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「ロマンシエ」原田マハ 舞台はパリ、美しい乙女系男子とリトグラフの出会い

パリ ポン・デザール ロマンシエ感想 コメディ
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芸術の都・パリで美青年が「リトグラフ」に出会い、成長していく物語。

物語の随所にはロマンティックな恋愛や憧れの人物との逃避行が描かれています。

・・・こう書くと、とても甘酸っぱい青春もののようですが、今回紹介する原田マハさんの小説「ロマンシエ」はコミカルな文体が特徴のラブコメです。

原田マハさんのアート小説としては珍しいコメディ系のストーリーは、誰にでもオススメできる良作でした!

「ロマンシエ」基本情報
  • 作者:原田マハ
  • 対象:小学校高学年~
    • エロ・グロ描写なし
  • 2015年11月に小学館より刊行
    • 2019年2月に文庫化

「ロマンシエ」あらすじ

「ロマンシエ」は原田マハさんが手がけたラブコメディ小説です。

アート小説ではあるものの、コミカルに進むストーリーとともに恋愛要素もふんだんに盛り込まれています。

そんな「ロマンシエ」のあらすじを掲載します。

アーティストを夢見る乙女な美・男子が、パリの街角で、ある小説家と出会った―。ラスト277ページから、切なさの魔法が炸裂する、『楽園のカンヴァス』著者の新たなる代表作! 

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「ロマンシエ」の主人公は美大に通う遠明寺美智之輔(おんみょうじ・みちのすけ)。

とても仰々しい名前の持ち主ですよね。ちなみに彼の父親は有名政治家だったりします。

そんな美智之輔は大学内のコンクールでグランプリを獲得し、パリ留学の切符を手にします。

それから2年、24歳になった美智之輔はバイト先のレストランで奇妙な女性と出会います。

女性との出会いをきっかけに、美智之輔の人生は大きな転機を迎えるのです。

主人公の人物像

「ロマンシエ」の主人公・美智之輔は心が乙女な美青年というキャラクターです。

女性をトリコにするルックスの持ち主ながら、恋愛対象は男性。

大学時代の同級生のイケメンに片想いをし続けながらも、その思いを打ち明けられないピュアな乙女です。

そんな美智之輔ですが、小説内でそのジェンダーははっきり定義されていません。

繊細なものなのできっちり定められるものではないのかもしれません。

しかし、小説の描写から美智之輔はトランスジェンダーではないかと思われます。

トランスジェンダー

自身で思っている性と身体の性が一致しない方を指す言葉。
美智之輔の場合は、身体は男性であるものの心は女性なためトランスジェンダーと思われます。

小説は乙女全開な美智之輔の一人称で展開します。

美智之輔の内面は明るくひょうきんで、うるさめのオバさんといった印象です。

けれども、他人に見せるのは普通の男性の顔。

心が女性だとバレないよう、自分を偽り男性のように振る舞い続けています。

読んでいて、明るい美智之輔にどことなく影を感じるのは彼の息苦しさを感じたからかもしれません。

美智之輔はフィクションの人間ですが、現実にも美智之輔のように自認する性が異なり自分を押し殺して生きている方がいるでしょう。

そんな現実の問題のことを考えさせる小説でもありました。

※原田マハさんはあるインタビューで

当時はかわいいモノが好きで、同性が恋愛対象のイケメンを主人公にすることしか決まっていませんでした。

小説丸ー原田マハ「ロマンシエ」

と話しているので、美智之輔=トランスジェンダーというのは早計だったかもしれません・・・。

幼い頃から本当の自分を隠してきた美智之輔が、初めて素をさらけ出せたのがパリという町でした。

物語の舞台・パリについて

「ロマンシエ」はパリが舞台の物語です。

フランス・パリと言えば、芸術の都。

行ったことこそありませんが「いつか行きたい!」と願う憧れの町です。

この「ロマンシエ」では、途中、観光スポットも登場しますが、描かれるほとんどは生活の中のパリの風景。

パリの片隅で暮らす美智之輔の目から見たパリはとても魅力的でした。

ちなみに、同作に登場するパリの有名観光スポット「ポン・デザール」はこんな感じです。

ポン・デザール 南京錠
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凄まじい数の南京錠ですね・・・。

いつか重みで橋が落ちるのでは、と心配になる数です。

タイトル「ロマンシエ」の意味とは?

この小説のタイトルである「ロマンシエ」。

その意味は、フランス語で『小説家』です。

わたしは意味を読後に調べて知ったのですが、ネタバレのようなタイトルだったのだなと感慨深い気持ちになりました。

「ロマンシエ」のもう1人の主人公とも言える人物は羽生光晴(はぶみはる)。

美智之輔が愛してやまないハードボイルド小説シリーズを手がける小説家です。

この美智之輔と羽生光晴の出会いも大きなうねりとなり、物語のクライマックスまで目が離せない展開となっていました。

余談ですが、羽生光晴の「暴れ鮫」シリーズはとても面白そうなので、余裕があったら原田さんにスピンオフとして書いていただきたいです。

「リトグラフ」とはどんなアート?

「ロマンシエ」の物語の核とも言えるのがリトグラフ

小説でもその技法について説明がありましたが、ほぼ初耳だったわたしはちんぷんかんぷんでした。

そこで、リトグラフについて少し調べてまとめてみました。

まずリトグラフ(lithograph)は版画の一種です。

石灰版や金属板に描いた絵を紙に刷る平版画となります。

19世紀の初め頃、たまたまヨーロッパで技法が確立し広まっていきました。

水と油の反発作用を利用して刷られ、版に描いた絵がそのまま転写できるのがリトグラフの最大の特徴です。

繊細な絵筆の動きまで転写できるので、パブロ・ピカソなど高名な画家たちからも愛されました。

わたしたちが学校の授業でやった、彫刻刀で木の板を削る木版画とは大きく違いますね。

文庫版はスペシャルな付録も!

小説「ロマンシエ」に登場したリトグラフ工房「idem」。

この「idem」は実在します

「ロマンシエ」の文庫版には、2015年に東京で開催されたリトグラフ工房「idem」とのコラボ展示会で発表された掌編が収録されています。

「掌編」とは

短編小説よりもさらに短い小説のこと。
星新一さんで知られる「ショートショート」よりも短い小説とされています。
ただ、明確な基準はないので、ただ単に「短編小説」というニュアンスで覚えておけばOKだと思います。

詳しくは↓

単行本刊行当時、小説『ロマンシエ』に登場したパリのリトグラフ工房「idem」とコラボした展覧会を東京ステーションギャラリーで開催しました。その際、展覧会の図録に寄せた掌編を文庫に特別再録。小説(フィクション)と展覧会(リアル)が交差した奇跡の展覧会開催までの舞台裏がわかる特別寄稿も掲載しています。これを読めば『ロマンシエ』の全てがわかるコンプリート版です!

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この掌編は文庫版にしか載っていないスペシャルな付録!

また、展示会に際して行われた原田マハさんのインタビュー記事は↓

小説を読んだ後にこのインタビュー記事を読むと、二重三重の驚きがあります・・・。

「ロマンシエ」の世界観をより深く感じたいという方は必見ですね。

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