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「ミス・マープルと13の謎」アガサ・クリスティー 『火曜クラブ』から始まる13短編

ミス・マープルと13の謎 小説

アガサ・クリスティの小説「ミス・マープルと13の謎」の感想です。

アガサ・クリスティーが生み出した探偵と言えばエルキュール・ポワロ。

わたしはこれまで出会ったのはポワロだけでしたが、今回もう1人の偉大な探偵ミス・マープルに初トライしてみました!

小説「ミス・マープルと13の謎」はまさに「ミス・マープル」シリーズ入門にオススメの短編集です。

読みやすいのに読み応えがある、そんなアガサ・クリスティーの魅力がつまった一冊でした。

「ミス・マープルと13の謎」基本情報
  • 作者:アガサ・クリスティー
  • 訳者:深町眞理子
  • 対象:中学生~
    • エロ・グロ描写なし
  • 1932年・イギリスにて「火曜クラブ」として初版が刊行
    • 2019年1月に創元推理文庫より新訳が刊行

「ミス・マープルと13の謎」あらすじ

「ミス・マープルと13の謎」はアガサ・クリスティーが著した小説です。

初版の刊行は1932年。

舞台はイギリスの田舎村です。

時代と舞台からとっつきにくさを感じるかもしれません。

しかし、この「ミス・マープルと13の謎」はとても読みやすく面白いミステリー短編集でした!

そんな「ミス・マープルと13の謎」のあらすじを掲載します。

「未解決の謎か」ある秋の宵、ミス・マープルの家に集った客が口にした言葉がきっかけで、<火曜の夜クラブ>が結成された。毎週火曜日の夜、ひとりが知っている謎を提示し、ほかの面々が推理を披露するのだ。凶器なき不可解な殺人「アシュタルテの祠」、動機と機会の奇妙な交錯「動機対機会」など傑作ぞろいの13編。ミステリの女王クリスティの生んだ名探偵として、いまなお世代を越えて愛される名探偵の短編集、新訳でリニューアル! 創元推理文庫創刊60周年記念、〈名作ミステリ新訳プロジェクト〉第1弾!

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「ミス・マープルと13の謎」はタイトル通り、ミス・マープルが主人公の短編が13編収録されています。

これまでは、小説の冒頭の短編から付けた「火曜クラブ」というタイトルで刊行されていました。

収録作品も「火曜クラブ」のものと同じです。

ちなみに「ミス・マープルと13の謎」はイギリスの「Miss Marple and the Thirteen Problems」に倣ったものです。

今の「ミス・マープルと13の謎」の方が一目で内容が分かるので手に取りやすいですね。

「ミス・マープルと13の謎」の特徴

「ミス・マープルと13の謎」は最後の1編を除き、夜会に参加した人物たちが過去に起こった不可解な事件について1人ずつ語っていき、他の人物がその事件の真相を謎解きするといった展開です。

事件は過去に起こったものなので解決済み。

その事件をミス・マープルがさもその場で見たかのように解き明かし、答え合わせをするというのが流れです。

1編は短く、事件に関わる登場人物も少ないので、読者も謎解きに参加しやすいのが嬉しいポイント!

ミス・マープルと推理力を競うのも楽しみ方の1つかもしれません。

「ミス・マープルと13の謎」の構成

「ミス・マープルと13の謎」に収録されている短編の舞台は

  • ミス・マープルの屋敷
  • バントリー大佐の屋敷

の2つに分かれています。

小説前半の6編が「ミス・マープルの屋敷」、7編目『青いゼラニウム』から6編が「バントリー大佐の屋敷」で開かれる謎解きの夜会でのお話。

そして、最後の『水死した娘』だけ他の12編と異なり、現在進行形で謎解きが展開されます。

それまではいわゆる安楽椅子探偵だったミス・マープルが、自ら事件の解決に乗り出す最後の編はそれまでの話と趣がガラリと変わり面白かったです。

話によって安楽椅子探偵にも積極的に動くこともできる柔軟さが、ミス・マープル最大の魅力かもしれません。

安楽椅子探偵(Armchair Detective)

他人から聞いた話のみで事件を推理し解決に導く探偵のこと。
「安楽椅子」という名称が用いられているが、必ずしも安楽椅子に腰掛けて推理しているとは限らない。

ちなみに、安楽椅子とは肘掛けが付いた椅子のこと。
別名は「肘掛け椅子」・「アームチェア」。

ミス・マープルは同小説でほとんどの話で肘掛け椅子(安楽椅子)に腰掛けて推理を披露しているので、立派な安楽椅子探偵と言えます。

主人公「ミス・マープル」とはどんな人?

