澤村伊智さんの小説「ぼぎわんが、来る」の感想です。
珍しいタイトルの本はそれだけで目を惹きますよね。
タイトルに聞いたことのないワードが入っていて思わず本を手に取ってしまった、なんて経験ありませんか?
「ぼぎわんが、来る」は、わたしにとってまさに「思わず」な状況でした。
そして、手に取るつもりがなかった本が面白いとものすごく得をした気分になりますよね。
そんなわたしと運命の出会いを果たした「ぼぎわんが、来る」をご紹介します。
- 中学生~
- 暴力描写あり
- けっこうグロテスク
- 精神的にもキツめ
- 性的な描写はなし
- ホラー小説→ホラーが苦手な人は注意
「ぼぎわんが、来る」の簡単なあらすじ
「ぼぎわんが、来る」は、ぼぎわんが来るお話です。
ふざけているようですが、本当にぼぎわんが来る話としか表しようがありません。
また、この小説はガッチガチのホラーなので、怖い話が苦手な方にはあまりおすすめしません。
とりあえず、まずは小説のあらすじを掲載しておきます。
幸せな新婚生活を営んでいた田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。取り次いだ後輩の伝言に戦慄する。それは生誕を目前にした娘・知紗の名前であった。正体不明の噛み傷を負った後輩は、入院先で憔悴してゆく。その後も秀樹の周囲に不審な電話やメールが届く。一連の怪異は、亡き祖父が恐れていた“ぼぎわん”という化け物の仕業なのだろうか? 愛する家族を守るため秀樹は伝手をたどり、比嘉真琴という女性霊媒師に出会う。真琴は田原家に通いはじめるが、迫り来る存在が極めて凶暴なものだと知る。はたして“ぼぎわん”の魔の手から、逃れることはできるのか……。怪談・都市伝説・民俗学――さまざまな要素を孕んだノンストップ・ホラー!
最終選考委員のみならず、予備選考委員もふくむすべての選考員が賞賛した第22回日本ホラー小説大賞〈大賞〉受賞作。
ぼぎわんが、来る-amazon.co.jp
あらすじを掲載しましたが、なかなか詳しく書かれていました。
また、わたし個人のあらすじですが、
- ぼぎわんとは何なのか
- ぼぎわんはなぜ来るのか
- ぼぎわんが来るとどうなるのか
という疑問はすべてネタバレになるのでお伝えできません。
ただし、あらすじにある通りぼぎわんは化け物です。
どんな化け物なのかは読んでからのお楽しみ、と言うことで・・・。
日本ホラー小説大賞・大賞受賞作
「ぼぎわんが、来る」は「第22回日本ホラー小説大賞」の大賞受賞作です。
同賞は過去に貴志祐介さんが「黒い家」(第4回)で受賞しています。
「黒い家」は人間怖い・サイコパス系のホラーでしたが、「ぼぎわんが、来る」は化け物系のホラー
おそらく系統的には貞子が出てくる「リング」などと同じだと思われます。
人外の化け物に襲われる恐怖を味わえる小説です。
わたしは、これまで化け物系ホラーをしっかり読んだことはありませんでしたが「ぼぎわんが、来る」は普通に怖かったです。
マンガのようにビジュアルがないからこその怖さがあります。
ホラー好きには必見です!(ホラー苦手な方は控えた方が良さそうです!)
豪華出演者で実写映画化
「ぼぎわんが、来る」は、2018年に「来る」というタイトルで実写映画化されています。
監督は中島哲也さん。「嫌われ松子の一生」や「告白」、「渇き。」などを手がけた方です。
出演者は、主役が岡田准一さん、共演に妻夫木聡さん、黒木華さん、小松菜奈さん、松たか子さんなど。
豪華キャストですね・・・。大河ドラマの主演が2人もいます。
ちなみに、わたしは上記3作品を偶然にもすべて観ています。「来る」は観ていません。
しかし、これまでの作風と「ぼぎわんが、来る」は結構合っていると思います。想像ですが、スゴそうですね・・・。
ただ、わたしは「小説を読んで映画は止めておこうかな・・・」といった感じです。
あまりジャパニーズホラーが得意ではないので、精神が元気なときに機会があれば挑戦してみたい!といった後ろ向きな思いですね。
おすすめポイント
「ぼぎわんが、来る」のおすすめポイントをご紹介します。
化け物も人間も怖い
上の方で「ぼぎわんが、来る」は化け物系のホラーと書きました。
たしかに、ぼぎわん=化け物なのですが、登場する人間たちもなかなかに怖いです。
人間のイヤーな感じを味わえるイヤミス(後味の悪いミステリー)的要素もあるので、変化球イヤミスとしても楽しめるかもしれません。
特に1章の語り手である田原秀樹はなかなかのインパクト!
少なくとも、前情報をほとんど入れずに読んだわたしには衝撃的な展開でした。
ただ、ちゃんと好感が持てるキャラクターもいるのでご安心ください。
舞台が日本だと怖さが倍増
お恥ずかしながら、これまでわたしは「ぼぎわんが、来る」のような日本の化け物系ホラーをあまり読んでいませんでした。
(人間が怖い系のホラーは大好きです)
外国のホラー、特にスティーブン・キングは好きでよく読みます。
しかし、日本のホラーには苦手意識がありました。
その理由は、本当に自分の身の回りで起きそうだから。
外国のホラーは舞台が日本ではないので、ハラハラしてもどこか他人事で読めます。
けれども、日本のホラーはガッツリ舞台が自分の生活圏内。
イヤでも自分に置き換えて想像してしまうので苦手です。小学生の頃、子ども向けの怪談を読んで眠れなくなった夜を思い出します・・・。
「ぼぎわんが、来る」は舞台が京都や九州など西日本だったので、(関東在住のわたしには)まだ大丈夫でした。
ただ、日本全国に共通する風土的な怖さはあるので、しばらく山が怖くなりそうではあります。
そんな舞台が身近というありそうな怖さを感じるのも、ジャパニーズホラーの醍醐味なのだろうと思いました。
花緒の感想
「ぼぎわんが、来る」は想像を裏切る展開と、想像以上の怖さを併せ持ったホラー小説でした。
怖さにもいろいろありますが、「ぼぎわんが、来る」では何通りもの怖さを味わうことができます。
これがデビュー作とは、澤村伊智さんはスゴいと素直に思います。
ホラーとしてだけでなく、ミステリーとしても読後の満足度が高い1冊でした。
「今日はホラーの気分だ」という時にオススメです。