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「塗仏の宴 宴の始末」京極夏彦 前後編の後編、百鬼夜行シリーズ7作目

京極夏彦さんのミステリー小説「塗仏の宴 宴の始末」の感想です。

前作「宴の支度」で散りばめられた謎たち、過去の因縁に終止符が打たれるシリーズ7作目。

中禅寺秋彦の過去の因縁と、消えた一つの村の結末とは?

「塗仏の宴 宴の始末」基本情報
  • 作者:京極夏彦
  • 対象:中学生以上
    • 性的な描写ややあり
    • グロテスクな描写あり
  • 1998年9月に講談社ノベルズより刊行
    • 2003年10月に文庫化

ここから先は前作「塗仏の宴 宴の支度」のネタバレに触れる部分がありますので注意してください。

「塗仏の宴 宴の始末」について

「塗仏の宴 宴の始末」は京極夏彦さんのミステリー小説です。

憑物落とし(探偵)・中禅寺秋彦が登場する『百鬼夜行シリーズ』の7作目。

「塗仏の宴」の後編となり、「宴の支度」の解決編が描かれます。

衝撃のラストで幕を閉じた前作の答えあわせです

まずは、そんな「塗仏の宴 宴の始末」のあらすじを掲載します。

後の始末をお願いします――。京極堂、覚悟を決める。

「愉しかったでしょう。こんなに長い間、楽しませてあげたんですからねえ」。その男はそう言った。蓮台寺温泉裸女殺害犯の嫌疑で逮捕された関口巽と、伊豆韮山の山深く分け入らんとする宗教集団。接点は果たしてあるのか? ようやく乗り出した京極堂が、怒りと哀しみをもって開示する「宴(ゲーム)」の驚愕の真相。

塗仏の宴 宴の始末―Amazon.co.jp

前作「宴の支度」は、5作目に登場した織作茜が殺害されるというショッキングなシーンで幕を閉じました。

その犯人として関口巽が逮捕され、精神は崩壊状態へ。

また、前作の段階は種が蒔かれ、何らかの計画が育っていることだけが分かる状態でした。

しかし、その種が蒔かれた理由や意味、そもそも誰が何の目的でその計画を始めたのかなどは全然明かされず後半「宴の始末」へ。

本当に始末がつけられるのか?

あまりのも謎の範囲が広くなり、頭が混乱しつつも、それでもしっかり面白いのが良かったです。

【ネタバレなし】「塗仏の宴 宴の始末」感想・あらすじ

「塗仏の宴 宴の始末」のネタバレなし感想・あらすじです。

バラバラの時系列

「塗仏の宴」は『百鬼夜行シリーズ』にしては珍しく時系列がバラバラ。

前作「宴の支度」では、冒頭にある関口巽視点の『ぬっぺっぼう』が6月10日となり時系列的には一番最後となります。

同じく「宴の支度」の最後にある織作茜視点の『おとろし』のラストでようやく『ぬっぺっぼう』と時間が重なります。

そして「宴の始末」ではちょうど『ぬっぺっぼう』6月10日の直前・直後あたりの話が続き、そこから6月20日までの10日間ほどが描かれていきます。

他のシリーズと時期が被り、またストーリー的にも関わっているので、とても準備期間が長いお話ですが、実際に大きな動き(関口の逮捕)があってから集結までは10日しかないのがポイントです。

前後編合わせて2000ページ超えと長いので、何年も経っている感覚になっていました。

メモを取りながら読み進めることをオススメします。

不穏すぎる木場の動向

「塗仏の宴 宴の始末」では、シリーズの常連である刑事・木場修太郎の動向にいちいち不穏さが漂っています。

<○○が最後に木場を見たのは~>

みたいな文章がところどころに挟まれるので、木場を好ましく思う者としては心臓に悪い展開でした。

死亡フラグを立てすぎているんですよね。

ただ、ここまで分かりやすく誘導されると、逆に大丈夫な感じもしていました。

さて実際はどうなのか?

