東野圭吾さんの小説「殺人現場は雲の上」の感想です。
エー子とビー子でABコンビと呼ばれるスチュワーデス2人が次々と事件に遭遇。
飛行機内や空港、ホテルなど身近な現場で起こる事件を2人は解決できるのか?
7つの連作短編からなる東野圭吾さん初期作のコメディミステリーです。
- 作者:東野圭吾
- 対象:小学校高学年~
- 性的な描写なし
- グロテスクな描写ややあり
- 1989年8月に実業之日本社より初版刊行
- 1992年8月に光文社より文庫化
- 2020年8月に新装版が登場
「殺人現場は雲の上」について
「殺人現場は雲の上」は東野圭吾さんの小説です。
国内線のでこぼこスチュワーデスコンビが次々と発生する事件に立ち向かうミステリーである本作。
東野圭吾さんの小説にしてはやや珍しい、前編コメディタッチのミステリーでした。
7つの連作短編から構成されていて、気軽に読み進められるのも魅力の1つ。
そんな「殺人現場は雲の上」のあらすじを掲載します。
「スッチーって知ってます」――?著者より
文字を大きくして読みやすくした新装版第3弾!
CAがスチュワーデスと呼ばれていた昭和を舞台に、凸凹コンビが活躍する!新日本航空スチュワーデスのABコンビといえば、早瀬英子ことエー子、藤真美子ことビー子の二人組。ルックスも性格も正反対の二人は社内でも有名な大の仲良し。しかし、二人がフライトで遭遇するのは奇妙な謎だった⁉
殺人現場は雲の上―Amazon.co.jp
ホテルで殺された乗客、シートに残された赤ちゃん、遺書の落とし物……。聡明なエー子とおっちょこちょいなビー子の二人が推理に挑む!
この「殺人現場は雲の上」は東野圭吾さんの初期作を読みやすい新装版として刊行している取り組みの第3弾。
新装版として再登場した他の作品は↓でも紹介しています。
新装版が登場している作品たちは、いずれも1980年代後半に書かれたもの。
現在(2022年)より30年以上前の日本が描かれています。
そのため、携帯電話がなかったり、インターネットが発達していなかったりと、読んでいて不思議な世界観になっているのが特徴です。
時間が経っただけで異世界みたいな印象を受けるのは、わたしがその時代を知らないためかもしれません。
特にこの「殺人現場は雲の上」が昔の小説なんだな、と思わせるのが主人公たちの職業が『スチュワーデス』と呼ばれているところ。
『スチュワーデス』が現在のキャビンアテンダント(CA)であることは一応分かります。
しかし、わたしが物心ついたときにはもうキャビンアテンダントはキャビンアテンダントでした。
掲載したあらすじにも
「スッチーって知ってます」――?著者より
と書かれていますが、わたしと同年代ではピンとこない方も多いでしょう。
けれども、ミステリーとしての面白さは変わりません!
殺人事件も起きますが、どれも凄惨な描写はなく、話も難しくないのでお子さんと一緒に読んでも問題ない1冊かもしれません。
「殺人現場は雲の上」感想・あらすじ
「殺人現場は雲の上」の感想・あらすじです。
思えば、タイトル「殺人現場は雲の上」のように、上空の飛行機の中(雲の上)で殺人事件が起こることはありませんでした。
ある意味、タイトル詐欺かもしれません。ちょっと面白いですね。
事件やトリックは、解決までに文中で手札がすべて提示されるので、読者もフェアに謎解きが楽しめるのも楽しいポイント。
小説の登場人物さながらに謎解きがしたい方にもうってつけかもしれません。
名探偵&ポンコツ助手の謎解き
「殺人現場は雲の上」は
- 有能で大人しい性格の早瀬英子・通称「エー子」
- おっちょこちょいで押しが強い藤真美子・通称「ビー子」
というABコンビのスチュワーデスが事件を解決していく、探偵ものミステリーと言えます。
ちなみにビー子の名前は『体型がビー玉のように丸く、エー子といつもいっしょにいること』が由来となっています。
ただ、事件を解決に導くのはすべてエー子のみ。
ビー子は突拍子もない行動や失敗をしでかしますが、なぜかそれが事件解決の糸口になるというキャラクター。
ある意味、探偵の助手的ポジションに収まっています。
事件に首を突っ込むことが好きで、物事を引っかき回しがちなビー子ですが、読んでいて全然憎めず、不快にならない謎の魅力があります。
ビー子の行動力により解決する事件もあるので、押しの強さも役に立つと言うことですね。
また、このABコンビの仲の良さも読んでいて気持ちが良かったです。
職業ミステリーとしても
「殺人現場は雲の上」はスチュワーデス、つまりキャビンアテンダントの目から見た職業ミステリーとしても面白い作品です。
スチュワーデスの業務や慣例、仕事終わりなど、わたしたち読者にはあまり縁がない世界をうかがい知れるのも魅力の1つでした。
また、スチュワーデスだからこそ気付ける事実、というのも多々あり、ミステリーとして新しさも感じました。
基本的にテンポ良く物語が進むので、スイスイ読み進められるのもポイントです。
怖い描写・気持ち悪い描写もないので、誰にでも勧めやすい小説でもあります。
ここまで東野圭吾さんの小説「殺人現場は雲の上」の感想でした。