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「美しき愚かものたちのタブロー」原田マハ 日本のためアートを守り抜いた人間たちのドラマ

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原田マハさんの小説「美しき愚かものたちのタブロー」の感想です。

史実を元にしたストーリーですが、あまりにもドラマティックで壮大な歴史ドラマでした。

「日本に本格的な美術館を作りたい」

その熱い思いから作り上げられた『松方コレクション』を守るため、世界を相手に戦い抜いた人たちの粉糖を描いています。

450ページ弱、大ボリュームの長編小説です。

「美しき愚かものたちのタブロー」基本情報
  • 作者:原田マハ
  • 対象:中学生~
    • エログロ描写なし
  • 2019年5月に文藝春秋より刊行

「美しき愚かものたちのタブロー」あらすじ

「美しき愚かものたちのタブロー」は原田マハさんが2019年に発表した小説です。

原田マハさんらしいアート小説ですが、今回の主役はアートそのものではなくアートを守った人たちとなっています。

史実を元にしたフィクションとのことですが、これが本当にあったことなのだと思うとただただ驚きです。

スケールが大きく、重厚な歴史ドラマとしても楽しめます。

もちろん、原田マハさんの小説なので非常に読みやすかったです。

そんな「美しき愚かものたちのタブロー」のあらすじを一部掲載します。

日本に美術館を創りたい。
ただ、その夢ひとつのために生涯を懸けた不世出の実業家・松方幸次郎。
戦時下のフランスで絵画コレクションを守り抜いた孤独な飛行機乗り・日置釭三郎。
そして、敗戦国・日本にアートとプライドを取り戻した男たち――。
奇跡が積み重なった、国立西洋美術館の誕生秘話。
原田マハにしか書けない日本と西洋アートの巡りあいの物語!

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「タブロー」とは

小説「美しき愚かものたちのタブロー」のタイトルにもある『タブロー(tableau)』とはフランス語で板絵・キャンバス画という意味の言葉です。

また、タブローには完成した絵画という意味もあり、デッサンと対になる言葉とのこと(諸説あります)。

この「美しき愚かものたちのタブロー」は、タブローに魅せられた人たちの奮闘が描かれた小説です。

史実を元にしたフィクション

「美しき愚かものたちのタブロー」はフィクションですが、物語の下敷きとなる史実が存在します。

史実がある、ということは当然、登場人物も実在しています。

「美しき愚かものたちのタブロー」では、登場人物のほとんどが実在の人物そのままの名前で登場します。

わたしは歴史に疎いのでほどんど登場人物のことを知りませんでしたが、詳しい方なら「おお!」と思うかもしれません。

主な登場人物

「美しき愚かものたちのタブロー」の主な登場人物をまとめてみました。

田代雄一:美術史家・美術評論家。「松方コレクション」のアドバイザーとして活躍。
モデルは美術史家・美術評論家の矢代幸雄と思われます。

松方幸次郎:実業家・政治家。「松方コレクション」の生みの親。

日置釭三郎(ひおきこうざぶろう):元日本帝国海軍大尉。松方の命令を受け、フランスに滞在。

成瀬正一:田代と同じ大学出身で、松方のアドバイザーとして協力。

上記4人のうち田代雄一以外は実在の人物で、名前もそのまま使われています。

またその他にも元総理大臣の吉田茂、フランスの画家クロード・モネなどが登場。

知っている名前があったので、ストーリーにグッと引き込まれました。

大まかな構成まとめ

「美しき愚かものたちのタブロー」では、歴史の教科書ではほとんど勉強しない1910~1950年代の歴史が描かれます。

しかし、有名な政治・経済の歴史の裏に美術界ではこんな歴史があったのか!と知ることができました。

ただこの「美しき愚かものたちのタブロー」は、時系列が激しく前後するので少し内容が理解しにくいところもありました。

そこで、簡単に物語全体の構成をまとめてみたので、読むときの参考にしてください。

  1. 1953年:田代、松方コレクション返還のためフランスへ
  2. 1921年:田代が初めてパリを訪れる
  3. 1866年~:松方幸次郎の半生
  4. 1921年:田代のパリでの思い出
  5. 1953年:田代と日置が再会
  6. 1921年:日置の回想
  7. 1959年:国立西洋美術館完成

構成をまとめましたが、この構成はあくまでおおまかなもの。

この構成それぞれの中でも思い出などで時系列が大きく動きます。

最初はその時代の変化に振り回されがちでしたが、重要なストーリーは小説中で何度か登場しだんだんと物語全体の骨組みが見えてきました。

登場人物も多めなので慣れるまで時間はかかりますが、読み進めれば慣れると思います。

「松方コレクション」について

ここからは「美しき愚かものたちのタブロー」の核とも言える松方コレクションについて簡単に説明します。

生みの親・松方幸次郎とは

「美しき愚かものたちのタブロー」に登場する松方幸次郎は実在の人物です。

松方幸次郎は日本の実業家で、松方コレクションの生みの親でもありました。

その半生は「美しき愚かものたちのタブロー」に詳しく載っているので割愛します。

※小説の松方幸次郎に関するエピソードはほぼ史実通りのようです。

ただ、Wikipediaや国立西洋美術館HPでそのお姿が確認できるのですが、とてもハンサムな方です。

この偉大な松方幸次郎が私財を投じて築き上げたのが松方コレクションでした。

コレクションを作った目的が「日本に本格的な美術館を作るため」というのは感服しかありません。

また、生き方すべてが豪快すぎて「こんな人物が本当にいたなんて・・・」と、読み進めるごとにビックリし続けました。

そんな松方幸次郎の美術館設立の悲願が達成されたのか否か。

その結末は「美しき愚かものたちのタブロー」にて確かめてください。

国立西洋美術館と松方コレクション

松方幸次郎が人生をかけ収集した松方コレクションの美術品の多くは、現在、東京・国立西洋美術館に収蔵されています。

「ぜひ松方コレクションをこの目で!」と思ったのですが、実は国立西洋美術館は現在休館中でした。

館内施設の整備のため2022年春まで休館とのこと。残念です。

<ややネタバレ>「睡蓮、柳の反映」の行方

「美しき愚かものたちのタブロー」で、田代雄一の思い入れが特に強く、また小説の最後までその行方が分からなかった作品が「睡蓮、柳の反映」でした。

クロード・モネの代表作「睡蓮」の連作の1つで、松方幸次郎が生前、モネから直接購入した作品です。

この「睡蓮、柳の反映」は第2次世界大戦により長年行方が分からない状態でした。

しかし、2016年にルーブル美術館で発見!

2018年には所有者・松方幸次郎の遺族である松方家から国立西洋美術館に寄贈。

現在は同美術館に収蔵されています。

モネの「睡蓮」はとても有名で、アートに詳しくないわたしでも知ってるくらいの大作です。

そんな「睡蓮」のうち多くの作品が日本にあるなんて、今回調べるまでまったく知りませんでした!

機会があったらぜひ国立西洋美術館でタブローを拝見したいです。

「美しき愚かものたちのタブロー」は、フランス政府によって接収された松方コレクションの返還を求めて田代雄一がパリへ向かった場面からスタート。

小説では史実通りの結末を迎えます。

よって、この松方コレクションが辿った運命については小説「美しき愚かものたちのタブロー」にてご確認ください

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