柚木麻子さんの小説「3時のアッコちゃん」の感想です。
前作「ランチのアッコちゃん」からレベルアップして帰ってきた続編です。
アフタヌーンティーやスムージー、カラフルなスイーツに喫茶店まで。
「3時のアッコちゃん」では東京を飛び出し関西へも進出していたアッコちゃんに注目です。
- 作者:柚木麻子
- 対象:小学校高学年~
- エログロ描写なし
- 若干、精神的にきつめの描写はあり
- 2014年10月に双葉社より刊行
- 2017年10月に文庫化
- 「ランチのアッコちゃん」シリーズ2作目
「3時のアッコちゃん」あらすじ
「3時のアッコちゃん」は柚木麻子さんの小説です。
大ヒットを記録した「ランチのアッコちゃん」の続編、シリーズ2作目に当たります。
シリーズ1作目「ランチのアッコちゃん」の感想は↓です。
この「3時のアッコちゃん」でもアッコちゃんが大活躍!
働く女性の悩みが赤裸々に描かれ、前作よりも若干ハードな話になっている気がしました。
そんな「3時のアッコちゃん」のあらすじを掲載します。
「アッコちゃんシリーズ」第二弾、待望の文庫化!
澤田三智子は高潮物産の契約社員として、シャンパンのキャンペーン企画チームに入っているが、会議は停滞してうまくいかない。そこに現れたのが黒川敦子女史、懐かしのアッコさんだった。イギリスでティーについて学んできたというアッコさんが、お茶とお菓子で会議の進行を激変させていき――!?
3時のアッコちゃん―Amazon.co.jp
表題作ほか、「メトロのアッコちゃん」「シュシュと猪」「梅田駅アンダーワールド」を含む全4編を収録。
「3時のアッコちゃん」も全4話の短編が収録された短編集です。
主人公は話によって異なりますが、共通の登場人物がでてくるので連作短編集に当たります。
「ランチのアッコちゃん」として映像化
「3時のアッコちゃん」はNHK・BSプレミアムの連続ドラマ「ランチのアッコちゃん」において、表題作『3時のアッコちゃん』が映像化されていました。
ドラマの主演は蓮佛美沙子さん、共演は戸田菜穂さんです。
「3時のアッコちゃん」各話あらすじ&感想まとめ
「3時のアッコちゃん」の各話あらすじと感想をまとめていきます。
3時のアッコちゃん
表題作です。
3時、つまりおやつの時間にアッコちゃんこと黒川敦子が活躍するお話になります。
アッコちゃんのお供は、前作から登場する澤田三智子。
三智子は「ランチのアッコちゃん」の2話目『夜食のアッコちゃん』のときから勤めている高潮物産で、派遣社員から契約社員となっていました。
そんな会社の宣伝部広報課に所属する三智子ですが、クリスマスに向けて販売される輸入シャンパン売り出し方で課内がギクシャク・・・。
良いプランがないものか、とアッコちゃんに相談するところから物語は始まります。
この『3時のアッコちゃん』では、ずっと頼りない存在だった三智子の成長と、さらにパワーアップしたアッコちゃんの活躍が確認できます。
さらに、やはり出てくるスイーツや紅茶が何もかも美味しそうでした。
わたしはコーヒー好きなので普段はあまり紅茶を飲まないのですが、今度からは仕事のお供に紅茶を飲んでみようかな?と思わせるほど魅力的でした。
三智子たちが食べていたアフタヌーンティーがうらやましいです・・・。
メトロのアッコちゃん
メトロ=地下鉄が舞台のお話です。
アッコちゃんが立ち上げたポトフのお店は夏に売れず、やむなくスムージーも始めていました。(この話は『3時のアッコちゃん』でも触れられています)
『メトロのアッコちゃん』はそんなスムージーが1人の女性・榎本明海を変えていくストーリーでした。
この話はとにかくブラック企業の描写がキツい話でした。
また「食べ物は人生そのものを変えることはできない」「自分を変えるのは自分の意志だ」(ニュアンスです)というセリフが印象的でした。
人生で一番辛いとき、自分を変えられるのは自分のみ。
しかし、周りはその人が変われるようさぽーとしてあげることはできる。
そんなメッセージを感じたお話でした。
シュシュと猪
東京から神戸に引っ越してきた女性・岸和田塔子が主人公です。
この『シュシュと猪』、そして次の4話目『梅田駅アンダーワールド』はこれまでとは一転し関西が舞台となっています。
デザイナーとしてはたらく塔子が、ひょんなことから住んでいる下宿の1階にあるシュシュ屋さんと交流することになるというお話。
そして、なぜか猪に襲われ続けるというお話でもあります。
この話には美味しそうなご飯やスイーツは登場しません。
その代わり、塔子はフェルトでマカロンを作り、シュシュ屋さんではまるでスイーツのような色とりどりのシュシュを販売しています。
想像しながら読むと、一番カラフルでポップな話だったかもしれません。
梅田駅アンダーワールド
大阪梅田駅が舞台で、就活生の若林佐江が主人公のお話です。
関東出身・在住のわたしには、梅田駅と言われてもまったくピンときません。
調べたのですが『梅田駅』と呼ばれる駅がたくさんあり、より分からなくなりました。
『梅田駅アンダーワールド』で登場する阪急梅田駅という駅はなく、阪急電鉄・大阪梅田駅を指す言葉だと思われます。
この大阪梅田駅は西日本一のターミナル駅と言われるとても大きな駅。
地理や方向感覚に疎いわたしは、始めて訪れたら完全に迷うと思います。
そのため佐江の気持ちがいたいほど分かってしまいました・・・。
おおむね呼んでいてしんどい話だったです。
ただ、梅田駅の描写が魅力的で、特に冒頭の列車の表現からグッと物語に引き込まれました。
★まとめ★
前作「ランチのアッコちゃん」よりも社会問題を痛烈に扱っている小説になっていた「3時のアッコちゃん」。
読む人によっては辛い感情が呼び起こされて、キツくなってしまうかもしれません。
けれども、全体的に心温まり前向きになれるお話です。
少し毎日に疲れたときに読み返したいと思える美味しそうな小説でした。