「幸福な食卓」瀬尾まいこ 10代少女の視点で描かれる家族、初恋、誰かの支え

幸福な食卓 イメージ 小説

新型コロナの影響で外食がしにくい状況下にある昨今。

家族で食卓を囲むことが増えたというご家庭も多いかと思います。

家族の形はそれぞれですが、そんな中でも小説「幸福な食卓」の家族はだいぶ変わっています。

「幸福な食卓」は、家にいる時間が増えた今こそ、家族を見つめ直すきっけけとしてオススメしたい小説です。

「幸福な食卓」基本情報
  • 作者:瀬尾まいこ
  • 中学生~
    • エログロ描写はなし
  • 中学生・高校生向け
    • 主人公は中学生~高校生の少女
  • 2004年11月・講談社より刊行
  • 同作で第26回吉川英治文学新人賞を受賞
  • 2006年にコミカライズ化
  • 2007年に実写映画化

瀬尾まいこさんの小説はこちらもオススメ↓

「幸福な食卓」あらすじ

「幸福な食卓」は瀬尾まいこさんの4作目となる小説です。

少し変わった家族とともに生きる10代少女の成長ストーリーとなっています。

10代少女が主人公のジュブナイル小説でもあります。

ジュブナイル小説

ティーンエイジャーを対象とした小説の総称。
この場合のティーンエイジャーは主に12~19歳の少年少女を指すとのこと。

しかし、家族を中心とした人間ドラマや甘酸っぱい恋愛模様も描かれており、全年代が読んでも楽しめる小説です。

そんな「幸福な食卓」のあらすじを掲載します。

切なさの分だけ家族はたしかにつながっていく。

佐和子の家族はちょっとヘン。父を辞めると宣言した父、家出中なのに料理を届けに来る母、元天才児の兄。そして佐和子には、心の中で次第にその存在が大きくなるボーイフレンド大浦君がいて……。それぞれ切なさを抱えながら、つながり合い再生していく家族の姿を温かく描く。

吉川英治文学新人賞受賞作。

幸福な食卓―Amazon.co.jp

主人公は中原佐和子、小説が始まった時点で中学2年生です。

小説では、佐和子が中学2年生の春から高校2年生の冬まで、およそ5年間が描かれます。

2007年に実写映画化

「幸福な食卓」は2006年にコミックが出版されています。

そして、2007年1月には実写映画が公開されています。

主演は当時16歳の北乃きいさん。

オーディションで抜擢され、映画「幸福な食卓」で初主演を務めました。

北乃きいさんは同作で、

  • 第31回日本アカデミー賞新人俳優賞
  • 第29回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞

を受賞し、女優として大きく飛躍しています。

花緒の感想

「幸福な食卓」は、ある意味タイトル詐欺と言える小説です。

正確に言えば「幸福だった食卓」だと思います。

主人公・佐和子の家族は、物語がスタートした時点でバラバラでした。

父親は朝食の席で突然「父親をやめる」と宣言し、中学校教師の職も辞めてしまいます。

6歳年上の兄は、神童と呼ばれるほどの頭脳を持ちながらも大学へ行かず、農業に精を出す日々を過ごしています。

そして母親は1年前に家出をし、一人暮らしをしながら近所でアパート住まいをしています。

しかし、佐和子は定期的に母親を訪ね、母親も家族が住む家を時折訪れては家事をして帰って行きます。

どうして佐和子の家族がこんな形になったのか。

それは、こんな形にならなければ佐和子の家族は本当に壊れてしまっていたからです。

<ネタバレあり>家族がバラバラになった理由

佐和子の家族がバラバラになる原因となったのは、佐和子が小学生のときに父親が起こした自殺未遂がきっかけです。

発見が早かったため父親は一命を取り留め、すぐに家庭に帰ってきました。

しかし、自殺未遂の影響から、家族は少しずつおかしくなっていきます。

この影響は目に言える形で現われない、というのが切なかったです。

佐和子は普通に成長し、兄の直も荒れたりしません。

そんな家庭で最初に壊れてしまったのが母親でした。

父親の自殺未遂を気に病み、思い詰めた挙げ句、一緒に暮らせないと家を出てしまいます。

そのこと自体も悲しい出来事ですが、気持ちが分かるからこそ母親の家出を誰も引き留められなかったというのが切なさを増しています。

小説では、この家族が壊れる寸前で踏みとどまった時点でスタートします。

家族と学校と、そして初恋と

家族の形を描いた「幸福な食卓」ですが、途中から佐和子の初恋が話の中心になっていきます。

佐和子の初恋相手は、中学3年生になり通い始めた塾で出会う大浦君。

素直な性格で思ったことを何でもズバズバ言う、少し無神経な少年です。

そして、兄の直の恋人である小林ヨシコも物語のキーパーソンとして物語を動かします。

小説の冒頭に、親の都合で中途半端な時期に転校してきて、また学期の途中で転校してしまう少年が登場します。

その少年が佐和子に「子供は親の行くところに付いていくしかない」と話す場面がありました。

そして、少年は親の都合で遠くに引っ越してしまいます。

家族は子供を育てる場所でもあるけど、苦しめる場所でもある。

このシーンはそんな家庭の苦しみを暗示しているように感じました。

佐和子の家庭も親の都合に振り回される子供であることは同じです。

気を遣っていることが裏目に出たり、我慢していたからこそ耐えきれなくなったり。

その状況が限界に達したので、母親は家庭の枠組みから飛び出してしまいます。

愛があるからこそ苦しい、と言うのが辛いですよね。

その一方、他人は遠慮なく他人を傷つけます。

自分に対して痛みが返ってこない分、容赦はありません。

けれども、他人を救ってくれる他人も確かに存在します。

佐和子にとって、その他人は大浦君や小林ヨシコでした。

そんな他人に支えられながら、バラバラの家族の中で成長する佐和子。

佐和子には最後に大きな試練が訪れます。

その試練を乗り越えた先に見えた景色とは?

悲しみの中でも前向きに生きようと思える、「幸福な食卓」はそんな小説です。

タイトルとURLをコピーしました