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「いけない」道尾秀介 巧みな文章と絵・写真から読み解く真相とは?新感覚の傑作ミステリー

崖 いけない 道尾秀介 小説
samuelsanchezflores19によるPixabayからの画像

道尾秀介さんのミステリー小説「いけない」の感想です。

文章と絵・写真、2つの要素から成り立つ新感覚のミステリー。

各章のラストページの絵・写真の意味に気付いたときの衝撃は、他の小説では味わえない気持ちよさでした。

「いけない」基本情報
  • 作者:道尾秀介
  • 対象:中学生~
    • 性的な描写なし
    • グロテスクな描写あり
  • 2019年7月に文藝春秋より刊行
    • 2022年8月に文庫化
  • 2022年9月に続編「いけない2」が刊行

「いけない」について

「いけない」は道尾秀介さんのミステリー小説です。

全4章(1・2・3章+終章)からなる連作短編集。

同じ土地で起こる3つの殺人事件を描いています。

まずは、そんな「いけない」のあらすじを掲載します。

騙されては、いけない。けれど絶対、あなたも騙される。

『向日葵の咲かない夏』の原点に回帰しつつ、驚愕度・完成度を大幅更新する衝撃のミステリー!

どの章にも、最後の1ページを捲ると物語ががらりと変貌するトリックが……!
ラストページの後に再読すると物語に隠された〝本当の真相〟が浮かび上がる超絶技巧。
さらに終章「街の平和を信じてはいけない」を読み終えると、これまでの物語すべてがが絡み合い、さらなる〝真実〟に辿り着く大仕掛けが待ち受ける。

「ここ分かった!?」と読み終えたら感想戦したくなること必至の、体験型ミステリー小説。

いけない―Amazon.co.jp

この「いけない」は、とても不思議なミステリーです。

各章のラストページには絵・写真が掲載され、その絵・写真を含めて1つの物語が完成します。

絵・写真は各章の種明かしなのですが、少し考えないと何を表しているのか推測するのは難しいでしょう。

しかし、分かった瞬間、衝撃と推理できた喜びが走り抜けます。

読者も推理するのがミステリー小説の醍醐味ですが、わたしなどは大抵空振り。

推理が当たったことは数えるほどしかありません。

けれども「いけない」は文中にヒントがすべて散りばめられ、絵・写真のヒントも合わせれば読者でも推理できるのがポイント。

小説で謎解きにチャレンジしたい、という方にぜひともオススメしたい一冊です。

続編「いけないⅡ」が2022年に登場

「いけない」は、続編として「いけないⅡ」が2022年に登場しています。

「いけないⅡ」の感想・あらすじ・考察はこちら

「いけない」で体験型ミステリー小説の面白さに目覚めた方は、ぜひ2作目「いけないⅡ」にもチャレンジしてみてくださいね。

【未読OK】「いけない」感想・あらすじ

「いけない」のネタバレなし感想・あらすじです。

1~3章は問題編、終章は答え合わせ

「いけない」は同じ土地で起きた3つの殺人事件をそれぞれ描く連作短編集です。

舞台は、それぞれ川を挟んで隣接する白沢(はくたく)市・蝦蟇倉(がまくら)市。

限られた狭い土地で発生した3つの殺人事件。

その事件たちが少しずつ繋がっていく様子は読んでいてゾクゾクしました。

ここからは章ごとに簡単なあらすじをまとめていきます。

第一章 「弓投げの崖を見てはいけない」
→自殺の名所が招く痛ましい復讐の連鎖。
第二章 「その話を聞かせてはいけない」
→少年が見たのは殺人現場? それとも……。
第三章 「絵の謎に気づいてはいけない」
→新興宗教の若き女性幹部。本当に自殺か?
終 章 「街の平和を信じてはいけない」
→そして、すべての真実が明らかに……。

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第一章「弓投げの崖を見てはいけない」は、保育士を襲った交通事故とその復讐のお話です。

冒頭の痛ましい事故と明かされる意外な事実、そして謎が多いラストまで、スピーディーな展開が特徴です。

ストーリーに隠されたミスリードにいつ気付くかで、話の見え方が大きく変わります。

この第一章に登場した人物たちの多くは第三章にて再登場します。

第二章「その話を聞かせてはいけない」は第一章から5年の月日が経過。

中国出身で小学4年生の少年・珂(かー)が主人公。

学校ではいじめられ、家庭も不和、故郷から遠い異国で1人奮闘していた少年は、近所の文房具屋で異常な光景を目撃します。

たった今、目撃したのは殺人事件だったのでは?