そもそも、今回は木場修太郎以外にも危険な目に遭う常連キャラクターが多く、シリーズに愛着がある身としては肝が冷える思いでした。

事件関係者のメモを取るのがオススメ

「塗仏の宴」は登場人物が多く、関係性が複雑なので簡単なメモを取りながら読み進めるのがオススメです。

メモを取らないと、何が何だか分からなくなってしまいます。

登場人物名―所属団体名、という風にしておけば後から見返すときに分かりやすいでしょう。


これまでのシリーズを総括するようなストーリーとなり、ここまで読んできた身としては感無量です。

※シリーズはまだまだ続いています。

ここまで「塗仏の宴 宴の始末」の感想でした。

ここからは「塗仏の宴 宴の始末」のネタバレあり感想です。

【ネタバレあり】「塗仏の宴 宴の始末」の感想

ネタバレありで「塗仏の宴 宴の始末」の感想を書いていきます。

未読の方はご注意ください。

感想➀ 佐伯家について

「塗仏の宴」で登場した怪しい集団たち。

その集団のトップたちは全員、佐伯家の家族だったというのが「塗仏の宴 宴の始末」の結末でした。

映像でもイラストでもできない、小説でしかできない展開です。

佐伯家の人たちは全員が、15年前に他の家族や村人たちを惨殺し、逃亡したと思っていました。

そして、殺人の時効15年を迎える前に、その証拠が残る佐伯家に誰が一番最初に辿り着くか。

旧日本軍の生き残りたちによるゲームの駒にされていたという、なんとも不憫な結末でした。

一番最初に佐伯家に辿り着いた者にだけ全ての真実を伝える、というルールが課されていたため、中禅寺は全員が同時に佐伯家へ到着させるように指示。

そこで全てをつまびらかにし、そして黒幕である堂島大佐との対峙を経て「塗仏の宴 宴の始末」は終了します。

決着はつきませんでした。

最終的に一番悪い風の立ち位置にいた尾国誠一だけが亡くなるという、なんとも後味が悪い結末。

しかも亡くなり方が切ない。

尾国の15年間の苦労が全て水の泡になるような、壮絶な終わり方でした。

尾国は絶対的に悪であることはもちろんですが、何のためにここまでやってきたのか、と読者なのに徒労感を感じてしまいました。

佐伯家一覧表

読後に混乱を避けるため、佐伯家の一覧表をつくってみました。

本名布由との続柄昭和28年の通名
布由華仙姑
亥之助南雲正陽
(経営コンサルタント)
癸之助韓大人
(韓流気道会)
乙松叔父(癸之助の弟)東野鉄男
(徐福研究会)
甲兵衛祖父曹方士
(成仙道)
岩田壬兵衛大叔父(甲兵衛の弟)磐田純陽
(みちのえ修身会)
玄蔵壬兵衛の息子張果老・通玄先生
(条山房・長寿延命講)
彩賀笙異父弟(初音と甚八の息子)藍童子
初音母親・故人
甚八はとこ(玄蔵の息子)・故人

まとめていても頭が混乱します。

間違っていた場合はご容赦ください。

感想② 関口巽について

「塗仏の宴 宴の始末」では関口巽の罪が晴れます。

しかし、罪が晴れた後、収監され拷問を受けている関口の解放は描かれません。

いや関口どうなっちゃったの?

逮捕されて早々に精神が崩壊してしまった関口が「塗仏の宴 宴の始末」の終結時点でどのような状態になっているのかは描かれず、次巻に持ち越しとなります。

無事、解放されたところで、関口の精神が無事であるわけはないですよね。

シリーズが始まってから次々と猟奇的な事件に巻き込まれ、ついに容疑者として捕まるという、とにかく不運の星の下に生きている関口の行方とは?

すぐに続きを読んで確かめてみようとおもいます。

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