「薔薇のなかの蛇」恩田陸 イギリスの館で起きた凄惨な殺人事件の真相とは?『理瀬』シリーズ最新作

黒薔薇 薔薇のなかの蛇イメージ 小説
Jiří RotreklによるPixabayからの画像

恩田陸さんの小説「薔薇のなかの蛇」の感想です。

イギリスの歴史ある館が舞台となった、『理瀬』シリーズ8作目であるこの「薔薇のなかの蛇」。

成長した理瀬が館を襲う殺人事件に巻き込まれていきます。

怪しく耽美な魅力が満載のゴシックミステリーです。

「薔薇のなかの蛇」基本情報
  • 作者:恩田陸
  • 対象:中学生~
    • 性的な描写なし
    • <注意>グロテスクな描写あり
  • 2021年5月に講談社より刊行
  • 『理瀬』シリーズ8作目(最新刊)
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「薔薇のなかの蛇」について

「薔薇のなかの蛇」は恩田陸さんの小説です。

ジャンルはゴシックミステリー。

イギリスにある貴族の館を舞台に、惨殺された死体の謎を巡る物語となっています。

まずは、そんな「薔薇のなかの蛇」のあらすじを掲載します。

変貌する少女。呪われた館の謎。
「理瀬」シリーズ、17年ぶりの最新長編!

英国へ留学中のリセ・ミズノは、友人のアリスから「ブラックローズハウス」と呼ばれる薔薇をかたどった館のパーティに招かれる。そこには国家の経済や政治に大きな影響力を持つ貴族・レミントン一家が住んでいた。美貌の長兄・アーサーや、闊達な次兄・ディヴらアリスの家族と交流を深めるリセ。折しもその近くでは、首と胴体が切断された遺体が見つかり「祭壇殺人事件」と名付けられた謎めいた事件が起きていた。このパーティで屋敷の主、オズワルドが一族に伝わる秘宝を披露するのでは、とまことしやかに招待客が囁く中、悲劇が訪れる。屋敷の敷地内で、真っ二つに切られた人間の死体が見つかったのだ。さながら、あの凄惨な事件をなぞらえたかのごとく。

可憐な「百合」から、妖美な「薔薇」へ。
正統派ゴシック・ミステリの到達点!

薔薇のなかの蛇―Amazon.co.jp

見るも無惨に切断された死体が発見されるシーンから幕を開ける「薔薇のなかの蛇」。

犯人はおろか切断された死体の身元さえ分かっていない中、死体発見現場からほど近い館で親族が中心のパーティーが開催されます。

会場は「ブラックローズハウス」という薔薇を模した5つ(1つ焼失し現在は4つ)の館。

その館の主の息子・アーサーがこの「薔薇のなかの蛇」の語り手です。

『理瀬』シリーズについて

あらすじの冒頭にも書かれていましたが「薔薇のなかの蛇」は、恩田陸さんが20年以上に亘り書き続けている『理瀬』シリーズの最新刊(2022年現在)です。

シリーズものですが、ほとんどのキャラクターは初登場。

そのため、この「薔薇のなかの蛇」から読み始めても十分楽しめます

ただ、シリーズを通して登場するキャラクターたちの正体を知らないと、結末が分かりにくいのも事実です。

そんな『理瀬』シリーズを一覧でまとめました。

  1. 三月は深き紅の淵を
  2. 麦の海に沈む果実
  3. 睡蓮(短編、以下の2冊に収録)
    1. 蜜の眠り
    2. 図書室の海
  4. 黒と茶の幻想 上・下
  5. 水晶の夜、翡翠の朝(短編、以下の3冊に収録)
    1. 殺人鬼の放課後
    2. 朝日のようにさわやかに
    3. 青に捧げる悪夢
  6. 黄昏の百合の骨
  7. 麦の海に浮かぶ檻(短編、以下の2冊に収録)
    1. 謎の館へようこそ 黒
    2. 歩道橋シネマ
  8. 薔薇のなかの蛇

