コロナ禍で外に出にくい日々が続く中、時間を持て余している読書家にオススメ!
上下2巻で大ボリューム、医療ミステリーなのに読みやすい知念実希人さんの「ムゲンのi」をご紹介します。
本屋大賞ノミネートの大ヒット作、今から読んでも遅くはありません!
本格ミステリーと医療もの、そしてファンタジーが融合した「ムゲンのi」の世界を堪能してください。
- 作者:知念実希人
- 対象:中学生~
- 性的な描写なし
- グロテスクな描写あり
- ホラーが苦手な方は注意
- 2019年9月に上下2巻で双葉社より刊行
- 2020年本屋大賞・第8位
「ムゲンのi」あらすじ
「ムゲンのi」は知念実希人さんが手がけたミステリー小説です。
小説は上・下2巻に分かれ、大ボリュームで楽しめる1冊です。
この「ムゲンのi」には色々な小説のジャンルが含まれ、ミステリーの他にも
- ファンタジー
- 医療もの
- 人間ドラマ
- (やや)ホラー
などのジャンルも当てはまるかと思います。
医療とミステリーとファンタジーが同時に当てはまる小説って、おそらくこの「ムゲンのi」くらいです。
比率は医療:ミステリー:ファンタジーが3:3:4くらいです。(個人の見解です)
そんな「ムゲンのi」のあらすじを掲載します。
若き女医は不思議な出会いに導かれ、人智を超える奇病と事件に挑む。
眠りから醒めない四人の患者、猟奇的連続殺人、少年Xの正体――
すべては繋がり、世界は一変する。眠りから醒めない謎の病気〈特発性嗜眠症候群〉通称イレスという難病の患者を3人も同時に抱え、識名愛衣は戸惑っていた。
ムゲンのi(上)―Amazon.co.jp
霊能力者である祖母の助言により、患者を目醒めさせるには、魂の救済〈マブイグミ〉をするしか方法はないと知る。
愛衣は祖母から受け継いだ力を使って患者の夢の世界に飛び込み、魂の分身〈うさぎ猫のククル〉と一緒にマブイグミに挑む――。
「ムゲンのi」は医療ミステリー。
そのため医療の専門的な知識や用語もたびたび登場します。
わたしは正直、医療ものが得意ではありません。
読んだことはありますが、難しくて疲れるので苦手でした。
しかし、この「ムゲンのi」はとても読みやすい小説です。
作者の知念実希人さんは実際に内科医として勤務経験があるプロの医師ということもあり、医療用語や病気の説明なども分かりやすく、難しい部分でもストレスなく読み進められました。
作者・知念実希人さんについて
この「ムゲンのi」の作者は知念実希人さんです。
わたしはこれまでに知念実希人さんの「ひとつむぎの手」を読んでおり、「ムゲンのi」は知念作品2冊目でした。
そんな知念実希人さんの略歴を掲載してみます。
1978年生まれ。東京慈恵会医科大学卒業、内科医。
ムゲンのi(上)―Amazon.co.jp
2011年、福山ミステリー文学新人賞受賞し、『誰がための刃 レゾンデートル』(『レゾンデートル』と改題し文庫化)でデビュー。
主に医療ミステリーを手がけ、『天久鷹央の推理カルテシリーズ』が評判を呼ぶ。15年、『仮面病棟』は50万部超のベストセラーになり、
18年には『崩れる脳を抱きしめて』で、19年には『ひとつむぎの手』で連続して本屋大賞ベストテン入りを果たす。
近著に『神のダイスを見上げて』『レフトハンド・ブラザーフッド』がある。
知念実希人さんは元々医師として勤務した後、2011年に小説家デビューされました。
2021年の今年は作家デビュー10年目の記念すべき年ですね。
ここ数年は本屋大賞の常連で、2020年には「仮面病棟」が実写映画化。
年々人気が高まっている小説家です。
幻想的で美しいカバーイラスト
「ムゲンのi」は小説の内容そのものが面白いのはもちろんですが、まず読者が目にするのはそのカバーイラスト。
幻想的で美しい「ムゲンのi」の世界観にピッタリのカバーイラストです。
小説を読みながら、何度もこのカバーイラストを眺めてしまいました。
本屋さんに平積みされていたらパッと目に入る鮮やかさですよね。
そんな「ムゲンのi」のカバーイラストを手がけたのはイラストレーターの青依青(あおいあお)さん。
青依青さんはここ近年、多くの単行本のカバーイラストを手がけています。
ペンネームに「青」の文字が2つも入っていることもあり、他のイラストは寒色のブルー系が主。
しかし「ムゲンのi」は華やかでポップな印象でかわいらしいですよね。
カバーイラストが楽しめるのも「ムゲンのi」の魅力でした。
「ムゲンのi」の気になること
「ムゲンのi」は正直、何をどう書いていってもネタバレになりそうな小説です。
なので、ここからはネタバレにならないよう「ムゲンのi」に登場する病気などについて調べたことをまとめてみようと思います。
「イレス」は本当にある病気なの?
