さくらももこさんのエッセイ「さくらえび」の感想です。
2000~20002年にかけて書かれ、息子や両親、有名人との交流といったエピソードが盛りだくさん。
変わらずに痛烈な語り口調で、気持ちよく読めるオススメのエッセイです。
- 作者(絵と文):さくらももこ
- 対象:中学生~
- エログロ描写なし
- 2002年4月に新潮社より刊行
- 2004年6月に文庫化
「さくらえび」あらすじ
「さくらえび」はさくらももこさんのエッセイです。
1991年にエッセイストとしてデビューしてから11年後の2002年に刊行されたこの「さくらえび」は、エッセイストとしての力を存分に感じられる1冊になっています。
まずは、そんな「さくらえび」のあらすじを掲載します。
息子は、私のことをさくらももこかもしれないと疑いつつ、一方では違うとも思っている?
父ヒロシに幼い息子、ももこのすっとこどっこいな日常のオールスターが勢揃い!
奇跡の爆笑雑誌「富士山」からの粒よりエッセイ。家族や日常のことだったら、その爆笑度並ぶものなし!ももこが編集長として、取材・文章・漫画すべてを一人でやっちゃった、2000年記念の奇跡の面白雑誌『富士山』(全4号)からの選りすぐりに、’02年発行の5号から「植田さんの深まるくだらない願望」「必見!!おならレポート」の2本、『富士山』未収録分7本も加えた、大満足のエッセイ集。父ヒロシも息子も全開だよ。
さくらえび―Amazon.co.jp
この「さくらえび」は、さくらももこさんが編集長を務めた雑誌「富士山」に掲載されたエッセイに、その未収録分7本を加えて刊行されたエッセイ集です。
28本ものエッセイが収録され、非常にボリュームのある内容となっています。
- ヒロシのコイ
- ヒロシのコイのその後
- 息子の手紙
- 息子と絵本を作る
- 2000年お正月の思い出
- 花札の思い出
- 神経衰弱
- おひなさまを買いに行く
- 息子いましめビデオ
- 自分ちバーベキュー
- 水タンクを買った母
- たけしさん来宅の思い出
- 父ヒロシインタビュー
- 金魚すくい
- 歯医者へ行く
- みんなで怒られた話
- のぶみ君の金券
- 植田さんのくだらない願望
- 和田さん
- 植田さんの深まるくだらない願望
- 本間さんのダンナさん
- 京都の出来事
- 富士山に登った人と登らなかった人
- あの日の奈良
- 必見!! おならレポート
- ヒロシの挑戦 しまなみ海道
- オーストラリアに行く
- 『北の国から』の現場へ
- 巻末付録 おまけのQ&A
(Amazonより引用)
※29話目は単行本では『あとがき』、文庫版では『巻末付録 おまけのQ&A』となります。
雑誌「富士山」とは
「さくらえび」に収録されているエッセイは、もともと雑誌「富士山」に掲載されていたものです。
そんな雑誌「富士山」とは、2000年1月号・4月号・7月号・10月号と計4号が刊行された雑誌です。
2002年には読者の反響に応え5号目が刊行しています。
さくらももこさん本人が編集長となり、記事の企画から取材、執筆、マンガ、イラストまでほぼすべてを自身で手がけた雑誌とのこと。
さくらさんの強いこだわりを感じますね。
「さくらえび」の感想
「さくらえび」の個人的な感想です。
これまでのエッセイと違う部分
わたしはこれまで、
- さくらももこさんの初エッセイ「もものかんづめ」
- 2作目「さるのこしかけ」
- 3作目「たいのおかしら」
- 学生時代が中心の「ひとりずもう」
の4作を読んでいるのですが、この「さくらえび」は上の4作とは大きく異なるエッセイでした。
大きく異なる部分、それは「さくらえび」は成功した後について書かれたものということです。
残酷なまでの時の経過を感じる
「さくらえび」を読み、まず感じるのは『これまでのエッセイとは生活水準がまるで違う』ということでした。
特に初期3部作「もものかんづめ」「さるのこしかけ」「たいのおかしら」などは、子ども時代から現在(執筆当時)に至るまでのごくごくありふれた日常を綴った『庶民』のエッセイといった感じでした。
わたしにとっては両親と同世代のさくらさんの話ですが、とても親しみやすく共感できる部分が多々ある内容だったと思います。
しかし、この「さくらえび」でのさくらももこさんは完全に『セレブ』です。
金銭感覚や交友関係のエピソードなどは一般人の感覚からかけ離れています。
したがって、初期3部作のようなほのぼのとした庶民派エピソードが好きだった方には少し不満な内容かも知れません。
わたし自身、少し寂しい気持ちを覚えました。
ただ、成功者の変わりぶりを目の当たりにできるという意味では面白いと思います。
父ヒロシと息子が活躍
生活レベルは変わってしまったものの、おなじみの父ヒロシの活躍は変わりません。
相変わらず面白くて、エピソードの宝庫だと思います。
また「さくらえび」ではさくらももこさんの息子も大活躍。
母親としてのさくらさんの姿も確認できました。
フィクションみたいに波瀾万丈な人生
「さくらえび」に収録されているエッセイが書かれたのは2000年から2002年にかけて。
その時期はさくらさんにとって、ようやく私生活の慌ただしさから解放された時期だったようです。
まず、さくらさんは1994年に長男を出産されています。
この長男は「さくらえび」にもたびたび登場し、別の本では『めろん君』と呼ばれています。
そして、その4年後の1998年、当時の夫と離婚。
その翌年にはずっと書き続けてきたアニメ「ちびまる子ちゃん」の脚本を降板しています。
(そもそも、それまでずっと脚本を書き続けていたというのがスゴいですよね・・・)
エッセイ執筆時の2000年ごろはようやく平穏な時間が訪れた、といった感じだったのでしょうか?
この頃には、離婚前に呼び寄せていた両親と息子の4人で東京の家で暮らしています。
↑の経歴だけでもなかなかスゴいですよね。
そんなさくらさんの経歴に関する詳細はWikipediaで確認できますが、とても波瀾万丈です。
2018年に享年53歳で亡くなったさくらさんですが、非常に濃い人生を送っていたのだなと思わされます。
「さくらえび」は、「もものかんづめ」などと違い、成功者となったさくらさんの日常が垣間見えるエッセイでした。
以前のエッセイと読み比べてみるのもまた一興かもしれません。
さくらももこさんのエッセイについて、過去に書いた記事は↓