モーリーン・ジョンソンさんの小説「寄宿学校の天才探偵2 エリンガム最後のメッセージ」の感想です。
学園で1人の生徒が亡くなり、その死に関わったとされる生徒が行方不明に。
主人公スティヴィは現代の事件、そして80年前に起きた未解決事件の解決に向け、本格的に動き始めます。
探偵が探偵として成長を遂げる、三部作の2作目です。
- 作者:モーリーン・ジョンソン(Maureen Johnson)
- 訳者:谷泰子
- 対象:中学生~
- やや性的な描写あり
- グロテスクな描写ややあり
- 2019年にアメリカで刊行
- 2020年11月に日本で文庫化(創元推理文庫)
- 三部作の2作目
このページには前作「寄宿学校の天才探偵」のネタバレがあります。
前作を未読の方はご注意ください。
「寄宿学校の天才探偵2」について
「寄宿学校の天才探偵2」はアメリカの小説家モーリーン・ジョンソンさんのミステリー小説です。
三部作の2作目となる今作。
前作「寄宿学校の天才探偵」で提示された謎たちの一部が解明される巻でもあります。
まずは「寄宿学校の天才探偵2」のあらすじを掲載します。
本当は絶対にいない人間を探すとしたら、どこを探す
失踪した富豪が残した謎のメッセージを
天才少女探偵は解き明かせるのか
NYタイムズ・ベストセラー作家の本格ミステリ相次ぐ学校での事件に、スティヴィは家に連れ戻されてしまう。せっかく念願だった過去の事件の再捜査も進んできたところなのに。そこに上院議員のエドワード・キングが息子のデイヴィッドを密かに監視してくれるなら、学校に戻れるように両親を説得すると言ってきた。他に手はなく、引き受けたスティヴィだったが、学校ではさらなる事件が……。天才を集めた学校で起きる事件に挑む少女探偵スティヴィの活躍を描く、シリーズ第二弾。
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事件を解決した矢先、娘に普通を求める両親の手によって家へ連れ戻されてしまう主人公・スティヴィ。
探偵としては非凡な才能を見せる彼女も、普段は親の庇護下にある16才の少女でした。
学園を去り、不本意な日々を送るスティヴィでしたが、そんな彼女の元にある意味で因縁の相手が訪れるところから「寄宿学校の天才探偵2」は幕を開けます。
原題『The Vanishing stair』について
「寄宿学校の天才探偵2」がアメリカで刊行された際の原題は『The Vanishing stair』。
このうち『vanishing』は消失、『stair』は階段・段という意味です。
つまり、直訳すると原題は『消えた階段(段)』となります。
ただ、この「寄宿学校の天才探偵2」において『The Vanishing stair』は物語の核心に触れる大ヒントとなっていたりします。
あまり触れすぎると分かってしまうので控えますが、小説中で階段が『staircase』と呼ばれ、段が『stair』と表記されていることに着目すると答えが自ずと見えてきます。
しかしながら、わたしは英語に疎いので、結局のところ全く分かりませんでした・・・。
【1のネタバレあり】1作目までの「寄宿学校の天才探偵」あらすじ
1作目「寄宿学校の天才探偵」のあらすじを過去・現代それぞれに分けて簡単におさらいします。
過去(1936年)
アメリカ1の大富豪とも言われるアルバート・エリンガムは天才を集めた学校としてエリンガム・アカデミーを創設します。
そのエリンガム・アカデミーの一期生である少女・ドッティが、1936年の4月13日、ある人物に追い詰められ殺害されるところから物語はスタート。
同じ日に、エリンガムの妻・アイリスと3才の娘・アリスが身代金目的で誘拐されてしまいます。
妻と娘を取り戻すため、友人のFBI捜査官ジョージ・マーシュらと力を合わせ、身代金を用意するなどあらゆる手を講じたエリンガム。
しかし、その努力も虚しく、妻のアイリスは遺体となって発見されます。
その後犯人は捕まるものの、娘・アリスの居場所は分からないまま。
犯人は裁判中に射殺され、さらに犯行などに不審な点も多く事件は迷宮入りに。
妻子誘拐事件から2年半後、アルバート・エリンガムは乗船していたボートでの爆破事故で命を落とします。
真犯人やアリスの居場所は分からないまま、学園だけは残り、現代へ。
現代
天才しか入れない、と噂される全寮制の学園・エリンガム・アカデミーへの入学を許された少女・スティヴィが主人公。
学園のうち、ミネルヴァ寮で生活することになったスティヴィは、同寮のジャネルやネイトといった同級生たちと親しくなります。
特に同寮の上級生デヴィッドとは恋仲にも発展。
充実した学園生活を送っていたスティヴィでしたが、ある日、同寮の上級生であるハイエスが遺体で発見されたことで平穏な日々に亀裂が入っていきます。
事故と目されていたハイエスの死。
しかし、スティヴィはその死に他殺の可能性があることに気づきます。
他殺だった場合、ハイエスは誰に殺されたのか。
ハイエスの周囲を探っていくうちに、スティヴィは動機や証拠から同寮の上級生・エリーが関わっていることに気付きます。
スティヴィは教師たちの力を借りエリーの身柄を確保しました。
けれども、少し目を離した隙にエリーは姿を消してしまいます。
エリーはどこへ消えてしまったのか?
