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「鵼の碑」京極夏彦 冬の日光で20年前の事件と5人の現在が交錯する、百鬼夜行シリーズ・長編10作目

京極夏彦さんのミステリー小説「鵼の碑(ぬえのいしぶみ)」の感想です。

憑物落とし・中禅寺秋彦が探偵役を務める『百鬼夜行シリーズ』待望の長編最新作!

17年ぶり、10作目の長編となる「鵼の碑」の舞台は栃木・日光。

20年前に起きた事件と現在(昭和29年)に生きる5人の人生が交錯していきます。

「鵼の碑」基本情報
  • 作者:京極夏彦
  • 対象:中学生以上
    • 性的な描写なし
    • グロテスクな描写少なめ
  • 2023年9月に講談社より刊行
  • 2024年9月に文庫化
  • 『百鬼夜行シリーズ』長編10作目

「鵼の碑」の簡単なあらすじ

「鵼の碑」は京極夏彦さんのミステリー小説です。

憑物落とし兼古書肆である中禅寺秋彦が探偵役を務めている『百鬼夜行シリーズ』の長編としては、実に17年ぶりの新作となりました。

※長編9作目「邪魅の雫(じゃみのしずく)」の刊行は2006年でした。

『百鬼夜行シリーズ』を一覧でまとめた記事はこちら≫

その間に短編は何作か刊行されていたものの、長編はひさびさ!

「鵼の碑」の刊行はファンの間で話題になっていたことを覚えています。

まずは、そんな「鵼の碑」のあらすじを掲載いたします。

百鬼夜行シリーズ新作長編!

殺人の記憶を持つ娘に惑わされる作家。
消えた三つの他殺体を追う刑事。
妖光に翻弄される学僧。
失踪者を追い求める探偵。
死者の声を聞くために訪れた女。
そして見え隠れする公安の影。

発掘された古文書の鑑定に駆り出された古書肆は、
縺れ合いキメラの如き様相を示す「化け物の幽霊」を祓えるか。

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「鵼の碑」の舞台となるのは、昭和29年冬の栃木県・日光。

5人の登場人物が、それぞれ異なる目的により、日光の地を訪れます。

それぞれ別の目的のために日光へいたはずの5人。

しかし、徐々にそれぞれの行動が重なっていき、ついに同じ1つのものになっていく。

それは、まるで妖怪の「鵺」のように。

・・・ちょっと格好つけて書いてみましたが、とにかく説明が難しいため、ストーリーは割愛しました。

ただ、この「鵼の碑」はこれまでのシリーズ過去作の中では、もっとも伝えたいテーマが明確だったのでは?と感じました。

取り上げたテーマ、伝えたいテーマがはっきりと見えたため、その点には強い意志を感じています。

「鵼の碑」で気になったこと

この「鵼の碑」を読んでいて、個人的に気になったのは登場人物の呼称が男女同一で名字になったこと。

語り手を務める場合、これまでは男性は名字でしたが、女性は下の名前で書かれていました。

他の小説でもだいたいそうですよね。

けれども、この「鵼の碑」では男女関係なく、どちらも名字呼び。

そのため、最初は混乱しましたが、読み進めていくうちに公平でよいのでは?とも思いました。

「鵼の碑」とあわせて読みたい!同シリーズ作品について

「鵼の碑」には前日譚となる短篇が2編あります。

それは同じ『百鬼夜行シリーズ』の短編集のうち「定本 百鬼夜行―陽」に収録された

  • 6編目「墓の火」
  • 9編目「蛇帯」

という2つの短編。

どちらも「鵼の碑」が始まる少し前が描かれ、同作に登場する人物(6編目「墓の火」は寒川秀巳、9編目「蛇帯」は桜田登和子)の内心が克明に描かれています。

「定本 百鬼夜行―陽」は「鵼の碑」のネタバレにならないため、先に読んでも大丈夫です。

また、先に読んでおかないとダメ!ということもないので、後からゆっくり読んでも問題ありません。

ただし先んじて「定本 百鬼夜行―陽」を読んでおいた方が「鵼の碑」に対する理解が深まるのでオススメではあります。

「定本 百鬼夜行―陽」の感想はこちら≫

「鵼の碑」と同時期に発生している事件について

『百鬼夜行シリーズ』では、この「鵼の碑」と同時期に全く異なる事件も発生しています。

それは「今昔百鬼拾遺 鬼」にて描かれる連続辻斬り事件。

「今昔百鬼拾遺 鬼」は、中禅寺秋彦の妹で記者の中禅寺敦子と、長編5作目「絡新婦の理」に登場した女学生・呉美由紀の2人が巻き込まれ、事件解決に導いていくストーリーです。

