辻村深月さんの小説「ハケンアニメ!」の感想です。
プロデューサーや監督、アニメーターとして、アニメ業界で働く女性3人を描いたお仕事小説です。
『覇権』を獲るために奮闘する、彼女たちとその相棒の姿を描いています。
映画化、続編も刊行の大人気作です。
- 作者:辻村深月
- 対象:小学校高学年から
- エログロ描写なし
- 2014年8月にマガジンハウスより刊行
- 2017年9月に文庫化
- 続編「レジェンドアニメ!」が2022年3月に刊行
- 2022年5月に実写映画化
「ハケンアニメ!」について
「ハケンアニメ!」は辻村深月さんの小説です。
ジャンルは職業もの、『アニメーション業界』を描いた小説となります。
わたしはこの「ハケンアニメ!」を刊行当時に読み、また今回続編が刊行されたので読み返してみました。
2014年と現在(2022~2023年)では、アニメ界で取り巻く状況は大きく変化。
その変化を楽しめる作品にもなっています。
まずは、そんな「ハケンアニメ!」のあらすじを掲載します。
監督が消えた!?
ハケンアニメ!―Amazon.co.jp
伝説の天才アニメ監督・王子千晴が、9年ぶりに挑む『運命戦線リデルライト』。プロデューサーの有科香屋子が渾身の願いを込めて口説いた作品だ。同じクールには、期待の新人監督・斎藤瞳と次々にヒットを飛ばすプロデューサー・行城理が組む『サウンドバック 奏の石』もオンエアされる。ハケンをとるのは、はたしてどっち? そこに絡むのはネットで話題のアニメーター・並澤和奈、聖地巡礼で観光の活性化を期待する公務員・宗森周平……。ふたつの番組を巡り、誰かの熱意が、各人の思惑が、次から次へと謎を呼び新たな事件を起こす! 熱血お仕事小説。
「ハケンアニメ!」の主人公は、アニメ業界で働く3人の女性たち。
プロデューサー・監督・アニメーターとそれぞれ仕事は違いますが、全員アニメへの愛に溢れ、もがき葛藤しながらも良い作品を作り上げるために奮闘します。
わたし自身、週に20本以上のアニメを観る人間なので、アニメへの愛は強いと自負します。
そんな愛を仕事にした女性たちを、温かく愛情いっぱいに描き切っているのも、この「ハケンアニメ!」の特徴です。
続編「レジェンドアニメ!」
「ハケンアニメ!」は2022年3月に続編「レジェンドアニメ!」が刊行されています。
わたしはまだ読んでいません。
このページを書き終えたら読みます。
「レジェンドアニメ!」を無事読破しました!
「ハケンアニメ!」のスピンオフ続編「レジェンドアニメ!」の感想はこちら
2022年には実写映画が公開
「ハケンアニメ!」は2022年5月に実写映画化されています。
ハケンアニメ!
↑AmazonPrimevideoにてチェックできます。
主演は吉岡里帆さん、共演に中村倫也さん、柄本佑さん、小野町子さんなど。
大々的に宣伝し、公開していたので覚えている方も多いのではないでしょうか?
映画では劇中アニメを実際に制作するなど、非常に力を入れた作品になっています。
タイトル「ハケンアニメ」とは
この小説のタイトルでもある「ハケンアニメ」とは、一定期間で最も売れた作品を表す言葉です。
漢字では『覇権アニメ』。
小説内で何度も触れられていますが、同時期に放送されたアニメのうち、DVDやBlu-rayを最も売り上げた作品となります。
※二次元の情報を網羅したピクシブ百科事典によると
覇権アニメとはクール及び1年間の売り上げ1位のアニメに対する呼称。
ピクシブ百科事典
とのことでした。
実際、アニメが好きな方たちの間では「今期の『ハケン』は○○だった」などといった会話が交わされます。
また、小説内では『派遣』されたスタッフたちで作られるアニメ、といった意味も提示。
アニメ業界のあまり良いとは言えない労働環境についても触れていて、いつも娯楽として楽しんでいるアニメについて考えるきっかけとなった気がします。
「ハケンアニメ!」感想・あらすじ
「ハケンアニメ!」の各章ごとの感想・あらすじです。
第一章 王子と猛獣使い
プロデューサーの有科香屋子(ありしなかやこ)が主人公。
ストーリーは、香屋子が担当する監督・王子千晴の失踪から始まります
9年前の初監督作で絶賛されたものの、それから監督作を1本も作り上げていない王子。
そんな王子を口説き落とし、新作の制作に漕ぎ着けた香屋子。
その情熱は香屋子が王子の作品に魅了された1人だったからに他なりません。
しかし、制作発表まで時間がない中での監督の失踪は、責任を取る立場であるプロデューサーの香屋子にとって痛恨の事態でした。
王子はどこへ行ってしまったのか、アニメは間に合うのか。
アニメが放送されるまでの制作現場を描いた話となっています。
この話を読んで、プロデューサーってなんて大変なんだ・・・、と思わずにいられませんでした。
第二章 女王様と風見鶏
監督の齋藤瞳(さいとうひとみ)が主人公。
初監督作を手がける瞳の奮闘を描いたお話です。
第一章では、監督である『王子』を『猛獣使い』であるプロデューサーの視点から描いていました。
しかし、第二章は、『女王様』である監督の視点からプロデューサーの『風見鶏』を見る、逆の視点で描かれます。
20代半ばで自分よりも年上でキャリアも長いスタッフたちを従える彼女はまさに『女王様』。
けれども、悩みも苦しみも人一倍感じやすい、弱々しい女王様でもありました。
声優との関係、他のスタッフとの関係、そしてプロデューサー・行城との関係で悩みつつ、それでも作品を生み出し続ける瞳のバイタリティは読んでいてスカッとしました。
主にアニメの放送前から放送中が描かれています。
第三章 軍隊アリと公務員
アニメーターの並澤和奈(なみさわかずな)が主人公。
アニメ原画スタジオのアニメーターとして活躍する和奈は、アニメ好きが高じてアニメーターになった生粋のアニメオタク。
第二章で登場する神原画を描いた張本人でもあります。
普通のアニメーターだったはずの和奈ですが、ある日、原画スタジオがある選永(えなが)市から、聖地巡礼のサポートを要請されます。
最初はいやいや協力していた和奈ですが、市役所の職員・宗森の熱意に次第にほだされるように。
そんなアニメの聖地巡礼や、聖地巡礼を利用したまちおこしについて描いたお話です。
また、普段からアニメを観る人たちと、アニメを観ない人たち、そんな両者の化学反応的な関係にも注目です。
アニメの放送中から放送後までを描いています。
最終章 この世はサーカス
第一章から第三章の後日談となります。
『覇権』を取ったのはどのアニメなのか?
気になる結末と、3人の主人公のその後が描かれます。
アニメが好きな方にも、特に興味がない方にもオススメできる小説です。
しかし、やはりアニメが好きな方にこそ読んで欲しい1冊でしょう!
読んでいてアニメ作りってとにかく大変なんだな・・・、と頭が下がる思いでした。
3人の主人公に共通しているのは『アニメが好き』という思い。
好きなものをとことん貫ける、その素晴らしさを再確認できる小説だったかなと思います。
ここまで辻村深月さんの小説「ハケンアニメ!」の感想でした。