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「総理の夫」原田マハ ファースト・ジェントルマンの奮闘と夫婦愛

総理の夫 原田マハ イメージ 日の丸と演説台 小説

原田マハさんの小説「総理の夫」の感想です。

舞台は、初めて女性の総理大臣が誕生した日本。

総理となった妻を支える夫の奮闘を描く、痛快ストーリーです。

政治に詳しくなくても全然OK!面白く政治を勉強するのにもピッタリな小説でした。

「総理の夫」基本情報
  • 作者:原田マハ
  • 対象:中学生~
    • エログロ描写なし
  • 2013年7月に実業之日本社より刊行
    • 2016年12月に文庫化
    • 2020年11月に文庫版・新版が刊行
    • 2021年8月に愛蔵版が登場
  • 2021年に実写映画化

「総理の夫」について

「総理の夫」は原田マハさんの小説です。

2021年に映画化され、話題になりましたね。

「総理の夫」は、このタイトル通り『総理の夫』、ファースト・ジェントルマンとなった男性が主人公のストーリー。

まずは、そんな「総理の夫」のあらすじを掲載します。

20××年、相馬凛子(そうま・りんこ)は42歳の若さで第111代総理大臣に選出された。
鳥類学者の夫・日和(ひより)は、「ファースト・ジェントルマン」として妻を支えることを決意。
妻の奮闘の日々を、後世に遺すべく日記に綴る。税制、原発、社会福祉。混迷の状況下、相馬内閣は高く支持されるが、陰謀を企てる者が現れ……。凛子の理想は実現するのか!? 痛快&感動の政界エンターテインメント!

総理の夫―Amazon.co.jp

主人公は、総理の夫にして、超がつくほどお金持ちの家に生まれた鳥類学者・相馬日和。

小説は、そんな日和の妻で政治家の凛子が総理大臣になるところから始まります。

日本初、現実では未だ実現していない女性の総理大臣が誕生し、同時に日和は日本で初めての『総理の夫』となります。

この「総理の夫」は、そんな総理の夫となった日和が書き残した日記、という形式で進む小説です。

日和の主観が書かれた日記なので文体は親しみやすく、ちょっと難しい政治用語も詳しく解説してあるので、政治に疎いわたしでも十分に理解して読み進められました。

そんな「総理の夫」が映画化された際の原田マハさんのお言葉も掲載してみます。

「なぜ日本の総理は当たり前のように男性なのか?それをフィクションで覆してみたかった。
凜子は私の理想そのもので、彼女を支える夫・日和は何があっても妻を信じ、陰ながら守り抜く。
本作は政界を舞台にした、信じ合い支え合う夫婦愛の物語である。
日和役の田中圭さんはお茶目でまっすぐな役柄にぴったり。凛子役の中谷美紀さんは書きながらイメージしていたのでとても嬉しい。このカップルが日本を変える、封切りの日が待ち遠しい。」
――原田マハ(映画化決定にあたって)

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↑のお言葉になるように「総理の夫」は政治がテーマの小説であり、また何より『夫婦愛』がテーマの小説でもありました。

日本という大きな共同体とともに、家族という小さな共同体を描く。

この描き方は、ある意味で原田マハさんが女性だからこそできたものだと思います。

愛蔵版も登場

「総理の夫」は2021年にハードカバーとして愛蔵版も刊行されています。

愛蔵版の装丁は、おそらく日和が付けていた日記がモチーフになっています。

そのため『日和が後世の人に向けて残した日記』を読んでいる気分により浸れるのも魅力でした。

また、この愛蔵版にはみづき水脈さんによる挿絵・書き下ろし漫画も掲載されています。

挿絵は小説の雰囲気によく合っていて、とても良かったです。

2021年に映画化

小説「総理の夫」は2021年9月に実写映画が公開されています。


総理の夫

主演は田中圭さんと中谷美紀さん。

共演は貫地谷しほりさん、工藤阿須加さん、松井愛莉さん、岸部一徳さんなど、豪華キャストです。

「総理の夫」感想・あらすじ

「総理の夫」の感想・あらすじです。

近未来SF×政治

「総理の夫」は『もしも日本で初めて、女性の総理大臣が誕生したら』という世界を描いた小説です。

日本で未だ実現していない『未来』を描いているため、どこか近未来SF風のストーリーともなっています。

ただ、この「総理の夫」が刊行されたのは2013年。

連載は2011年から始まっています。

そのため、東日本大震災や震災に伴う原発事故などは言及される一方、当然、現在進行形の問題である新型コロナウイルスの猛威は描かれていません。

そのため、もしこの「総理の夫」が2023年に書かれたら、また違ったストーリーとなっていたのではと想像します。

「総理の夫」の10年後を描いた続編が是非とも読みたいと感じました。

政治に疎くても大丈夫

「総理の夫」は政治の世界ががっつり描かれたストーリーです。

政治の小説なんて難しそう・・・。

と思っている方、安心してください!