「ムゲンのi」で主人公である医師・識名愛衣が担当する患者の病気「特発性嗜眠症候群」、通称「イレス」。
小説の劇中では、原因不明で眠り続ける奇病とされています。
このイレス、実際にある病気なのでしょうか?
調べたところ、イレスは架空の病気のようです。
よく似た名前の病気として「特発性過眠症」というものがあります。
しかし「特発性過眠症」は度が過ぎた眠気に襲われる症状なので、イレスとは別物ですね。
愛衣はこのイレスを治すため、ある特殊な力を使うことになります。
つづいては、その特殊な力についてまとめてみました。
愛衣が持つ特殊な力について
愛衣イレスにより眠り続ける患者たちを救うため、ユタである祖母の助言のもとマブイグミを行います。
「ユタ」「マブイグミ」など聞き慣れない単語が登場しました。
さらに劇中では「マブイ」「ククル」などという言葉も出てきます。
この単語をそれぞれ調べてみました。
ユタ
ユタは沖縄などに古くから存在する民間の霊媒師のことを指す言葉。
つまり、実際にある伝承です。
霊媒師と言うよりも「巫女」という意味合いが強い存在のようです。
ユタは「サーダカンマリ(性高い生まれ)」を持つ者のみがなれ、生まれたときから宿命付けられているものとされています。
愛衣は祖母から「サーダカンマリ」だと言われ、祖母と同じユタの力が使えました。
実際のユタが「ムゲンのi」の愛衣のような力が使えるかどうかは分かりません。
けれども、小説で書かれたユタの基本情報はほぼ一般的なものと同じでした。
マブイ・マブイグミ
マブイとは沖縄の方言で「魂」という意味。
マブイは驚いたりショックを受けたりした際に身体から離れてしまうとされています。
この離れたマブイを身体に戻すことをマブイグミ(魂込め)と言います。
これは「ムゲンのi」の説明と同じですね。
また、マブイは離れたらすぐに身体に戻さないと良くないことが起こるとされ、マブイが離れた場所でマブイグミを行うとされています。
「ムゲンのi」のマブイグミのシーンは、まさにファンタジーの冒険でした。
子供の頃に読んだ児童向けファンタジー小説を思い出します。
しかし、「ムゲンのi」は大人向け小説ということもあり、なかなか恐ろしい描写もありました。
あまり細かく書きませんが、刀を振り回すお面被ったのっぺらぼうに襲われるなんて想像したくないですね。うなされます。
ククル
ククルは沖縄の方言で「心」という意味です。
「ムゲンのi」では『マブイ(魂)に寄り添い成長する、マブイを映す鏡のようなもの』とされていました。
小説では心とハッキリ言及されてはいませんが、ククル=心と捉えられますね。
「ムゲンのi」に登場するククルは『うさぎのような長い耳を持ったクリーム色の猫』というビジュアルとされています。
うさぎ猫なんて、シンプルに最高のビジュアルです。
下巻の表紙に描かれているのがククルだと思うのですが、最高に可愛いですよね。
この愛くるしい姿のククルと愛衣の冒険が「ムゲンのi」の最大の魅力。
冒険のお供にはピッタリの可愛く頼もしい相棒でした。
<最後に>「ムゲンのi」とは
この小説のタイトル「ムゲンのi」には2つの意味がありました。
まず「ムゲン」は愛衣がマブイグミで入る「夢幻の世界」のこと。
すると「i」は愛衣(主人公)という意味になるでしょうか?
夢幻の世界にいる愛衣、それがまず1つ目。
さらに、2つ目は「無限の愛」。
この「無限の愛」は物語の根底にあるテーマでした。
医療ミステリーと思いきや、大胆なファンタジー世界へも誘われた「ムゲンのi」。
1つの小説でこんなに多くのジャンルを一度に楽しめるなんて贅沢な気分になりました。
読んで損はない1冊、キレイな表紙でプレゼントにもピッタリですね♪