【ネタバレあり】アガサ・クリスティー「アクロイド殺害事件」 犯人の正体と論争について

アクロイド殺害事件ネタバレ感想 小説

アガサ・クリスティーの小説「アクロイド殺害事件」のネタバレあり感想です。

前回の記事でネタバレなしの「アクロイド殺害事件」感想を書きました。

<ネタバレなし>「アクロイド殺害事件」感想は↓

しかし、どうも書き足りない気がしたので、この記事では「アクロイド殺害事件」の感想を【ネタバレあり】で書いてみます。

「アクロイド殺害事件」を未読の方は<ネタバレなし>バージョンをお読みください。

この記事では「アクロイド殺害事件」の犯人を明かしています。
ネタバレを見たくないという方は読まないでください。

「アクロイド殺害事件」あらすじ

「アクロイド殺害事件」は、アガサ・クリスティーが生み出した名探偵エルキュール・ポワロシリーズの3作目となります。

「灰色の脳細胞を働かせる」が決め台詞のポワロが依頼されたのは、イギリスの田舎で起きた名士・アクロイド氏の殺害事件の真実を解き明かすこと。

ポワロは隣人で他殺体で発見されたアクロイド氏の第一発見者でもシェパード医師とともに事件の謎に挑みます。

「アクロイド殺害事件」ではこのシェパード医師が語りを務め、シェパード医師の視点で物語は進んでいきます。

「アクロイド殺害事件」の流れ

まずはアクロイド氏が殺されるまでの流れをおさらいします。

  • 舞台はキングズ・アボットというイギリスの村
  • 物語は裕福な未亡人・フェラーズ夫人が睡眠薬の飲み過ぎで自殺するところから始まる
  • そのすぐ後、シェパード医師が村の名士であるロジャー・アクロイド氏から晩餐会に招待される
  • 晩餐会の後、アクロイド氏はシェパード医師にフェラーズ夫人が脅迫された末に命を絶ったと告げる
  • フェラーズ夫人は1年前に亡くなった夫を毒殺したことで脅迫されていた
  • ちょうどその時、執事が生前にフェラーズ夫人が脅迫者の名前を記した手紙を持ってくる
  • アクロイド氏は「1人で読む」と言い張り、シェパード医師を帰す
  • その晩、アクロイド氏が死亡しているとの電話を受け屋敷を再び訪ねると、刺殺されたアクロイド氏が発見される

そうして、アクロイド氏の姪フロラ・アクロイドから直々の指名を受け、ポワロはこの「アクロイド殺害事件」に着手することになるのです。

『犯人は誰?』に特化したミステリー

「アクロイド殺害事件」は犯人捜しに特化しているミステリーです。

殺害方法は短剣で背中から一刺しとシンプル。

別に凝った殺し方はしていません。

そのため、誰がいつどうして殺したのかが「アクロイド殺害事件」の肝となっています。

「アクロイド殺害事件」主な登場人物

ここで「アクロイド殺害事件」の登場人物をまとめておきます。

「アクロイド殺害事件」登場人物
  • ロジャー・アクロイド:事件の被害者で、村の名士
  • フェラーズ夫人:アクロイド氏殺害の数日前に自殺している
  • ラルフ・ペイトン:アクロイド氏の息子。しかし、血はつながっていない
    • フロラ・アクロイド:アクロイド氏の姪。ラルフの婚約者でもある
    • セシル・アクロイド夫人:フロラの母親で、アクロイド氏の弟の妻
    • パーカー:アクロイド家の執事
    • レイモンド:アクロイド氏の秘書
    • ミス・ラッセル:アクロイド家の家政婦
    • アーシュラ・ボーン:アクロイド家の小間使い
    • ブラント少佐:アクロイド氏の友人
    • ジェームズ・シェパード:医師。この「アクロイド殺害事件」の語り手
  • カロライン:シェパードの姉。
  • エルキュール・ポワロ:主人公にして、名探偵

