「ABC殺人事件」アガサ・クリスティー 名探偵ポワロが予告殺人に挑む傑作ミステリー

ABC殺人事件 イメージ 小説

アガサ・クリスティー作の傑作ミステリー小説「ABC殺人事件」の感想です。

ミステリーの女王が生み出した傑作中の傑作なので、もはやわたしなんかが語る必要はありませんがクリスティー好きとして駄文を書き連ねてみようと思いました。

イギリス全土を巻き込む予告殺人に名探偵エルキュール・ポワロが挑みます。

「ABC殺人事件」基本情報
  • 作者:アガサ・クリスティー
  • 訳者:深町眞理子
  • 名探偵ポワロシリーズ11作目
  • 1936年にイギリスで刊行
  • 2003年11月に創元推理文庫から新訳版が刊行

「ABC殺人事件」あらすじ

「ABC殺人事件」はアガサ・クリスティーが手がけた長編ミステリー小説です。

初めて同書が世に出たのは1936年。

アガサ・クリスティーが生み出した名探偵エルキュール・ポワロが活躍するシリーズとしては11作目にあたります。

クリスティー作品としても、ポワロ作品としても有名なこの「ABC殺人事件」。

まずは「ABC殺人事件」のあらすじを掲載します。

名探偵エルキュール・ポワロの許に、ABCと名乗る奇妙な犯人から殺人を予告する挑戦状が届けられる。やがてその予告どおり、頭文字にAのつく人物がAのつく場所で、つづいてBのつく人物がBのつく場所で殺害される。いずれの場合にも、被害者の傍らには「ABC鉄道案内」が置いてあった!はたして犯人の目的は何なのか?そして、その正体は!?クリスティ中期の代表作。

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80年以上前にイギリスで出版されたミステリー小説、というと読み慣れていない方にとってはとっつきにくいかもしれません。

しかし、近年クリスティー作品は新訳版が次々と刊行され、非常に読みやすくなっています。

この「ABC殺人事件」も2003年に新訳版が登場しました。

また、アガサ・クリスティーの作品は登場人物の関係やトリックが比較的分かりやすいので、ミステリーが苦手な方でも読みやすいと思います。

そんな理由からアガサ・クリスティーの「ABC殺人事件」は

  • ミステリー初心者
  • 海外作品初心者
  • クリスティー初心者

の方にとてもオススメできる作品です。

予告殺人にポワロが挑む

「ABC殺人事件」はポワロのもとに「ABC」を名乗る人物から殺人を予告する挑戦状が届くところから始まります。

最初の挑戦状では半信半疑だったポワロと周囲の人々。

しかし事件は実際に起こります。

そして、その1カ月後にも同じように挑戦状が届き、殺人が実行されてしまいます。

第一の事件の被害者はアンドーヴァーのアリス・アッシャーというたばこ屋の女性。

第二の事件の被害者はベクスヒルのベティー・バーナードというカフェの売り子でした。

この2人に共通点はまったくありませんでした。

けれども現場に「ABC鉄道案内」の冊子が置かれており、頭文字がAの人間がAで始まる町で、同じく頭文字がBでは始まる人間がBで始まる町で殺されたことから連続殺人と確信します。

