知念実希人さんの小説「仮面病棟」の感想です。
銃を持ったピエロの立てこもり犯による病院立てこもり事件。
人質は医師・看護師と負傷した女子大生、そして入院中で寝たきりの患者たち。
人質の医師が立てこもり犯との攻防の末に病院内の知られざる秘密を暴き、物語は急展開に・・・。
スピード感溢れる、医療×サスペンス×ミステリー小説です。
- 作者:知念実希人
- 対象:中学生~
- 性的な描写ややあり
- グロテスクな描写あり
- 2014年12月に実業之日本社文庫より刊行
- 2020年に実写映画化
「仮面病棟」について
「仮面病棟」は知念実希人さんの医療サスペンス小説です。
「医療サスペンス」という言葉通り、病院内で発生した立てこもり事件を軸に物語が展開していきます。
まずは、そんな「仮面病棟」のあらすじを掲載します。
強盗犯により密室と化す病院。息詰まる心理戦の幕が開く! 療養型病院にピエロの仮面をかぶった強盗犯が籠城し、自らが撃った女の治療を要求した。先輩医師の代わりに当直バイトを務める外科医・速水秀悟は、事件に巻き込まれる。秀悟は女を治療し、脱出を試みるうち、病院に隠された秘密を知る――。そして「彼女だけは救いたい……」と心に誓う。閉ざされた病院でくり広げられる究極の心理戦。迎える衝撃の結末とは。人気急上昇の新鋭ミステリー作家で現役医師が描く<本格ミステリー×医療サスペンス>。
仮面病棟―Amazon.co.jp
- 病院が舞台の医療もの
- 立てこもり事件が発生するサスペンス
- 犯人の目的や動機・病院の秘密を探るミステリー
といくつものジャンルを含んだ贅沢な仕様となっているこの「仮面病棟」。
途中からやや恋愛要素も絡んでくるので、とにかく飽きないのが特徴です。
文庫版のあらすじには『一気読み必至』と書かれていますが、確かに一気に読み切った方がスリリングでより楽しめるかと思います。
2020年に実写映画化
「仮面病棟」は2020年に実写映画化されています。
仮面病棟
主演は坂口健太郎さん、ヒロインは永野芽郁さんです。
その他にも江口のり子さん、内田理央さん、笠松将さん、高嶋政伸さんなどが出演しています。
豪華キャストですね。
「仮面病棟」あらすじ&感想
「仮面病棟」のあらすじ&感想です。
『クローズド・サークル』ミステリー
「仮面病棟」の主人公は外科医・速水秀悟。
物語は、速水が田所病院の当直を先輩医師から代わって欲しいと頼まれ、了承するところから始まります。
普段は別の病院に勤めつつ、田所病院に週1で当直勤務を行う。
5年目の若手医師である速水の多忙ぶりがうかがえますね。
といっても、田所病院に入院しているのはほとんどが意識がないor寝たきり状態の患者のみ。
勤務内の大半は当直室で寝ているだけという仕事内容でした。
そんなゆるい田所病院での当直が銃を持った立てこもり犯の登場で一変。
夜から翌朝にかけて、病院内で繰り広げられる攻防はスリリングでした。
外部との接触がほぼない夜の病院、切断された電話線、電波がつながらない携帯電話。
さらに、少ない出入り口は立てこもり犯が監視しているという状況。
「仮面病棟」では外の世界との接触・行き来ができない『クローズド・サークル』の状況下で事件が進んでいくのが特徴の1つとなっています。
また、速水たち病院に勤務する医師・看護師たちだけでなく、自力で動くことが困難な患者たちも人質に取られている、という点も緊迫度合いを高める要素です。
犯人を刺激しないように、いかに立てこもり事件を解決していくのか。
小説内のほとんどのシーンで語り手となっている速水の奮闘も読みどころの1つでしょう。
さらに、この「仮面病棟」では密室殺人も発生します。
第二章のタイトルが『最初の犠牲者』だったので、誰かが犠牲になるのだろうとは思いましたが、あまりにもあっさり殺されてしまうのでビックリしました。
病院の秘密
銃を持った立てこもり犯はもちろん怖いですが、それ以上に恐ろしいかったのが『田所病院の秘密』です。
ただ、病院の秘密について、ミステリー好きで性根がひねくれているわたしは、早い段階で見当が付いてしまいました。
- 寝たきり&身元不明者が多数の患者が常時たくさんいる病院
- 不必要なほどに最新設備&ピカピカの手術室
- 怪しすぎる院長・看護師たち
という、いかにもな状況。
しかし、その状況を察しても尚、主人公・速水がどのように生き延びていくかは気になりました。
犯人はもちろん敵ですが、病院側の院長・看護師2人も場合によっては敵になり得る。
純粋な味方なのは立てこもり犯が連れてきた、負傷中の女子大生・川崎愛美のみ。
その物理的にも心理的にも追い詰められた状況はハラハラして読み進めるのが楽しかったです。
ピエロのマスクは怖くない?
ピエロのマスクを被った立てこもり犯。
実写映画でのビジュアルを見る限りではそこそこ不気味でしたが、小説だけだと恐怖よりもユニークさが上回る気がします。
わたしが日本人であるからなのか、ピエロに対してそこまで恐怖感がないのも理由でしょう。
また、ピエロのキャラクターがキレると何をしでかすか分からない、という部分があるものの、全体的に短絡的で親しみやすいというのも怖くないポイントでしょう。
けっこうあっさりと速水に操られているのも弱々しいポイントの1つです。
田所病院の院長・田所や看護師・東野などの方がよっぽど怖かったです。
登場人物の少なさの是非
「仮面病棟」のメインキャラクターは
- 主人公・速水
- 人質で負傷者の女子大生・愛美
- 田所病院の院長・田所
- 看護師・東野
- 看護師・佐々木
- 立てこもり犯・ピエロ
の6人だけ。
そのため登場人物の名前と特徴を覚えるのは簡単でした。
キャラクターが少ないので、ミステリーを読み慣れていない方でも不安なく読みやすいのではと思います。
しかし、その分『真犯人』の見当が付けやすいのはデメリットかと思いました。
絶対怪しい・・・、と思っていた人物が案の定だったので、そこは少し物足りなさを感じました。
だからこそ、この「仮面病棟」は一気に読み進めるのがオススメと言えます。
本を閉じずに、考える余裕を持たずに読めばスピード感も味わえそうです。
序盤から小説の至る所に伏線が仕込まれている「仮面病棟」。
少し優しすぎるのでは?と思うほど、読者として謎解きが楽しめるのも魅力です。
エンターテイメント小説として楽しめる1冊、「仮面病棟」の感想でした。