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「ツナグ 想い人の心得」辻村深月 前作「ツナグ」から7年後、さまざまな再会と歩美の変化

ツナグ想い人の心得イメージ 小説

辻村深月さんの小説「ツナグ 想い人の心得」の感想です。

映画化もされた人気作「ツナグ」の刊行から9年。

待望の続編となる「ツナグ 想い人の心得」が刊行されました!

前作から7年後を舞台に、『使者(ツナグ)』として、そして会社員として日々奮闘する歩美の姿が描かれています。

前作「ツナグ」の感想は↓

「ツナグ 想い人の心得」基本情報
  • 作者:辻村深月
  • 対象:小学校高学年~
    • エログロ描写なし
  • 2019年10月に新潮社より刊行
  • 「ツナグ」の続編

「ツナグ 想い人の心得」あらすじ

「ツナグ 想い人の心得」は辻村深月さんの連作短編小説です。

2010年に刊行された「ツナグ」の続編となります。

まずは、そんな「ツナグ 想い人の心得」のあらすじを掲載します。

死者との再会を叶える使者「ツナグ」。長年務めを果たした最愛の祖母から歩美は使者としての役目を引き継いだ。7年経ち、社会人になった彼の元を訪れる依頼者たちは、誰にも言えぬ想いを胸に秘めていた――。後悔を抱えて生きる人々の心を繋ぐ、使者の物語。大ベストセラー、待望の続刊!

「ツナグ 想い人の心得」―Amazon.co.jp

「ツナグ 想い人の心得」は前作「ツナグ」から7年後が舞台となっています。

当時高校2年生だった主人公・渋谷歩美は社会人2年目の24歳。

おもちゃメーカーの企画担当として、真面目に働く大人になりました。

そして、前作で歩美に『使者(ツナグ)』の能力を引き渡した祖母は亡くなっています。

また、何かと歩美や祖母を気にかけていた秋山家の当主である大伯父も亡くなり、代替わりするという大きな変化もありました。

前作から9年ぶりの新作ですが、小説の物語の中でも7年の時が経ちました。

その時間の経過によるいろいろな変化が愛おしくもなり、少し寂しくもなるような話だったと、全体を通して思いました。

前作「ツナグ」との大きな違い

「ツナグ 想い人の心得」と前作「ツナグ」の大きな違いは、すべてのお話を通して歩美の語りが登場するところだと思います。

前作では最後の編でしか歩美の内情は分かりませんでしたが、今回はそれぞれの依頼と並行して歩美の感情が描かれるようになりました。

それによりミステリー要素は薄まりましたが、その分歩美の感情がより鮮明になり、歩美の成長も感じやすくなりました。

また『ツナグ』の仕事だけでなく、会社員としての仕事の描写も書いてあるというのも大きなポイントです。

さらに、さわやかな恋愛の描写もあり、そんな部分にも歩美の成長を感じずにはいられませんでした。

そして、やはりこの「ツナグ 想い人の心得」では、前作「ツナグ」から歩美が大人になってしまったという感慨深さが大きかったです。

わたしは今回「ツナグ」・「ツナグ 想い人の心得」を続けて読んだので、特にそう感じました。

「ツナグ」を読むのは2度目だったのですが、数年前に読んだときよりもより深く胸に刺さるようになりました。

わたしも多少は成長しているようです。

「ツナグ 想い人の心得」各編のあらすじ

「ツナグ 想い人の心得」の各編のあらすじをご紹介します。

プロポーズの心得

若手の売り出し中の俳優が、好きな人のために『ツナグ』に依頼するというところから物語がスタート。

しかし、前作「ツナグ」を読んでいる方にはビックリするような展開に。

おそらく戸惑うと思いますが、この「ツナグ 想い人の心得」の主人公はちゃんと渋谷歩美なのでご安心ください。

また前作「ツナグ」に登場した嵐美砂が再登場し、「ツナグ」の続編なのだと読んでいてひしひしと感じました。

正直、美砂の未来は心配だったので、なんとか元気そうで良かったなと思えました。

歴史探究の心得

歴史上の人物に会いたい、という元・高校教師の依頼です。

死者と会えるというシステムですが、身近な人物ではなく歴史上の人物に会うというのがタイムトラベルものの発想で歴史ロマンを感じました。

ちなみに、この話で依頼者が会いたいと願った『上川岳満』という武将は架空の人物。

普通に実在していそうだったので読後に調べてビックリしました。

その邂逅の結末も含めて、とても清々しい話でした。

母の心得

亡くなった娘に会いたい、という依頼をした2人の母親のお話です。

もう上の短い説明だけで、辛いです。

『ツナグ』は亡くなった人と生きている人を再開させる仕事です。

しかし、それ以前に生きている人が会いたと願う相手はすでに亡くなっている。

そのことを痛感させられるような辛いエピソードでした。

亡くなった状況や、亡くなった娘の年齢などの違いはありますが、どちらも娘を思う気持ちに変わりはない。

そしてこれまでになかった依頼者同士の出会いによる化学反応とも言うべき力を感じました。

一人娘の心得

「ツナグ」というシリーズの中で異色とも言えるお話です。

『ツナグ』としての歩美ではなく、普通の会社員としての歩美の葛藤が描かれています。

『ツナグ』という存在にこんな描き方があるのか、そう思わせるエピソードでした。

想い人の心得

50年近く会いたいと願いながらも、死者から断られ続けた依頼人のお話です。

(ややネタバレですが)依頼人が死者との再会を望んだ理由が感動的で、また時の流れの残酷さも感じずにはいられませんでした。

そして、歩美の未来へと続くエピソードとともに「ツナグ 想い人の心得」は終わります。

終わり方からして、まだまだ続編がありそうだなと期待してしまいます。

(まだ未定ですが)次の作品ではどんな『ツナグ』での再会が読めるのか、今から楽しみになってしまう1冊でした。

次に読むまでにはわたしももっと成長していたいと思います!

※参考 ブックバング 辻村深月×松坂桃李対談

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