続くCの被害者を食い止めようとするものの、手紙の遅延により打つ手がなく殺害されるCの被害者。

次のDの被害者を守るため、ポワロはこれまでのABCの被害者の関係者とともに隊を組み備えるのですが・・・。

というのが「ABC殺人事件」の中盤までのあらすじです。

他のミステリー作品と同じように、名探偵ポワロは普通、事件が起きてから行動を開始します。

しかし、この「ABC殺人事件」では、事件が起きる前に犯人から予告殺人の挑戦状が届き、ポワロは無理やり事件の舞台に上げられることに。

劇場型殺人の元祖とも言われるハラハラの展開は、時代を国をも超えていますが面白いです。

また「ABC殺人事件」は途中、事件関係者の挿話が入ります。

この挿話が物語にどう響いていくのか、またこの挿話で描かれる人物が事件とどう関係しているのか。

そのミスリードを楽しむのも、この「ABC殺人事件」の醍醐味でしょう。

読む前の注意点

この「ABC殺人事件」が刊行されたのは1936年。

初掲載は1935年になります。

したがって、この「ABC殺人事件」に何度か登場する『先の大戦』は第一次世界大戦となります。

わたしたち現代人の感覚だと、大戦=第二次世界大戦ですが「ABC殺人事件」が書かれたのはまだ第二次大戦前。

ちなみに、6月21日が金曜日であるという記述から、この「ABC殺人事件」が起こったのは1935年と推測できます。

日本だと昭和10年に当たる年です。

ここまで細かく知る必要はありませんが、1930年代のイギリスということを念頭に置いて読めば、より理解は深まるでしょう。

<ネタバレあり>「ABC殺人事件」のミスリード

※ここからは「ABC殺人事件」のネタバレを掲載しています。
事件の犯人の名前は書きませんが、展開に言及していますのでご注意ください。

「ABC殺人事件」の思い出

わたしが「ABC殺人事件」を読むのは2度目でした。

しかし、1度目は中学生の頃で、10年も経つとすっかり内容を忘れていました。

イニシャルがABCの人間が順に殺されていく、くらいの知識しか覚えてなかったくらいです。

そのため、2度目の「ABC殺人事件」はほぼ初見として楽しめました。

そして、まんまと作者であるアガサ・クリスティーにしてやられたと思いました。

そもそもミステリーの女王と張り合っているのが間違いだとは百も承知です。

しかし、こうもあっさりだまされるとはミステリー好きの端くれとして悔しかったです。

ミスリードにだまされる

アガサ・クリスティーはとても親切なミステリー作家です。

ストーリーの中には丁寧に伏線が張られていて、文章の中にはいくつものヒントが隠されています。

そのため、読者でもその気になれば犯人を当てることができます。

これはわたしの勝手な持論ですが、こんなにも親切に事件のキーワードを提示してくれる作家はアガサ・クリスティーくらいです。

なので最後まで読むと「こんなにも犯人のヒントがあったなんて!」といつも歯がゆい気持ちになります。

もちろん、この「ABC殺人事件」でも物語の至る所に伏線がありました。

けれども、途中に挟まれるある人物の話が読者の目を眩ませます。

その人物とはアレグザンダー・ボナパート・カスト。

英語で表記するとAlexander Bonaparte Cust。

アルファベットA・B・Cのイニシャルを持つ、まさにこの「ABC殺人事件」の犯人にふさわしい名前です。

このカストという人物は「ABC殺人事件」の冒頭から登場し、どんどん犯人らしい雰囲気を出してきます。

「もうこの人が犯人なのだろう」と思ったら、もうだまされています。

カストは犯人じゃないからです。

わたしの推理

ちなみに、少々ひねくれたわたしは読みながら

  • A・B・Cの犯人はそれぞれ被害者が死んで得をする別の人物
  • 犯人たちは裏で繋がっており、1人の指示役に従い殺害が行われた

という推理を立てていました。

この「1人の指示役」がアレグザンダー・ボナパート・カストというわけです。

当然ですがこの推理は間違っています。

A・B・Cの犯人はすべて同一の人物で、単独犯でした。

「ABC殺人事件」はアレグザンダー・ボナパート・カストという人物が最初に犯人として提示されておきながら、このカストをどう追い詰めるかに焦点を当てた話だと思っていました。

けれども、実際には他のポワロ作品と同様、犯人当てに焦点を当てたミステリーです。

そのミスリードにだまされ、犯人捜しを疎かにしていると足下を掬われます。

少なくともわたしは掬われました。

すっかりだまされたと思いつつ、ミステリーにだまされるのは悪い気はしません。

アガサ・クリスティーの作品の中でも傑作と名高い「ABC殺人事件」。

これから読むなら、ぜひ「犯人は誰か」と推理しながら楽しんでみてください。

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