ショックを受けつつもエリーの部屋を捜索していたスティヴィは、その部屋の中でエリンガム事件において重大な証拠となるアイテムを発見。
そして、唐突にエリンガム・アカデミーのミネルヴァ寮にある人物が訪れたところで、1作目「寄宿学校の天才探偵」は終わってしまいます。
【ネタバレなし】「寄宿学校の天才探偵2」感想・あらすじ
「寄宿学校の天才探偵2」の感想・あらすじです。
副題『エリンガム最後のメッセージ』
「寄宿学校の天才探偵2」の副題は『エリンガム最後のメッセージ』。
この2作目では、1作目から登場していた『エリンガム最後のメッセージ』である、なぞなぞの答えが明かされます。
それと同時に、アルバート・エリンガムを襲った誘拐事件の真犯人も判明。
2作目では<ある1点>を除きエリンガム誘拐事件が解決してしまいます。
※<ある1点>については後述します。
この真相は、あっさりというか、そこまで意外ではありませんでした。
むしろ、やはり・・・、と思わせる結末です。
けれども、この誘拐事件に端を発し、現代の事件にどうつながっているのかはまだ分かりません。
スゴく気になります。
探偵としての成長
「寄宿学校の天才探偵2」では、前作ではまだたどたどしさを感じた主人公・スティヴィの探偵ぶりに成長が見られます。
デヴィッドや警備員・ラリー、そして新たに出会ったハンターを代わる代わる助手役として、過去と現在の事件の真相を追究していきます。
16歳という年齢と内気な性格が相まって、なかなか本来の力を出せなかったスティヴィ。
いくつかの悲しい出来事に見舞われながらも、探偵として必死に奮闘する彼女の姿は思わず応援したくなります。
アメリカの学園生活
「寄宿学校の天才探偵2」は、事件やその解決などミステリー要素も読みどころですが、学園生活の描写が魅力的な点も同作の特長だと思います。
アメリカの寄宿学校のスクールライフなんて、日本から出たことがない日本人のわたしには無縁の世界。
フィクションでしか触れられない世界だからこそドキドキします。
「寄宿学校の天才探偵2」では本場らしい華やかなハロウィンパーティーの様子が描かれるのも良かったです。
ただ、スティヴィにとっては、ショッキングすぎるハロウィンになってしまいましたが・・・。
変わらない恋愛の形
およそ80年前と現代のストーリーが交互に現れる「寄宿学校の天才探偵2」。
それぞれの時代で、同じ10代の少年少女による恋愛模様が繰り広げられるのも本作の特長です。
しかし、おそらく80年前の恋愛は悲劇に終わっています。
現代の恋愛、スティヴィとデヴィッドの関係は「寄宿学校の天才探偵2」では宙ぶらりんのまま終わってしまいます。
奥手で恋愛に不慣れなスティヴィと、問題を抱え込みすぎているデヴィッド。
この2人の関係が最後となる3作目で解決できるのか、も楽しみなポイントです。
ここまで「寄宿学校の天才探偵2」の感想・あらすじでした。
↓には「寄宿学校の天才探偵2」までで解決したこと&解決しなかった謎をまとめています。
ぜひ本作を読み終わった後にチェックして見てください。
3作目「寄宿学校の天才探偵3 事件を解き明かすときがきた」の感想
【ネタバレあり】「寄宿学校の天才探偵2」で解決した&未解決の謎
まずは前作「寄宿学校の天才探偵」で解決しなかった謎を掲載します。
- 80年前のエリンガム母子誘拐・殺人事件の真相
- アルバート・エリンガムの死の真相
- アルバート・エリンガムが残した暗号の答え
- ハイネスへの殺人容疑がかけられているエリーの行方
- エリーがハイネスを殺害?した方法
- エリーがハイネスを殺害した動機の詳細
- デヴィッドの正体
- スティヴィの部屋にライトでメッセージを残した人物とその目的
このうち、2作目「寄宿学校の天才探偵2」で解決されたのは以下の謎。
- 80年前のエリンガム母子誘拐・殺人事件の真相
- 真犯人は友人のFBI捜査官ジョージ・マーシュ。金に困った末の犯行だった。
- アルバート・エリンガムの死の真相
- ジョージ・マーシュを追い詰めた末、道連れにして自殺。
- アルバート・エリンガムが残した暗号の答え
- 『階段(staircase)』から『段(stair)』を取り除くと「case(事件)」が残る。
「case(事件)」の上に乗っている人間、犯罪そのものに関わっていないけれど事件に関わる人間、つまり捜査官が犯人だった、ということを示していた。
- 『階段(staircase)』から『段(stair)』を取り除くと「case(事件)」が残る。
- ハイネスへの殺人容疑がかけられているエリーの行方
- ミネルヴァ寮の階段下に隠されていた地下室で遺体となって発見される。
- デヴィッドの正体
- 両親が支援する上院議員エドワード・キングの息子。
アルバート・エリンガム宛に届いた脅迫状は、エリンガム・アカデミーの生徒であったフランシス&エドワードのイタズラだったことも判明。
脅迫状と誘拐事件は無関係だったことが解明されました。
また、エリーも亡くなっているので、ハイエスを殺害した犯人も別にいる可能性が高まっています。
そして、解決していない謎と新たな謎は↓になります。
- スティヴィの部屋にライトでメッセージを残した人物とその目的
- ハイエスの死因
- エリーの死因
- ドクター・フェントンの死因
- アリス・エリンガムの行方
- デヴィッドの行方
1936年の事件は全容が見えてきたものの、現代の事件は謎が深まるばかり。
三部作なので、次巻3作目で完結予定です。