「ミス・マープルと13の謎」の主人公はイギリスの老嬢ミス・マープル

アガサ・クリスティーが生み出したキャラクターの中では、エルキュール・ポワロと人気を二分する人気者。

エルキュール・ポワロのように物語の探偵役を担っています。

アガサ・クリスティーのミステリーを語る上では欠かせない存在です。

わたしはポワロ作品は数作読んだことがあるのですが、ミス・マープルはこの作品が初めてでした。

ポワロのダイナミックな世界観とは反対に、小さな世界の謎を淡々と解き明かすのがミス・マープルの特長。

しかし、事件も大きくなく派手さは欠きますが、ストーリーや謎解きは読み応えがあり十分に楽しめました。

むしろ、1編30ページ強で読み応えのあるミステリーが13編も収録されているという、なんとも贅沢な一だったなと思っています。

少し前置きが長くなりましたが、ここからはそんな主人公ミス・マープルについて、情報をまとめてみました。

ミス・マープルとは

ミス・マープルはイギリスのセント・メアリ・ミード村に暮らす老嬢です。

フルネームはジェーン・マープル(Jane Marple)。

甥のレイモンドから「ジェーンおばさん」と呼ばれていましたね。

ちなみに、老嬢というのは結婚適齢期を過ぎても未婚の女性のこと。

ミス・マープルには結婚歴がなく、生涯独身を貫きました。

また、セント・メアリ・ミード村は架空の土地です。

ロンドンから約40km離れた位置に存在する、イギリスのどこにでもあるような村とのこと。

そんなイギリスの片田舎に住む老嬢のモデルは、アガサ・クリスティー自身のおばあさん。

アガサ・クリスティーの祖母は、世間とは距離があるものの、人間の本質を見抜く能力に長けた老婦人だったとのことです。

このエピソードは同書「ミス・マープルと13の謎」のまえがきにも書かれています。

上品で物腰の柔らかいおばあさんに見えて、誰よりも物事の心理を理解している。

どこか「おばあちゃんの知恵袋」てきな雰囲気もあり、親しみやすさも感じるのがミス・マープルの魅力ですね。

わたしにとっては、ポワロよりも親しみやすいキャラクターでした。

(もちろん、ポワロも好きです。)

ミス・マープルの年齢は?

「ミス・マープル」シリーズで最大の謎?と言えるのがミス・マープルの年齢。

彼女の年齢は、他の登場人物からおばあさん扱いされ、甥のレイモンドが作家として活躍していることから60歳~だと推測できます。

ミス・マープルがこの世界に初めてお披露目されたのは同書掲載の「<火曜の夜>クラブ」で1927年。

彼女が生きる時代は現実の時代とリンクしているので、この「ミス・マープルと13の謎」は1930年代前後に時代が設定されています。

(したがって「ミス・マープルと13の謎」の会話で出てくる『先の大戦』は第一次世界大戦になります。)

「ミス・マープル」シリーズはアガサ・クリスティーが亡くなった1976年まで続きました。

※ちなみにシリーズ完結作「スリーピング・マーダー」は前もって1940年代に書かれていたので、最後に書かれたのは1971年刊行の「復讐の女神」になります。

その間、物語では現実で移ろう時間と合わせて時間が経っていきます。

初登場した1927年から最後の1970年代まで、ミス・マープルは時代に合わせて装いを変えているそうです。

初登場で60歳だとしても、最終的には110歳ほどになっている計算ですね・・・。

まあ、日本のアニメで言うと「名探偵コナン」や「クレヨンしんちゃん」と同じ『時間は経っても登場人物だけ年を取らない』サイクルに取り込まれていると考えれば納得です。

ミス・マープル入門にピッタリ

「ミス・マープルと13の謎」はミス・マープル初登場作品が掲載されていることもあり、「ミス・マープル」シリーズの入門にピッタリの小説でした。

ちなみに「ミス・マープル」シリーズの短編は、この「ミス・マープルと13の謎」意外に7編。

長編は12編もあるので、しばらく楽しみは尽きなさそうです。

これからアガサ・クリスティーが2大探偵でミステリーを堪能していきたいと思います。

※参考
ミス・マープル―Wikipedia

ミス・マープルの初の長編作品「牧師館の殺人」の感想

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