「鵼の碑」の作中でも事件のことが少し触れられていました。

また「今昔百鬼拾遺 鬼」でも、今回の「鵼の碑」の件で兄がいないと言うことが触れられています。

この連続辻斬り事件に遭遇していたため、今回、敦子の登場はありません。

「今昔百鬼拾遺 鬼」の感想はこちら≫

「鵼の碑」各パートあらすじ

「鵼の碑」には語り手(一人称の視点)が5人登場します。

パートはそれぞれ、妖怪・鵼(ぬえ)の身体を構成する

という5体の動物、さらに『鵼』という名前で分けられていました。

その5パートそれぞれの解説を行っていきます。

蛇:久住加壽夫

『蛇』は劇団の脚本家・久住加壽夫(くずみかずお)が語り手。

彼は新しい脚本のためホテルに缶詰状態になっていたものの、創作に行き詰まっていました。

そんな中、久住はホテルのメイド・桜田登和子から「自分は過去に父親を殺した」との告白を受け、大いに困惑します。

その後、話をした登和子は欠勤を続け会えずじまいに。

彼女の混乱した様子から最悪の事態を想像してしまった久住。

事の成り行きをを、たまたま榎木津に同行しホテルに滞在していた小説家・関口巽に相談したことで、大きな事件に巻き込まれることになります。

虎:御厨冨美

『虎』は薬剤師・御厨冨美(みくりやふみ)が語り手。

日光へ調査に行ったまま帰ってこない勤め先である薬局の主人・寒川秀巳の行方を捜してほしい。

そう薔薇十字探偵社へ依頼に行くところから始まります。

御厨にとって寒川は、勤め先の主人というだけでなく、婚約者でもありました。

寒川の身を案じ、探偵社へ相談に行ったものの、目当ての榎木津礼次郎は日光へ行っていて不在。

代わりに探偵助手である益田龍一が捜査を担当することに。

その後、御厨・益田の2人は寒川が向かった日光へ赴き、寒川の足取りを辿ることになります。

貍:木場修太郎

『貍(たぬき)』はシリーズでもおなじみの刑事・木場修太郎が語り手。

しばらくコンビを組んでいた老刑事・長門が退職し、後輩の青木、伊庭(長編8作目に登場)の4人で送別会を行っていたところ、長門から昔、解決できなかった事件について話を聞いてしまいます。

20年前の昭和9年、公園で見つかった3人の遺体。

移送しようとした矢先、忽然と遺体が消えてしまったとのこと。

そして、そのまま捜査も打ち切りになった、という何とも不可解な事件です。

基本的に事件と聞くと首を突っ込んでしまう木場。

その消えた3遺体の行方や謎を解く手がかりは日光にあると知った木場は、休暇をもらい、日光へ。

相変わらずの圧倒的な行動力により、日光で独自の捜査を進めていきます。

無鉄砲なのは相も変わらずですが、成り行きで人助けをしたりするのも相変わらずでした。

猨:築山

『猨(さる)』は学僧・築山公宣(つきやまこうせん)が語り手。

築山は古書肆・中禅寺秋彦と大学助手・仁礼将雄と3人で謎の書物の調査をしていました。

書物とは、輪王寺の敷地内にて発見された、長持に収められていたもの。

古い書物で量も多かったため、頼りになる知り合いとして中禅寺と仁礼が招聘されたのでした。

古書限定でフットワークが羽根のように軽い中禅寺です。

この築山のパートは、中禅寺秋彦がいるので、とにかく難しい話が多いです。

事件とは関係がないと思っていた築山たちでしたが、少しずつ事件の方が築山に近づいてきます。

鵺:緑川

『鵺(ぬえ)』は医師・緑川佳乃(みどりかわかの)が語り手。

日光で診療所を開いていた大叔父が亡くなり、残された診療所の片付けに来た彼女。

その診療所内に残されていたカルテには、ただの診療所ではありえない、恐ろしい記録が残されていました。

また、診療所で片付けをしている彼女には、他のパートの登場人物たちが次々と接触。

何も関係がなかったはずの緑川も事件に巻き込まれていきます。

小柄で幼い顔立ちをしているらしい緑川ですが、その話しぶりや思考回路は冷静で明晰。

この「鵼の碑」では登場がない中禅寺敦子の代役のような立ち位置でした。

さらに、緑川は学生時代に中禅寺や関口、榎木津とも交流があった人物です。

過去はほとんど明かされず、しかしながら含みがある感じだったので、彼女はこの先のシリーズにも登場してきそうな雰囲気でした。

緑川は最終章である『鵼(ぬえ)』でも語りを務めています。


合成獣(きめら)のような妖怪・鵼の身体を構成する5つの動物。

その動物それぞれに割り振られた登場人物たちのパート。

5つの物語が1つにまとまった果てに、この「鵼の碑」の結末が訪れます。

「鵼の碑」は、確実に『百鬼夜行シリーズ』でしたが、これまでの過去作とは明らかに違った作品でした。

文庫の帯には次作の情報も載っていたので、また続きが楽しみにしてすごそうと思います。

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