アクロイド氏が殺害された夜の晩餐会には、リストの字下げされた人物が出席していました。

一番怪しい義理の息子・ラルフ

晩餐会には出席していませんでしたが、アクロイド氏の義子であるラルフ・ペイトンは事件後、行方不明に。

道楽者で金に困り、たびたびアクロイド氏に金の無心をしていたことから容疑者の筆頭にあげられてしまいます。

事件を調べていくと、ラルフに不利な証言ばかり出てきます。

けれども、ポワロは当初からラルフが容疑者ではないと踏んでいました。

また、読んでいても「怪しいけどラルフは犯人ではないのだろうな~」と思えます。

犯人ではないというか、ラルフは終盤まで一向に出てこないので、逆に犯人だったら読者に対する裏切りです。

一番怪しい「ラルフは犯人ではない」ということを念頭に、ポワロは犯人捜しを続けます。

みんな何かを隠している容疑者たち

物語の中盤、ポワロは容疑者を一堂に集め「隠していることを話せ」と詰め寄ります。

その圧力に負け、徐々に本当のことを語り始める容疑者たち。

セシル・アクロイド夫人は多額の借金があることを。

フロラ・アクロイドは事件の当日に、アクロイド氏の寝室からお金を盗んだことを。

執事のパーカーは脅迫癖があることを。

ブラント少佐はフロラ・アクロイドを密かに愛していたことを。

そして、事件前後に屋敷周辺をうろついていた不審な男。

その麻薬中毒の男がミス・ラッセルの一人息子で、事件当日に金を無心され渡していたこと。

さらに、アーシュラ・ボーンがラルフと密かに結婚し、事件当日にラルフと密会していたこと。

各人がそれぞれの秘密を打ち明け、それに伴い容疑者から外れていきます。

この時点で、ポワロに秘密を話していない人物は一人しか残っていませんでした。

事件の終盤と犯人の最期

事件の見通しが立ったポワロは、最後に自宅に容疑者たちを呼び寄せ「明日になったら警察に犯人を打ち明ける」と告げ、シェパード医師以外の容疑者を帰します。

そして、シェパード医師と2人きりになったポワロは事件の全容を話し始めます。

事件当日にアクロイド氏と書斎で2人きりになり、事件後の始末を付けられた唯一の人物はシェパード医師しかいない。

そう語り、シェパード医師が犯人と言い当てます。

夫を毒殺したフェラーズ夫人を脅迫し、自殺に追い込んだ人物。

さらに、脅迫の事実が発覚するのをおそれ、アクロイド氏を殺害した人物。

それはシェパード医師だったのです。

この「アクロイド殺害事件」の大胆不敵なトリックとは、ずっと真犯人による語りで物語が進んでいたということだったのですね。

犯人と言い当てられたシェパード医師が睡眠薬を飲み命を絶とうとするところでこの「アクロイド殺害事件」は終幕を迎えます。

※余談ですが、秘書のレイモンドは事件に何も絡んでなく、隠し事もないという潔白な人物でした。

「アクロイド殺害事件」フェア・アンフェア論争とは

「アクロイド殺害事件」は実は犯人だったシェパード医師の手記という形式でストーリーが進みます。

そのため、事件の真相といった『犯人が殺人を行うシーン』は意図的に書かれていません。

それにより、この「アクロイド殺害事件」は『フェアではない』との批判が付いて回りました。

ミステリー小説は、本来、読者に謎解きを楽しんでもらうため、作者が出せるカードをすべて提示するのが普通です。

謎解きが不可能なように大切な要素を隠してはいけない、というのが作者に課せられた最低限のルールだと思います。

けれども「アクロイド殺害事件」では、事件の重要な部分が故意に隠されている。

これはアンフェアなのでは?という意見が出たのですね。

その一方、その気になれば台詞や犯行時刻の齟齬から十分に犯人がシェパード医師だとも推理できるのも事実。

また、シェパード医師の語りはあくまでポワロの捜査をありのままに記す、という形式なので、ポワロが知り得ない犯行の様子が書かれていないのは当然とも言えます。

よって「フェアである」という意見も多々ありました。

この論争は世界中、当然日本でも起きていますが現在では「フェアである」という意見が大半のようです。

わたしもミステリーとしてとても面白かったですし、小説に提示された情報のみで犯人の目星が付いていたのでフェア説を支持します。

目星は付いていたものの、本当にシェパード医師が犯人だと知ったときはビックリしました・・・。

姉のカロラインといい、シェパード医師はなかなか魅力的な人物だったのでこの1回きりしか登場できないのがもったいない気もします。

そんな贅沢な人物使いも特徴と言えるのが「アクロイド殺害事件」でした。

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