です。
「百鬼徒然袋―雨」を読むタイミングとは?
「百鬼徒然袋―雨」は、長編7作目「塗仏の宴 宴の始末」の後に読むのがオススメです。
この「百鬼徒然袋―雨」の前に刊行された「百鬼夜行―陰」はサイドストーリーなので「百鬼徒然袋―雨」とは繋がっていません。
ただ、そこそこネタバレがあるので、長編7作目「塗仏の宴 宴の始末」までは読んでおいたほうがよいかと思います。
また、「百鬼徒然袋―雨」の短編は、時系列がそれぞれ
- 鳴釜 薔薇十字探偵社の憂鬱
- 長編7作目「塗仏の宴 宴の始末」の直後
- 瓶長 薔薇十字探偵社の鬱憤
- 長編8作目「陰摩羅鬼の瑕」の直後
- 山嵐 薔薇十字探偵社の憤慨
- 長編9作目「邪魅の雫」の直後
となっています。
ただ、この「百鬼徒然袋―雨」が刊行された時点で
- 「陰摩羅鬼の瑕」
- 「邪魅の雫」
の2作はまだ世に出ていませんでした。
※2025年現在は刊行されています。
文中では結末はもちろん、内容にもさらりとしか触れていないので「百鬼徒然袋―雨」を先に読んでも大丈夫です。
続編「百鬼徒然袋―風」も
榎木津礼二郎が主役の「百鬼徒然袋」には続編「百鬼徒然袋―風」もあります。
「百鬼徒然袋―風」は「―雨」の5年後に刊行。
語りは同じく本島となり、榎木津礼二郎がとにかく暴れまくっています。
「百鬼徒然袋―雨」各話感想・あらすじ
「百鬼徒然袋―雨」はシリーズ初登場の人物を主人公(語り手)に迎えた連作短編です。
3編はいずれも同じ語り手『僕(名前は結末で明かされます)』によって進んでいきます。
おそらく、シリーズに登場するメイン人物の中で、もっとも普通だったはずの人間です。
榎木津礼二郎と関わり、新たな下僕となったことで、その平凡な日常が大きく変化していきます。
ここからは短編ごとの感想・あらすじです。
鳴釜 薔薇十字探偵の憂鬱
『僕』が依頼人として薔薇十字探偵社を訪れ、榎木津礼二郎と出会います。
可愛がっていた姪が集団暴行を受けた。
犯人たちから満足のいく対応が欲しい。
しかし、主犯は政財界にのさばる大物で手が出せない。
本来、探偵が出る幕ではないものの、知り合い・大河内の助言もあり『僕』は探偵社を頼ることに。
探偵見習い・元刑事の益田と給仕の和寅、さらに途中からシリーズの探偵役・中禅寺秋彦(京極堂)も登場し、みんなで悪を成敗していきます。
ちなみに主役の探偵が登場するまでに100ページ弱かかります。
榎木津礼二郎は登場した瞬間から場を目一杯引っかき回し、読んでいて思わず笑ってしまうほどでした。
ただ榎木津は変人奇人ではあるものの、心根は清く正しいので、基本的にはヒーロー。
やりたい放題ではあるものの、最終的には正義は勝つ!を実現してくれるので、読んでいてスッキリするのが何よりの良さでした。
また、いつもは渋々引っ張り出され、今回もやはり渋々担ぎ出されている中禅寺ですが、分かりやすい悪を成敗ということでちょっとノリノリなところも面白いです。
瓶長 薔薇十字探偵の鬱憤
「鳴釜 薔薇十字探偵社の憂鬱」での事件解決のお礼を言うため薔薇十字探偵社へ訪れた『僕』。
そこで、たまたま古物商・今川雅澄と出会い、新たな事件に巻き込まれていきます。
巻き込まれるというか、勝手に首を突っ込み、自ら巻き込まれます。
好奇心は猫を殺すと言いますが、普通の人だったはずの『僕』は榎木津に感化され、どんどん事件に深入り。
最終的には事件解決の瞬間にまで立ち会うという快挙?も成し遂げます。
榎木津の幼馴染みである刑事・木場も登場し、悪党たちによる悪巧みが暴かれていきます。
亀と瓶(かめ)を同時に探すというややこしさ。
壷が所狭しと並ぶボロボロの武家屋敷など、想像しただけでもうなされそうなほど迫力満点なロケーションが魅力でした。
山嵐 薔薇十字探偵の憤慨
紙芝居作家の友人・近藤のネタ集めのため、一番話が通じそうな中野の中禅寺秋彦宅を訪れようとした『僕』。
しかし、中野駅にその中禅寺の姿を見つけ、そのまま彼の用事に同行することに。
新たな下僕『僕』と元祖・下僕である関口巽が初めて対面。
長編4作目「鉄鼠の檻」にも登場した僧侶の相談が、大きな闇へとつながっていきます。
榎木津礼二郎の下僕の1人である伊佐間も登場。
何気に大活躍する伊佐間の姿にも注目です。
また、長編6・7作目「塗仏の宴」に登場する刑事・河原崎がなぜか榎木津礼二郎の忠実な下僕となっているのが面白いです。
『百鬼夜行シリーズ』の長編と比べると軽快で、事件の規模も大きくないため気軽に読めるのが特徴。
何より、悪党がみんな成敗されるという勧善懲悪なところが気持ちよかったです。
ここまで「百鬼徒然袋―雨」の感想でした。


