「そして誰もいなくなった」アガサ・クリスティー 古風な雰囲気漂うミステリーの大傑作

そして誰もいなくなったイメージ 小説

アガサ・クリスティーのミステリー小説「そして誰もいなくなった」の感想です。

ミステリー小説の中でも傑作中の傑作とも言える作品で、クローズドサークルや見立て殺人などミステリー好きにはたまらない要素がつまっています。

「そして誰もいなくなった」後に明かされる黒幕の正体とトリックに驚きました。

「そして誰もいなくなった」基本情報
  • 作者:アガサ・クリスティー
  • 訳者:青木久惠
  • 対象:小学校高学年~
    • ややグロテスクな描写あり
    • 性的な描写はなし
  • 1939年11月にイギリスで初版発行
    • 日本では1955年6月に刊行

「そして誰もいなくなった」あらすじ

「そして誰もいなくなった」はアガサ・クリスティーの小説です。

アガサ・クリスティーの代表作とも言える傑作ミステリーですが、わたしはこれまで読んだことがありませんでした。

名探偵ポワロやミス・マープルを何冊か読んでいるうちに読みたくなり、文庫本を購入した次第です。

そんな「そして誰もいなくなった」のあらすじを掲載します。

その孤島に招き寄せられたのは、たがいに面識もない、職業や年齢もさまざまな十人の男女だった。だが、招待主の姿は島にはなく、やがて夕食の席上、彼らの過去の犯罪を暴き立てる謎の声が……そして無気味な童謡の歌詞通りに、彼らが一人ずつ殺されてゆく! 強烈なサスペンスに彩られた最高傑作! 新訳決定版! (解説・赤川次郎/装幀・真鍋博)

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ミステリー好きなら読んだことがなくても何となく話を知っているという方は多いでしょう。

実際わたしも大まかなあらすじは知っていました。

あらすじを簡単に説明すると『絶海の孤島に集められた10人の男女が、正体不明の犯人によって1人ずつ殺されていき、最終的に犯人も含め死に絶える』というもの。

まさに「そして誰もいなくなった」状態で一旦幕を閉じるのですが、10人全員が亡くなった後から謎解きがスタート。

読者にとっては存分に謎解きが楽しめる、贅沢な作品となっています。

また、個人的なわたしの思い出を少し。

わたしがミステリー小説好きになったのは、小学生の時に読んだはやみねかおるさんの「そして5人がいなくなる」がきっかけです。

この「そして5人がいなくなる」から始まる名探偵・夢水清志郎シリーズはわたしを見事にミステリー好きにし、今に至ります。

「そして5人がいなくなる」のタイトルはこの「そして誰もいなくなった」のオマージュです。

そんな思い出の作品のオマージュとなった作品を10年以上越しになりましたが読めたことも感慨深かったです。

アガサ・クリスティー作品の中でも屈指の人気作

「そして誰もいなくなった」はアガサ・クリスティー作品の中でもトップクラスの人気を誇ります。

日本クリスティ・ファンクラブ員のクリスティー作品のランキング(1971年・1982年)ではいずれも1位!

日本で集計されたミステリー作品全体のランキングでも、

  • 2010年「ミステリーが読みたい!」(海外ミステリ オールタイム・ベスト100 for ビギナーズ)
  • 2012年「週刊文春」(東西ミステリーベスト100)

で1位を獲得しています。

アガサ・クリスティー自身もお気に入り作品の1つとのこと。

やはり、ミステリー小説の歴史においても傑作中の傑作であることは間違いないですね。

何度も舞台・映像化された名作

「そして誰もいなくなった」はこれまでに世界各国で何度も舞台・映像化されています。

舞台の初演は1943年。この舞台ではアガサ・クリスティー本人が脚本を手がけています。

また、映画化は1945年にアメリカで上映されたのが最初となります。

ちなみに、日本では2015年にテレビ朝日で二夜連続スペシャルドラマとして映像化していました。

主演の仲間由紀恵さんをはじめ、非常に豪華なキャストが集結したことで話題となったようです。

(放送されていたこともまったく知りませんでした・・・。)

ミステリーの醍醐味

「そして誰もいなくなった」はクローズドサークルと見立て殺人という、ミステリーの醍醐味とも言える設定により成り立っているのが特長です。

クローズドサークル

クローズドサークル(クローズド・サークル)は外の世界とのつながりが途絶えた状況のこと。

この「そして誰もいなくなった」の舞台は船でしか行き来できない無人島・兵隊島。

その兵隊島に毎日訪れるはずの連絡船が黒幕の意図により来なくなったことでクローズドサークルが出来上がります。

また、途中からは物理的に天候の悪化で船が出せない状況にもなっています。

そんな閉ざされた空間の中で次々と殺人事件が起こっていくことで、誰が犯人なのかと疑心暗鬼になっていく、それがクローズドサークルの醍醐味と言えるでしょう。

わたしが最近読んだ本の中では、今村昌弘さんの「屍人荘の殺人」がクローズドサークルのミステリーでした。

↑の「屍人荘の殺人」は、クローズドサークルの原因が斜め上過ぎる、最高に面白い話です。

見立て殺人

見立て殺人とは、あるものに見立てて行われた殺人のこと。

「そして誰もいなくなった」では『10人の小さな兵隊さん』という童謡に見立てて登場人物たちが殺されていきました。

いかにもミステリーらしい演出で読んでいるわたしとしては楽しいですが、冷静に考えると悪趣味なことこの上ない殺し方ですね。

また、テーブルの上に置かれた兵隊の人形が1人殺されるごとに1体ずつ消えていく、という不気味さもゾクゾクします。

全体的にドライで淡々とストーリーが進む「そして誰もいなくなった」の中で、異様な恐ろしさを醸し出していると感じました。

ただ、犯人からすると、なかなか骨が折れる作業だとも思います。

「そして誰もいなくなった」の感想

まず、まっさきに感じたのが『あっさりすぎる』でした。

登場人物たち1人1人の説明があり、キャラクターたちは各々で兵隊島に向かいます。

その説明だけで登場人物の人となりが大体分かり、なおかつテープによる過去の犯行暴露によりキャラクターの輪郭がハッキリ描かれていて面白かったです。

日本人からすると海外のカタカナの名前は覚えづらいのですが、人物造形がハッキリしているのでほとんど迷わず読み進められました。

そもそも全員をしっかり覚える前にどんどん殺人が行われていくので、登場人物をしっかり把握する必要もありません。

殺されるペースも速く、1人目が殺されてからは次から次へとという表現がふさわしいほどにあっという間に殺されていきます。

ただ、殺人のハイペースとは裏腹に、1人目の殺人をしばらく『自殺だ』と思っていたところにのんきさを感じました。

実際に殺人事件が繰り広げられていたら、そんな感覚なのかもしれませんが。

また「そして誰もいなくなった」は殺人事件の話なのにグロテスクな描写が極端と言えるほど少ないのが特徴です。

殺人の手段が毒殺が多い上に、実際に犯人が殺人を犯すシーンが描かれていないので、奇妙なほどに淡々としていました。

その分、テープの犯行暴露シーンや童謡の見立て殺人、消えていく兵隊人形などが怖さを盛り上げています。

80年ほど前という時代も合わせて、古風な不気味さと丁寧な伏線が味わえる作品です。

まだ読んでいないという方に必見の一冊。

「そして誰もいなくなった」はミステリー好き必読とも言える作品でした。

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