そう考えるも、空想癖の自覚と唯一会話ができる嫌いな同級生からの言葉によって、考えすぎだと思い直すように。

しかし、ある報道を目にしたことから、少年に悲劇が降りかかります。

第三章 「絵の謎に気づいてはいけない」は、地域で信者を増やしていた新興宗教の幹部の変死体を巡るストーリー。

第一章にも登場した刑事・竹梨の視点から、不可解な変死体の真相がジワジワと明かされていきます。

もやがかかったようなラストからページをめくり、描かれている絵の意味に気付いたときの衝撃はゾッとしました。

ここまで第一~三章までは問題編。

各章で解決した問題もあれば、ぼかされている部分もあります。

そして、終章「街の平和を信じてはいけない」において、ぼかされた部分の答え合わせが書かれています。

後日談でもあり、各章の登場人物たちがその後、曲がりなりにも平和に暮らしていたことが分かり、やや安堵。

ただ、サブタイトル「街の平和を信じてはいけない」という言葉通り、全く平和ではなかった街の裏側をヒシヒシと感じられました。

絵・写真の見方のヒント

「いけない」が他の小説と大きく異なる点は、なんといっても各章のラストページに掲載の絵・写真。

ラストページの絵・写真までがストーリーの一部となっている、なんとも面白い構成の小説です。

ただ、絵や写真をただ見ても、その意味に気付けなければ意味がありません。

そこでわたしなりの絵・写真の見方のヒントを書いておこうと思います。

絵・写真を見ても分からなかった。

という方はぜひ参考にしてみてください。

※(わたしの見解による)正解は↓にも掲載しています。

まず第一章「弓投げの崖を見てはいけない」の地図。

小説の冒頭に掲載された地図の蝦蟇倉市部分を拡大したものですが、唯一違う点として『ゆかり荘』が描かれています。

この『ゆかり荘』の位置関係と、第一章後半の展開を照らし合わせるとある事実にたどり着きます。

第二章「その話を聞かせてはいけない」はテレビ画面を移した写真です。

モチーフは夕方のワイドショーで、小説内で珂が目撃したテレビ番組でしょう。

おばあさんとその甥っ子が遺体となって発見された身内について、インタビューを受けている様子。

この写真、一見何の変哲もありませんが、実は画面内に人間が3人映っています。

ぜひ見つけてみてください。

第三章「絵の謎に気づいてはいけない」は小説内の絵とラストページの絵を見比べてみるとハッキリします。

小説内の絵と違う点。

その違いを今まさに描こうとしている人物。

第三章の終盤に仄めかされているものの、この写真で決定的となります。

また、それを描き入れている人物の手も注目ポイント。

あの白い手袋は刑事のトレードマークですよね。

そして終章「街の平和を信じてはいけない」はシンプルです。

写真1枚で救いを表現しています。

この小説だけではできない、写真ならではの表現には脱帽です。

ここまでネタバレしないように「いけない」のあらすじ・感想を書いてみました。

読み終わったら、ぜひ↓のネタバレありの感想もご覧ください。

ここからは「いけない」のネタバレあり感想です。

全体の仕掛けにまつわる言及もあるので、未読の方はご注意ください。

【ネタバレあり】「いけない」の真相

ここからはネタバレ全開で「いけない」のわたしが導き出した推理をまとめていきます。

第一章『死亡事故』の被害者

まず第一章の最後に発生する『死亡事故』の被害者について。

この被害者に関しては、小説の最後まで直接的に名前が明かされません。

そのため推測ですが、この『死亡事故』の被害者は刑事・隈島だと思われます。

根拠は第一章ラストページの絵。

隈島は、安見弓子への身の危険を感じ、商店街から近道となる抜け道を通ってゆかり荘まで向かいました。

その近道を抜けた先はまっすぐゆかり荘です。

そして、新興宗教・十王環命会の車はちょうどそのときゆかり荘へ続く道を南下していました。

人影は南下する車の右側の道から飛び出してきた、とあるので一致します。

『死亡事故』の被害者には

  • 刑事・隈島
  • 安見邦夫
  • 森野雅也

の3人の候補がいます。

南下する車の右側から飛び出していることで、まず安見邦夫は候補から外れます。

森野雅也は近道となる道を通らず、ゆかり荘への道を北上するルートで向かっていたため、やはり右側から飛び出してきたとは一致しません。

さらに隈島は地図にゆかり荘の位置を書き入れ、抜け道を知っていました。

また、殺人事件が安見邦夫による復讐だと気付いていたのに事件が未解決のままであること。

その上、第三章では名前こそ登場するものの「6年前までコンビを組んでいた」など過去形でしか語られていません。

これらから『死亡事故』の被害者は隈島であると推測しました。

第二章の写真のヒント

第二章「その話を聞かせてはいけない」のラストはややファンタジックな結末を迎えます。

幼い少年、しかも空想癖のある少年の一人称だからか、と思っていましたが、ラストページの写真をよく確認し、驚愕しました。

ワイドショーのインタビュー。

おばあさんとその甥っ子が話をしている、その写真の左奥に車の陰に隠れる少年の姿が映っています。

この少年は珂の同級生の山内だと思われます。

車に隠れていた山内は、連れ去されて口封じのために崖から落とされかけた珂を助け、おばあさんとその甥っ子を突き落としたのでしょう。

珂が崖を背に見たのは、自分と同じ背格好の山内の姿だったのですね。

第三章の『絵の謎』

第三章「絵の謎に気づいてはいけない」では、最後に『絵の謎』に気付いてしまった新人刑事・水元が遺体となって発見されることで終わります。

『絵の謎』、水元が目撃した絵は、第二の被害者・中川が描いたオリジナルのままではなく、第三者の手が加えられている、ということでした。

ラストページの絵・写真と文中の絵を見比べると、殺人事件のトリックに使われたスマートロックが塗りつぶされ、さらに棒人間に偽装されているのが分かります。

この偽装工作を行ったのは刑事・竹梨。

竹梨は新興宗教・十王環命会の幹部をかばうため、自ら手を汚し中川を殺害。

その後、手帳にかかれたトリックを偽装したのでしょう。

実は第一章の時点から竹梨が新興宗教・十王環命会の信者だったというのは衝撃的です。

終章の写真

終章は安見邦夫・珂・竹梨が弓投げの崖で再会するというストーリー。

そして、そのラストページの写真に写っていたのは白紙の便せん。

罪を手紙に記すよう妻に頼んだ安見。

その妻・弓子は便せんを白紙のままで封筒に入れていたのです。

このラストシーンは何よりの救いですね。

ここまで「いけない」のネタバレあり感想でした。

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