政治が全然分からなくても、すらすら読めます。難しくありません、全く。

日和の妻・凛子は総理大臣に任命された後、野党と戦いながら自らの政策を推進していきます。

国会だけでなく会議や外交など休む暇はありません。

また、帰宅後もひたすら仕事詰め。

就寝は深夜2時過ぎが当たり前の生活。

怠け者のわたしが読んでいてゾッとするほど多忙な総理の生活に圧倒されました。

また、そんな凛子を陰で支え続ける秘書や広報たちの奮闘も読んでいてグッタリするほど大変そうでした。

政治家というのは、たくさんの人の働きがあって表に立っているのだと思わされます。

そして、物語の中盤から描かれる『政敵』との戦いも面白かったです。

腹黒い大物政治家との戦いは、政治ものの定番。

凛子の信念をかけた戦いの行方はぜひとも読んでほしい部分です。

総理の『おめでたい』夫

女性初の総理大臣を描く「総理の夫」ですが、この小説の主人公はあくまで『総理の夫』。

総理の夫、ファースト・ジェントルマンとなった日和の、妻・凛子との共闘を描いた作品でもあります。

しかし、この日和、小説内で何度も言われている通り、うかつというか非常に『おめでたい』人物でもあります。

日和は『総理の夫』としての自覚がない故に、情けないトラブルに巻き込まれ、窮地に。

その時点まで『総理の夫』としての自覚が薄かったのは日和の落ち度ではありますが、だからこそこの「総理の夫」が面白くなっている、とも言えます。

基本、妻と鳥にしか興味がないお坊ちゃま。

世間知らずでもあり、浮世離れしまくった、フワフワのほほんとした人物です。

しかし、日和は人生において苦労が少なかった分、誰も恨むことなく、ただただ健全に、まっすぐ生きてきただけでもあります。

基本的にとても良い人ではあるので、勘が鈍く若干イライラすることはあれど、嫌いになる人物ではありませんでした。

また、凛子を思うひたむきな思いには憧れます。

頼りがいはほぼ皆無ですが、側で支える存在としては魅力的。

いろんなジャンルの小説を読んでいますが、こういった男性像はまだ珍しいかと思います。

その新しい男性像を描く、という意味でも面白い小説でした。

総理となった妻と夫の夫婦愛

「総理の夫」は夫婦愛の物語です。

政治家の妻と鳥類学者の夫。

互いを尊敬し、尊重し合っていた理想の夫婦関係でした。

けれども、妻が総理大臣となったことで、その関係が変化していきます。

住み慣れた我が家を離れ、首相官邸への引っ越しを余儀なくされる日和。

職場への通勤は車で送迎、どこへ行くにもボディーガード付き、散歩すら自由にできない状況になりました。

多忙が極まる妻とは会話すらまともにできず、徐々にすれ違いが生まれていきます。

妻が総理大臣、だからではなく、どこの家庭にも起こりうる問題ですよね。

そんな中で日和は重大な過ちを犯し、窮地に追い込まれます。

絶体絶命の状況でしたが、その危機がかえって日和を奮い立たせることに。

日和と凛子が1人と1人ではなく、2人で戦うことを決意するきっかけとなります。

そこからの戦いは、読んでいて胸が熱くなりました。

ただ、従来のように総理大臣が男性のストーリーであれば、夫婦の共闘を描いた作品には絶対にならなかったでしょう。

総理が女性、という設定だからこそ夫婦がクローズアップされる。

皮肉と言えば皮肉かもしれませんが、男性と違い、結婚している女性にとって夫の存在は切り離せないのも事実です。

その無意識的な男女の違いも感じました。

かといって、この「総理の夫」ではわざとそう描いているという部分もあります。

表に立つ妻、サポート役に徹する夫。

これまでの夫婦関係を逆転させたかのような関係を描くために必要だったのかもしれません。


「総理の夫」のおすすめポイントは数あれど、最大の魅力は日和の妻・凛子の人物像です。

まさに『理想の総理』とも言えるかっこよさ。

日和がゾッコンなのも無理はありません。

凛子の理想へ向けて邁進する強さを支える日和。

そんな糟糠の妻ならぬ『糟糠の夫』を描く、新たな夫婦の小説でもあります。

ここまで「総理の夫」の感想でした。

※実業之日本社HPには「総理の夫」初版刊行時に行われた原田マハさんへのインタビューが掲載されています。

原田マハ氏『総理の夫』インタビュー

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