「白鳥とコウモリ」東野圭吾 被告人の息子・被害者の娘が手を組み事件の真相に辿り着く傑作ミステリー

白鳥とコウモリ東野圭吾イメージ 小説
Hans BraxmeierによるPixabayからの画像

東野圭吾さんの小説「白鳥とコウモリ」の感想です。

30年以上前の事件を隠したくて殺害した、と告白した被告人。

その告白により人生を狂わされた息子と、父親を殺された娘、そして事件を捜査した刑事の3人が過去と現在、2つの事件の真相に迫ります。

ページをめくる手が止まらない、圧倒的に面白かったミステリー小説です。

「白鳥とコウモリ」基本情報
  • 作者:東野圭吾
  • 対象:中学生~
    • エログロ描写なし
  • 2021年4月に幻冬舎より刊行
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「白鳥とコウモリ」について

「白鳥とコウモリ」は東野圭吾さんのミステリー小説です。

東野圭吾さんにとって『作家生活35周年記念作品』となるこの「白鳥とコウモリ」。

新たなる最高傑作と大々的に宣伝されていますが、確かに最高傑作でした!

500ページ超えの大長編なのに一気に読める面白さ。

そんな「白鳥とコウモリ」のあらすじを掲載します。

幸せな日々は、もう手放さなければならない。

遺体で発見された善良な弁護士。
一人の男が殺害を自供し事件は解決――のはずだった。
「すべて、私がやりました。すべての事件の犯人は私です」
2017年東京、1984年愛知を繋ぐ、ある男の”告白”、その絶望――そして希望。
「罪と罰の問題はとても難しくて、簡単に答えを出せるものじゃない」

私たちは未知なる迷宮に引き込まれる――。

白鳥とコウモリ―Amazon.co.jp

「白鳥とコウモリ」において一番驚いたのは、100ページ手前で犯人が捕まり、事件が解決してしまうところです。

この「白鳥とコウモリ」は523ページの大長編。

小説全体のたった5分の1の時点で事件解決という、あまりのスピーディーさにまずビックリしました。

ただ、もちろんですが、その時点で物語が終わるわけがありません。

むしろ犯人の自供からこの「白鳥とコウモリ」のストーリーが始まります。

<ややネタバレあり>「白鳥とコウモリ」感想

「白鳥とコウモリ」の感想です。

ここからはややネタバレがあるので未読の方はご注意ください。

関係者3人それぞれの視点

「白鳥とコウモリ」は

  • 事件を捜査する刑事:五代
  • 被告人・倉木達郎の息子:和真
  • 被害者・白石健介の娘:美令

という3人の視点それぞれの視点から描かれていく小説です。

ある日突然父親を殺され『被害者の娘』となった美令。

父の自白により『殺人犯の息子』となった和真。

容疑者と目された倉木達郎が自らの犯行を告白したため、刑事である五代の仕事はそこで終わります。

刑事、被告人の息子、被害者の娘、という同じ事件の関係者でありつつ、まったく違う立場の3人。

しかし、3人とも事件に関して腑に落ちない点があるという共通点をもっていました。

モヤモヤを抱えつつも新たな事件に取りかかる五代。

一方、和真は日常生活すらままならなくなったものの、どうしても父親の犯行が信じられず、自力で事件を捜査し始めます。

また、美令も生前の父親の言動に対する違和感を払拭することができず、悶々とした日々を過ごしていました。

そんな『被告人の息子』と『被害者の娘』が偶然出会うことで、物語は大きく動きます。

30数年前と現在の事件

「白鳥とコウモリ」の舞台は2017年の東京。

そして、事件を捜査しているうちに浮かび上がってきた1984年の愛知の事件。

その事件とは、ある男性が殺され、容疑者として逮捕された男性が取り調べの末自殺した、というものでした。

1984年・愛知の事件も、2017年の東京の事件も、2つとも自分の犯行、と告白した倉木達郎。

愛知の事件で容疑者として自殺した男性の残された家族が心配だった。

東京にいることを知り、密かに会いに行き、図らずも仲を深めてしまった。

そのことを偶然出会った弁護士・白石健介に相談したところ、罪を打ち明けるべきと迫られ、今の幸せを壊したくなく白石を殺害した。

その告白は筋が通っていて、何の不都合もありません。

けれども何かがおかしい。

少しずつ不都合な事実が明かされるにつれ、2つの事件の関係はまったく違うものになっていきます。

異色のバディもの

『被告人の息子』である和真と『被害者の娘』である美令。

2人は、ともに父親の言動に納得できないというジレンマを抱えていました。

そんな互いの思いを知った2人は一緒に事件の真相を探るように。

父親が殺害された本当の理由を知りたい美令。

その一方、和真は徐々に父親が誰かを庇っているのではないかと考えるようになります。

本来なら敵のような関係でありながらもバディを組んだ2人は、本当に事件の真相に辿り着いてしまいます。

そして、ちょうど同じタイミングで五代も事件の真相を解き明かします。

達郎が庇っていたのは正直、とても意外な人物でした。

しかし、考えてみれば、動機も十分あり、そこまで意外でもないという微妙な塩梅です。

ただ納得はできるものの、やはりやるせなさが増しました。

善良な人たちによる罪

「白鳥とコウモリ」において殺人事件の被害者となった弁護士・白石健介は、誰に聞いても良い話しか出てこないくらい善良な人物でした。

弁護士としてはまさに正義の味方、家庭でも良き夫であり、良き父親でもある、といった人間性。

白石が殺害されたと知ると、誰もが悲しみその死を悼むほどの良い人です。

そして一方で、そんな白石を殺害したと告白した倉木達郎も悪い噂がない善良な人物でした。

良い人が良い人を殺害するという、それだけでも不可解な事件。

その不可解さに隠された本当の罪がやるせなく、どうしようもなく辛いので脱力しました。

タイトル「白鳥とコウモリ」の意味

タイトルである「白鳥とコウモリ」は

  • 白鳥=白石美令
  • コウモリ=倉木和真

がバディを組み、事件を解決していくことにかけたものだと思われます。(本文に言及するシーンがありました)

『被害者の娘』であり汚れのない白鳥である美令。

『被告人の息子』となり影を背負うこととなった和真。

名字の白石・倉木からしても対照的です。

ただ、どうして「白鳥とコウモリ」なのだろうと考えると、なかなか深く入り込んでしまいそうです。

白と黒と対照的にしたいなら『白鳥と黒鳥』にすれば良いのに、『黒鳥』ではなく『コウモリ』です。

白鳥とコウモリは色は白と黒で対になりますが、鳥である白鳥とは違い、コウモリは羽根があるものの哺乳類です。

そんな鳥のような哺乳類である、どっちつかずなコウモリを白鳥と対にさせるのは、最後まで読むと何となく腑に落ちました。

また名前つながりで、そもそもの事件の発端である1984年の愛知の事件の被害者の名前が『灰谷』であるのも何だか暗喩的です。

灰=グレーだよなあ・・・、と思わずにいられませんでした。


30年以上の時を超え、2つの事件がつながったときの興奮はやはりミステリーの醍醐味だと感じました。

ミステリーとしても最高でしたが、人間ドラマも堪能できる一冊です。

ここまで東野圭吾さんの小説「白鳥とコウモリ」の感想でした。

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