『理瀬』シリーズは現在(2022年)までに長編5作、短編3作の計8作が刊行されています。

長編は上下巻もあり、短編は短編小説集に収録されているためすべて読むのはなかなか大変です。

しかし、シリーズものではあるものの、1冊ずつのつながりが強くないので単発でも読みやすいかと思います。

ただ、その中でもシリーズを通した主役であり、シリーズの名前でもある少女『理瀬』が初登場する2作目「麦の海に沈む果実」は読んでおいた方が良いです。

「麦の海に沈む果実」の感想は↓

「麦の海に沈む果実」には、この「薔薇のなかの蛇」にも登場するヨハンが活躍しているので、ヨハンの正体を知っておく上でも「麦の海に沈む果実」は必読と言えます。

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「薔薇のなかの蛇」の感想・あらすじ

「薔薇のなかの蛇」のネタバレなし感想・あらすじです。

イギリスの館で起こる殺人事件

イギリスの上流貴族で資産家でもある一族の館の敷地内で切断された死体が発見される。

死体の様子はつい先日、近くの村で発見された遺体の様子と酷似。

さらに貴族の館では、当主が館に伝わる『聖杯』が初めて披露されるために親戚が集まっていた。

死体発見の衝撃も覚めやらぬ中、さらなる事件が起こる・・・。

――というのが「薔薇のなかの蛇」のおおまかなあらすじです。

『イギリス』の『貴族の館』で『親戚が集まっている』中で起こる殺人事件。

アガサ・クリスティー好きとしてはこの設定をおかずにごはんが食べられそうなほど大好物なシチュエーションです。

おまけにその館はブラックローズハウスという五弁の薔薇の花を模した五棟からなり、そのうち一棟は火事により焼失し未だ再建されていない、という曰く付きでもあります。

その魅惑的な館でキャラクターたちが腹を探り合うのも楽しみの1つでした。

何者かとヨハンの会話

序章にて切断された死体が発見された後、第1章ではヨハンの音楽スタジオに何者かが訪ねてくるところから始まります。

シリーズ2作目「麦の海に沈む果実」に登場するヨハンの正体はここでは伏せますが、いわゆる堅気の人間ではないのはこの「薔薇のなかの蛇」だけでも推測できるでしょう。

ヨハンと何者かの会話は、この小説の本編でもあるブラックローズハウスで起きた事件の後にされているもの。

すでに事件は終わり、何者かがヨハンに事件のあらましを語るという体です。

ブラックローズハウスの本編では館の主の息子・アーサーにより、今まさに事件を体験している当事者の視点で描かれていきます。

一方で、ヨハンと何者かの会話は事件を客観的に語っているので、ややこしいストーリーを整理するのに役立つかと思います。

ただ、ヨハンと何者かの会話はほぼ最初と最後にしかありません。

途中は自力で整理する必要があります。

全体的に謎が多すぎる

「薔薇のなかの蛇」は事件だけでなく、キャラクターや館そのものにも謎があり、非常に謎が多すぎる小説でした。

読み進めれば読み進めるだけ謎が増えるのはミステリーの醍醐味。

そんなミステリーの醍醐味を味わいつつ、謎を取りこぼさないように細心の注意を払いながら読む必要がありました。

読み終わってから振り返ってみると、この「薔薇のなかの蛇」は冒頭から伏線が張り巡らされている小説です。

館そのものの秘密は比較的分かりやすいものの、キャラクターたちの何気ない会話が思いも寄らない伏線だったりします。

ただ、謎の提示が丁寧だった一方、『祭壇殺人事件』の犯人やブラックローズハウスで起きた事件の真相などの種明かしはあっさりし過ぎていて拍子抜けしました。

あまりにもサラッと種明かしされるので、ページを読み飛ばしたかと戻ってしまったほどです。

しかし、読後に振り返ると、無駄がないシンプルな種明かしは最高におしゃれだったと余韻に浸れました。

恩田陸さんの小説では珍しい?ですが、とてもすっきりとした結末でした。

暗躍する『理瀬』の存在感

イギリス貴族の館の敷地内で次々起こる殺人事件。

この設定だけなら普通のミステリーなのですが、この「薔薇のなかの蛇」にはシリーズの主人公でもある『理瀬』が登場します。

理瀬の登場により、ミステリーの世界は怪しさが一層深まり、普通のミステリーではいられなくなります。

主な語り手でもあるアーサーは魅力を感じつつも理瀬を疑い続け、しかし理瀬の言動に振り回されます。

シリーズを読んだことがあれば理瀬がただ者ではないと分かりますが、たとえ未読でも怪しすぎます。

探偵役でもなければ犯人でもなく、館の関係者でもない理瀬は本来なら脇役です。

けれども「薔薇のなかの蛇」は理瀬が中心となって物語が展開していきます。

そんな理瀬の本来の目的は何なのか?もこの「薔薇のなかの蛇」の楽しみの1つです。


タイトル「薔薇のなかの蛇」の『薔薇』は館の住人だとしたら、『蛇』は理瀬なのでしょうか?

しかし、館の中には理瀬の他にも蛇がいました。

理瀬の他にいた蛇の正体、そしてその目的を推察するのも「薔薇のなかの蛇」を楽しむコツです。

また、薔薇は理瀬で、館の関係者である蛇たちは理瀬の手のひらの上で踊らされているという見方もできます。

ここまで恩田陸さんの小説「薔薇のなかの蛇」の感想でした。

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